文化庁主催 コンテンツ流通促進シンポジウム「著作物の流通・契約システムに関する研究会」の成果報告
コンテンツビジネスの未来は輝いているか?

2004年6月28日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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特別講演
浜野 保樹 (はまの やすき)
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授

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撮影:小池 良幸
ID:HJPI320100000590
コンテンツは経済資源として重要ですが、文化資源としても大事だし、人々を外から呼んで来る外交資源としても大事。自分たちがどれぐらいフェアであるかとか、自分たちの考え方を伝えるということでは、外交資源としても大事ですし、観光資源にもなるわけです。

「ラブレター」という岩井俊二監督の映画は韓国でも大ヒットしました。ただ、欧米では日本人の名前が覚えられず、日本人の顔を白人はアイデンティファイできません。ハリウッドの人がよく言うのは、黒澤明監督の映画がなぜ海外で受け入れられたというと、左卜全とか上田吉二郎とか、だれが見ても間違わないような顔の俳優を使っているからだということです。今の日本人の俳優ってみんな同じような顔をしてるので、欧米の人は話が混乱して誰が誰だかわからなくなってしまうということです。そういうことを配慮して日本映画は作られてないんですね。だから、アニメーションみたいにアイデンティファイしやすいものは非常に力を持っているのでしょう。

とにかく、アジア人には日本人の顔はアイデンティファイできるんで、韓国で「ラブレター」は大ヒットしました。韓国上映後、小樽市の発表によると、小樽市への韓国からの観光客が急増しました。「ラブレター」は、小樽と神戸を行き来する映画だったのですが、神戸で地震があったので、神戸のシーンは神戸で撮れなかったので、美しい景観を写せなかったわけです。もし神戸に地震がなかったならば、小樽以上に神戸に韓国から観光客があったのかもしれません。

私は杉並区のアニメーション委員会の座長をしていたのですが、杉並区の方からお聞きすると、最近アニメーションのツアーを組みたいというのでフランスとかオーストラリアから依頼されるということです。井の頭公園の「三鷹の森ジブリ美術館」を見て、中野にあるアニメーションのセルや、キャラクター商品などを売っている店が集まったところがあり、そこに行くそうです。杉並区は、その中間に位置し、スタジオが多いので、制作現場を紹介しようとしています。

アニメーションの企業をよくご存じだと思いますが、労働環境はけしていいとはいえないものです。スタジオといってもアパートの一室であったり、アニメーターが床に寝ていたり建物は汚かったりで、最初はスタジオ側も断りたいということだったのですが、アニメーションのツアー参加者は、日本のアニメーターが貧乏であることを知っていて、カップ麺を食って床に寝ているのを見たいとのことでした。貧乏だって観光資源になるわけですね。

たとえスタジオはなくなっていても、かつてここで・・・の作品がつくられましたとか、アニメーション遺産めぐりも可能です。海外からの人々は一生懸命写して帰るんですね。若者だけじゃなくて、いいおじさんも多い。杉並区はそういうツアーを組もうとしています。

韓国とか日本ではコンテンツ産業というわけですが、アメリカではライツインダストリーとかコピーライツインダストリー、著作権産業ということが多い。イギリスでは、ファッションとかデザインといったものまで含めてクリエイティブ産業といいます。フランスは文化産業という呼び方をします。

コンテンツ産業は、日本では大体11兆、世界で大体100兆円ぐらいと言われています。最近、UCLA日本研究センターが発表したものによると、日本のエンターテインメント産業は大体50兆から60兆円、日本のGDPの約1割を稼ぎ出していると試算しています。残念ながら日本ではこういったデータがありませんが、パチンコだけで20兆円あるわけですから、その20兆を上乗せすれば一挙にふえるわけで、そこにいろいろなスポーツとかレクリエーションを加算すれば、これくらいにはなるのでしょう。

一応アメリカ人が考えるエンターテインメント産業という見方をすると、日本のGDPの1割はエンターテインメント産業が稼ぎ出していることになります。

日本ではキャラクタービジネスというのは大体二兆円といわれています。アメリカでは60兆円ぐらいライセンスビジネスがある。これはコンテンツの売上ではなくて、それを除いてキャラクターなどの付随するライセンスを提供するビジネスだけで大体60兆円ぐらいの売上があるということです。提供側として美術館から大学までいろいろ並んでいますが、何からか、やはりキャラクターが一番多いわけですね。二十六、七兆円の売上があると。大学ですらそういったもので大きな純益を得ています。
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