国語施策・日本語教育に関して
平成10年度「国語に関する世論調査」の結果について

I 調査の概要
調査目的: 敬語や言葉遣いに関すること,漢字の字体に関すること,外来語の理解度などについて,国民の意識や実態を調査し,国語審議会の審議の参考に供するなど,今後の施策の参考とする。
調査対象: 全国の16歳以上の男女3,000人
調査時期: 平成11年1月8日〜1月22日
調査方法: 個別面接調査
回収結果: 有効回収数(率)2,200人(73.3%)
 
II 調査結果の概要
1 言葉遣いについての意見<Q3>−敬語の過不足は感じが良くない−
 Q3 〔回答票〕ここに挙げた(1)から(3)について,あなたはそう思いますか。それとも,そうは思いませんか。
(3)の「日ごろ良い言葉遣いを心掛けて生活していると,その人の人柄が良くなる」については,高年層になるほど「そう思う」と答える率が高かった。
「そう思う」の割合
日ごろ良い言葉遣いを心掛けて生活していると,その人の人柄が良くなる 敬語を使うべきときに敬語を使わないで話すのは,感じが良くない 必要以上に敬語を多く使って話すのは,感じが良くない

63.5% 80.8% 77.3%
16〜
19歳
39.5% 75.8% 66.1%
20〜
29歳
50.3% 83.8% 64.6%
30〜
39歳
57.0% 83.3% 67.9%
40〜
49歳
64.7% 81.7% 83.2%
50〜
59歳
64.5% 76.4% 85.1%
60〜
69歳
73.4% 79.0% 86.0%
70歳
以上
84.2% 84.2% 77.2%
型にはまった接遇<Q4>−初めての店でも「毎度」には違和感なし−
 マニュアルなどによると思われる,店頭での型にはまった接遇の例を三つ挙げ,「気になる」か「気にならない」かを尋ねた。
(1) ファーストフード店へ一人で行って,食べ物を10人前注文しても,店員が「こちらでお召し上がりですか」と尋ねる
「気になる」(41.7%)−「気にならない」(43.8%)
(2) 何度もその店に行って顔なじみになっているのに,店員が初めての客に接するときと同じ言葉遣いをする
「気になる」(31.5%)−「気にならない」(54.1%)
(3) 初めて来た客に対しても,店員が「毎度ありがとうございます」と言う
「気になる」(10.3%)−「気にならない」(81.5%)
 (2)ついてはおおむね若い年代になるほど「気にならない」の割合が高くなり,特に女性の16〜19歳では8割近くに達する。若い年代の方が,店員に対して,なじみの度合いに応じた打ち解けた接遇を求めていないことが読み取れる。
 (3)の「毎度」は「いつも」の意であるが,「毎度ありがとうございます」は店員のあいさつの決まり文句として定着しており,各地域,各年代を通じて,初めて行った店で言われても違和感が生じないことが分かる。
3  気になる言い方<Q6>−「おられる」は気になるか−分かれる感じ方−
  敬語に関連した八つの言い方を挙げ,それぞれについて「気になる」か「気にならない」かを尋ねた。
 (1) 「先生は心配しておられたよ」
  ……「気になる」43.1%―「気にならない」51.8%
  4割強の人が「気になる」と答えている。平成9年度の調査で,「総務課の武田さんは,どちらにおられますか」について「敬語が正しく使われていないと思う」と答えた人の割合が30.0%だったことを考え合わせると,「おられる」という言葉については3〜4割程度の人が違和感を持っているものと思われる。
 (2) 「御安心してお使いください」
  ……「気になる」33.3%―「気にならない」63.4%
  謙譲表現である「御〜する」を相手に用いているが,「気になる」は3人に1人である。
 (3) 「電車がまいります」
  ……「気になる」24.7%―「気にならない」72.0%
  問題のない言い方だが,4人に1人が「気になる」と答えた。
 (4) 「鈴木さんはおいでになられますか」
  ……「気になる」26.2%―「気にならない」69.9%
  このような過剰敬語については,平成7年度調査の「お客様はお帰りになられました」(「気になる」が23.6%)や「先生がおっしゃられたように」(同24.5%)と併せ考えると,おおむね4人に3人は気にならないことが分かる。
 (5) 「先生は講義がお上手ですね」
  ……「気になる」27.5%―「気にならない」68.1%
  目上の人を評価している点にかかわって,失礼だと感じられることもある言い方だが,「気にならない」が約7割となっている。
 (6) 「どうぞごゆっくりしてください」
  ……「気になる」15.5%―「気にならない」82.4%
  (2)と同様,謙譲表現である「御〜する」を相手に用いているが,「気になる」割合は1割台半ばである。平成7年度調査の「先生,こちらでお待ちしてください」(「気になる」が55.6%)や平成8年度調査の「(会社を訪ねてきたお客さんに)受付でお聞きしてください」(同53.3%)に比べると,今回の(2)と(6)は,耳慣れているためか,「気になる」の割合が低くなっている。
 (7) 「お歩きやすい靴を御用意ください」
  ……「気になる」75.4%―「気にならない」22.3%
  一般的・標準的とは言えない言い方であり,4人に3人が「気になる」と答えた。「歩きやすい」「お歩きになりやすい」が普通の言い方。
 (8) 「誠に申し訳なく,深く反省させていただきます」
  ……「気になる」41.4%―「気にならない」53.4%
  平成8年度調査の「(店の張り紙で)明日は休業させていただきます」(「気になる」が7.1%),「(会議で司会者が)これで会議を終了させていただきます」(同8.1%),「(店で店員が)この商品は,値引きさせていただきます」(同18.3%),「(電車の車内放送で)ドアを閉めさせていただきます」(同18.8%)に比べると,「気になる」の割合がかなり高い。「〜させていただく」は,相手の恩恵や許可によって話し手が利益を得ることを表す言い方であり,そのような場面ではないのに「〜させていただく」を用いるとかえって無礼な感じを与えて違和感を生じることがあるが,今回の問いのような謝罪の場面で「〜させていただく」を用いることは,違和感が大きいことが分かる。
 
4  気配りの決まり文句<Q8>―「御無沙汰……」は9割近くの人が使う ―
  いろいろな場面での気配りを表す決まり文句を挙げ,使うと思う言い方を尋ねた(選択肢の中から複数回答)。結果は以下のとおり。
 (1) (久しぶりで連絡するとき)御無沙汰しております ……85.5%
 (2) (頼みを断るとき)お役に立てなくて,すみません ……72.0%
 (3) (人に贈物を渡すとき)つまらないものですが ……67.8%
 (4) (会合などに誘うとき)よろしかったら(おいでになりませんか) ……64.3%
 (5) (食事を勧めるとき)お口に合うかどうか分かりませんが ……55.0%
 (6) (上達を認められたとき)(先生・皆様の)おかげでございます ……53.2%
 (7) (美術品などを見せてもらったとき)おかげさまで,目の保養になりました ……41.9%
 (8) (依頼を断られたとき)どうぞお気になさらないでください ……41.4%
 (9) (乾杯を指名されたとき)それでは,僭越ではございますが御指名によりまして ……37.8%
 (10) (料理を食べてもらった後で)お粗末でございました ……36.5%
 (11) (誘いを断るとき)お伺いしたいのは山々ですが ……35.0%
 (12) (電話で呼んでもらうとき)もし,お手すきでしたらお電話口までお願いしたいのですが ……27.7%
 (13) (歌や演奏を披露した後で)お粗末でございました ……20.1%
 (14) (腕前を褒められたとき)お恥ずかしゅうございますす ……18.3%
第三者への敬語<Q9>―“司会者が歌手に敬語”は自然―
(1)  あなたの友人が,自分の知り合いのことを話すのに,「私の知り合いで,会社の社長さんなんだけど,今度御本をお書きになってね,出版記念会をなさるっておっしゃっているんですよ。」のように,敬語を使って話したとき。(ただし,あなたは,この「社長さん」を知りません。)
(ア)  どんなに偉い社長かは知らないが,私とは関係ない人に敬語を使うのは不適切な言い方だと感じる ……40.2%
(イ)  友人にとって偉い社長なのだろうから,自然な言い方だと思う ……50.6%
(2)  (あなたが会社員であると仮定して)あなたの同僚があなたに,「部長はきのう相撲を見に行ったんだって。」と,上司である部長本人のいないところで言ったとき
(ア)  上司なのだから,たとえそこにいなくても「相撲を見にいらした(行かれた)んだって」ぐらいの言い方はすべきだと思う ……30.4%
(イ)  本人がいないのだから,この言い方でよいと思う ……64.0%
(3)  あなたが交通事故でけがをして寝ているところに,看護婦さんが「あのう,加害者の方がお見えになりました。」と言ったとき
(ア)  加害者を敬っているような言い方で,不適切だと思う ……19.2%
(イ)  看護婦の立場なら,この言い方でよいと思う ……75.5%
(4)  テレビで司会者が,「さあ,次は○○さんに歌っていただきましょう。」と歌手を紹介したとき
(ア)  司会者が歌手を敬う言い方をするのはおかしい。「○○さんの歌をお聞きいただきましょう」などと,視聴者を敬う言い方をするのがよいと思う ……18.4%
(イ)  司会者が歌手を敬う立場をとるのは自然なので,この言い方でよいと思う ……75.1%
 
6  漢字についての意識<Q13>―漢字は大切で便利な文字―
  漢字についてどのような意識を持っているかを尋ねた(選択肢の中から複数選択)。
 (1) 日本語の表記に欠くことのできない大切な文字である ……72.8%
 (2) 漢字を見るとすぐに意味が分かるので便利である ……61.7%
 (3) ワープロなどがあっても,漢字学習はしっかりとやるべきである ……52.0%
 (4) 漢字の使い方については余り自信がない ……42.4%
 (5) 日本語の表記を難しくしている文字である ……12.2%
 (6) 漢字の使い方についてはかなり自信がある ……11.9%
 (7) ワープロなどがあるので,これからは漢字を書く必要は少なくなる …… 9.3%
 (8) 漢字を覚えるのは大変なので,なるべく使わない方がよい …… 3.7%
 
7   異体字の併存についての考え<Q16>―「不統一は望ましくない」が半数―
   常用漢字表に入っていない漢字に,印刷文字として,例えば「=(*1)」と「鴎」のように異なった二つの字体が使われている場合があること(印刷文字の字体の不統一)について,どう思うかを尋ねた。結果はグラフのとおり。
 
異体字についての印象<Q17>―康熙字典体と略字体のどちらを多く見掛けるかは,字種によって異なる―
  12組の異体字(いずれも常用漢字表に入っていない漢字)について,どちらの字体を見掛けることが多いと思うかの印象を尋ねた結果は以下のようであった。(a)は辞書や教科書などに使われているいわゆる康熙字典体であり,(b)は手書き字形などに見られる略字体である。一般の人が,ふだん,いわゆる康熙字典体と略字体のどちらを多く見掛けると感じているかは,字種によって異なることが分かる。
  (a)   (b)
(1)うさぎ =(*2) 3.2%  兎 92.2%
(2)だえん 橢円 6.6%  楕円 77.8%
(3)めん =(*3) 24.5%  麺 61.8%
(4)あふれる =れる(*4) 24.5% 溢れる 59.8%
(5)みそ 味=(*5) 57.3% 味噌 31.6%
(6)ぼうとく 冒=(*6) 35.0% 冒涜 34.3%
(7)へそ 40.7% =(*7) 30.6%
(8)あめ =(*8) 28.5% 54.3%
(9)きゅうしゃ 廏舎 7.2% =舎(*9) 69.3%
(10)きとう 祈=(*10) 40.3% 祈祷 41.7%
(11)さかだる 酒=(*11) 47.9% 酒樽 35.0%
(12)うかい =回(*12) 24.5% 迂回 56.0%

9  外来語の認識<Q18>―「インターネット」は4人に3人が分かる―
  外来語を八つ挙げて,その言葉を聞いたこと,見たことがあるか,また,その言葉の意味が分かるかを尋ねた。結果は以下のとおり。
聞いたこと・見たことがある 意味が分かる
(1) ストレス 99.5% 87.7%
(2) コミュニケーション 97.0% 85.4%
(3) インターネット 96.0% 73.2%
(4) カジュアル 92.9% 74.3%
(5) オンブズマン 66.3% 38.3%
(6) アメニティー 63.5% 31.5%
(7) アスリート 35.7% 18.5%
(8) リテラシー  7.9%  3.4%

 
10外来語の認識(官公庁の文書などに出てくる外来語と訳語の分かりやすさと親しみやすさ)<Q20,Q21>―「ニーズ」より「必要性」の方が分かりやすい―
  官公庁の文書などに出てくる外来語と,それに対応する漢語・和語とでは,どちらの方が意味が分かりやすいか,また親しみやすいと感じるかを尋ねたところ,下の表のような結果となった(数字はパーセント)。全体に漢語・和語に分かりやすさや親しみやすさを感じるという割合が高い傾向があるが,「イベント」「メリット」については「催し」や「利点」よりも分かりやすさ,親しみやすさを感じる人が多いことが分かる。
漢語・和語 分かりやすさ 親しみやすさ 外来語 分かりやすさ 親しみやすさ
計画 94.1 90.3 スキーム 2.0 3.5
説明責任 88.0 82.7 アカウンタビリティー 2.3 3.6
合意 86.7 81.9 コンセンサス 6.8 9.0
必要性 62.8 54.7 ニーズ 24.2 36.4
展望 60.7 57.1 ビジョン 24.7 30.7
危険性 56.0 53.1 リスク 27.5 35.5
催し 33.0 33.8 イベント 51.2 58.2
利点 30.7 33.6 メリット 54.5 57.9
 
11 英文における日本人の姓名<Q22>―「姓−名」が「名−姓」をやや上回る―
 英文の中で日本人の姓名の順をどう表記すべきかを尋ねたところ,グラフのような結果になった。年齢別に見ると,若い年代になるほど「「名−姓」の順に直すのがよい」とする人の割合が高い。
平成7年度調査の,「あなたは,外国で使うためにローマ字書きの名刺を作る場合,その名刺には,御自分の姓と名のどちらを先に書くべきだと思いますか」という問いでは,「姓を先にする」が24.6%,「名を先にする」が62.3%,「どちらとも言えない」が5.5%であった。それに比べると,今回の調査では「名−姓」の順に直すという人の割合が低く,「どちらとも言えない」という人の割合が高くなっている。


 この世論調査の報告書『平成10年度 国語に関する世論調査(平成11年1月調査)-敬語・漢字・外来語-』は,大蔵省印刷局から刊行されている。(本体価格1,360円)


*1
*2
*3
*4
*5
*6
*7
*8
*9
*10
*11
*12
ホームページへ ↑このページのトップへ
 © The Agency for cultural affalrs