芸術文化振興施策
平成16年度(第59回)芸術祭贈賞理由(演劇)
《演劇部門》
芸術祭大賞
(関東参加公演の部)
 株式会社テアトル・エコー
 テアトル・エコー公演126「ルームサービス」の成果

 70年前に書かれたジョン・マレー、アレン・ボレッツ共作の典型的なドタバタ喜劇であるが、訳・演出の酒井洋子が、個性的で多彩な演技力をもつテアトル・エコーの俳優陣を使って、笑いに溢れた舞台を作りあげた。その見事なアンサンブルはエコーならではのことで、この劇団の培って来た実力を存分に見せつけた。古風なコメディを現代喜劇として蘇らせた成果は大賞に価する。

芸術祭大賞
(関西参加公演の部)
 松竹株式会社
 山本周五郎生誕百年記念「初蕾」の成果

 捨子の乳母(うば)として梶井家に雇われたお民は、実はその赤子の母である。お(たみ)に財力がないためと、出奔した梶井家の息子が赤子の父であるために案出された手段である。その子育てを通じて、お民が母として、女として成長してゆく姿が描かれる。七度目の公演だが配役を一新、お民役の高橋惠子の清新で体当たりの演技。姑はま役の草笛光子の品格ある情愛深い演技。周りも手堅く、練り上げられた舞台は清々しい涙と感動を与え大きな成果を挙げた。

芸術祭優秀賞
(関東参加公演の部)
 今井 清隆
 「第六回今井清隆 能の会」における演技

 「鉄輪(かなわ)」では美女が憤怒の形相へ変身する前場、思い切った型を展開させる後場、「葵上(あおいのうえ)」では六条(ろくじょうの)御息所(みやすどころ)の品格を示す前場、鬼女の鮮烈さを見せる後場と、ともに舞金剛の特色に謡の雅味が加わり、曲種を充分に生かした。恋慕・嫉妬・怒りを表す主題を「葵上」の貴、「鉄輪」の賎の二態に演じ分け、その洗練された演技が高く評価された。

芸術祭優秀賞
(関西参加公演の部)
 宝塚歌劇団 星組
 宝塚歌劇 星組公演「ロマンチカ宝塚’04 −ドルチェ・ヴィータ!−」の成果

 夜のヴェネチア、白昼の花市場、青の洞窟など地中海をモチーフにした構成はバラエティーに富み、人がふと幻想世界に誘われるというモチーフが全篇を貫いて、見飽きることがない。さらに陽気な湖月(こづき)わたるの<動>、蠱惑的(こわくてき)安蘭(あらん)けいの<静>のコントラストも見事で、それを宝塚らしいアンサンブルの良さが支えていた。

芸術祭新人賞
(関東参加公演の部)
 春野 寿美礼
 宝塚歌劇 花組公演 「La Esperanza -いつか叶う-」における演技

 宝塚歌劇の主人公は歴史上の英雄など、個性の強い二枚目であることが多い。しかし、「La Esperanza」は、身近な青年の日常を描いた異色作だ。その中で、主演の春野寿美礼は、夢に挫折し悩むカルロスをナチュラルな演技スタイルで説得力を持って表現。正統派男役のたたずまいも残しながら、新境地を開いた。

芸術祭新人賞
(関西参加公演の部)
 宮地 雅子
 ひょうご舞台芸術第30回公演「やとわれ仕事」における演技

 「自立したい」思いを出すあまり失業中の夫と気持ちがすれ違い、痴呆性を抱える老女との出会いが夫婦関係に影響を与え追いつめられていく…。そんな社会、家庭の中で、入り乱れる複雑な感情に揺れ動く女性を、自然かつ丁寧に造形し、役柄の幅を広げたとともに、確かな演技力で作品全体を支えた成果。硬軟自在にこなすバイプレイヤーとしてさらなる飛躍が期待でき、将来性という点においても新人賞に相応しい。


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