著作権〜新たな文化のパスワード〜
16庁房第306号
平成16年12月 6 日
社団法人 日本レコード協会
    会長 佐 藤   修 殿
                                    文 化 庁 次 長
                                          加 茂 川 幸 夫



還流防止措置を行使するに当たっての実務上の留意事項等について(通知)



 このたび、「著作権法の一部を改正する法律」が、さきの第159回国会において成立し、平成16年6月9日付けをもって、平成16年法律第92号(以下「改正法」という。)として公布され、専ら国外において頒布することを目的とする商業用レコード(以下「国外頒布目的商業用レコード」という。)に係る還流防止措置(著作権法(昭和45年法律第48号。以下「法」という。)第113条(新)第5項。以下「本措置」という。)が、平成17年1月1日(以下「改正法の施行日」という。)から施行されることとなりました。
 また、上記改正を受け、本措置の対象となる商業用レコードの期間を、国内で最初に発行されてから4年に限定することとする「著作権法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定され、平成16年11月4日付けをもって、平成16年政令第338号として公布され、改正法の施行日から施行されることとなりました。
 ついては、著作権者又は著作隣接権者(以下「権利者」という。)が本措置を行使するに当たっての実務上の留意事項等について、下記のとおり取りまとめましたので、社団法人日本レコード協会(以下「日本レコード協会」という。)においては、十分に御了知の上、加盟会社に対して、その内容の周知徹底を図るようお願いします。





第1 還流防止措置の要件

 本措置は、国外頒布目的商業用レコードを国内での頒布目的で輸入する行為、国内で頒布する行為又は国内での頒布目的で所持する行為(以下「輸入する行為等」という。)のうち、以下のような@からDまでの要件をすべて満たす場合に限り、著作権又は著作隣接権(以下「著作権等」という。)の侵害行為とみなすものであること。
 要件@ 国内において先又は同時に発行されている国内頒布目的商業用レコード(国内において頒布することを目的とする商業用レコードをいう。以下同じ。)と同一の国外頒布目的商業用レコードであること。
 要件A 「情」(要件@の事実)を知りながら、輸入する行為等であること。
 要件B 国内において頒布する目的での、輸入行為又は所持行為であること。
 要件C 国外頒布目的商業用レコードが国内で頒布されることによって、それと同一の国内頒布目的商業用レコードの発行により権利者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合であること。
 要件D 国内頒布目的商業用レコードが国内において最初に発行された日(国内において最初に発行された日が、改正法の施行日より前である場合にあっては、一律改正法の施行日)から起算して4年以内であること。

 なお、以上の@からDまでの要件をすべて満たす国外頒布目的商業用レコードの国内における頒布行為(要件Bを除く。)又は国内における頒布目的での所持行為もまた同様に、著作権等を侵害する行為とみなされることとされているが、改正法の施行日より前に輸入され、施行の際に頒布目的で所持されている国外頒布目的商業用レコード(在庫品)については、本措置の適用外とされていること(改正法附則第2条)。

第2 各要件に係る実務上の留意事項

1 要件@関係

(1)国内頒布目的商業用レコードと国外頒布目的商業用レコードの発行の前後関係

 本措置は、国外頒布目的商業用レコードが発行された際に、それと同一の国内頒布目的商業用レコードが国内において発行されている状況にあることが前提とされていること。したがって、次のア及びイの点に留意されたいこと。

ア 本措置の対象となるためには、国内頒布目的商業用レコードの国内における発行が、それと同一の国外頒布目的商業用レコードの発行よりも先行している、又は同日付けであることが必要であり、国内頒布目的商業用レコードと同一の国外頒布目的商業用レコードであっても、国内頒布目的商業用レコードよりもその発行が先行している場合は、本措置の対象外であること。

イ 国外頒布目的商業用レコードが発行されているのみで、それと同一の国内頒布目的商業用レコードが発行されていない場合は、もとより本措置の対象外であるが、更に、国内頒布目的商業用レコードが廃盤となった場合(レコード会社から小売店等に対して発した当該国内頒布目的商業用レコードの回収に係る通知に記載された受付開始日を当該廃盤の日とみなす。以下同じ。)にも、従前は本措置の対象であった、それと同一の国外頒布目的商業用レコードは、本措置の対象外として取り扱われることとなること。また、このことは、改正法附則第3条が適用される、改正法の施行日より前に発行された国内頒布目的商業用レコード(以下「旧譜」という。)についても同様であること。

(2)同一の商業用レコード

ア 商業用レコード
  「商業用レコード」とは、市販の目的をもって製作されるレコードの複製物をいい、「レコード」とは、録音テープその他の物に音を固定したもの(音をもっぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいうので(法第2条第1項第5号及び第7号)、具体的には、いわゆるレコード盤のみならず、音楽用CD、DVDオーディオ、カセットテープ等が含まれるが、音が固定されているものであっても、例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション等は、その音を市販することを主たる目的としているわけではないので、商業用レコードには含まれないこと。

イ 同一要件を満たすもの
 本措置の対象となる「同一の商業用レコード」とは、商業用レコード全体として固定されている音が同一であれば足り、例えば、次の(ア)又は(イ)の場合であっても、なお同一要件は満たされるものとして取り扱われること。
(ア)ジャケットや歌詞カードなどの附属品が異なる場合
(イ)音楽用CDとDVDオーディオなど、媒体が異なる場合
  なお、我が国の音楽文化の海外普及を促進するという本措置の趣旨にかんがみ、次の(ウ)の場合も、同一要件は満たされるものとして取り扱うこととすること。
(ウ)国外頒布目的商業用レコードに、いわゆるボーナストラックが1曲のみ付加されている場合(ただし、それに対応する国内頒布目的商業用レコードの収録曲数が12曲以上である場合に限る。)

ウ 同一要件を満たさないもの
 収録曲は同じでも、曲順が異なる場合は、同一要件は満たさないものとして取り扱われること。

2 要件A関係

 権利者がジャケット等に「情」(要件@の事実)の内容を明確に表示していない国外頒布目的商業用レコードは、要件Aの立証が困難となること。このため、関税定率法(明治43年法律第54号)第21条の2の規定に基づく税関長に対する輸入差止申立て(以下「輸入差止申立て」という。)を行うに当たっては、当該表示がなされていることを示す資料を提出する必要があること。

3 要件B関係

 本要件に該当するか否かについては、現行のいわゆる海賊版の取扱い(法第113条第1項)と同様、第一義的には輸入者等の業種や物品の数量などを参考にしつつ、必要に応じて個々に輸入者等から輸入目的等事情を確認した上で判断されることとなること。
  「頒布」とは、有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい(法第2条第1項第19号)、「公衆」には、不特定の者のみならず特定かつ多数の者も含まれるので(同条第5項)、例えば、個人が海外旅行先から、個人的な使用目的で、又はごく身近な家族や友人等、特定少数の者に贈る目的で国内に持ち込むような場合における、いわゆる個人輸入は、本措置の対象とはならないこと。

4 要件C関係

(1)不当の基準の運用

  「(権利者が)得ることが見込まれる利益」とは、商業用レコードの売上額そのものではなく、いわゆるライセンス(使用許諾)料をいい、国外頒布目的商業用レコード1枚当たりのライセンス料を、それと同一の国内頒布目的商業用レコード1枚当たりのライセンス料で除した数が0.6以下である場合(以下「不当の基準」という。)は、当該利益が不当に害されるものとして取り扱うこととすること。

(2)実演家がレコード製作者に権利譲渡している場合の取扱い

 実演家の権利については、通常、専属実演家契約によりレコード製作者に譲渡されており、その利益(いわゆる実演家印税)はレコード製作者が得る利益(いわゆる原盤印税)の中から分配を受けているという実態を踏まえ、レコード製作者が本措置を行使する場合には、利益が不当に害されるか否かの判断は、実演家及びレコード製作者の利益を合算して、すなわち、著作隣接権者は一体として、原盤印税によってなし得るものとして取り扱うこととすること。

(3)レコード製作者が自ら発行している場合の取扱い

 レコード製作者が、国内頒布目的商業用レコード又はそれと同一の国外頒布目的商業用レコードを自ら発行している場合には、当該商業用レコードに係るライセンス料率が存在しないところ、不当の基準への該否に係る利益の計算に当たっては、国内頒布目的商業用レコード及びそれと同一の国外頒布目的商業用レコードに係る両ライセンス料率を、同一であるものとみなすこととすること。その結果、これらの場合、不当の基準への該否に係る利益の計算は、当該同一のライセンス料率を乗ずべき、ライセンス料算出の基礎となる卸売価格等の価格同士を比較すれば足りることとなること。

(4)為替レートの取扱い

 不当の基準への該否に係る利益の計算をする際に用いる為替レートは、当該国外頒布目的商業用レコードが当該国等において最初に発行された日において適用されている「基準外国為替相場及び裁定外国為替相場」(注)によるものとすること。したがって、輸入差止申立ての更新手続を取る場合においても、不当の基準への該否に係る利益の計算をする際に用いる為替レートは、当初に適用したものと同一となること。
(注)毎年6月及び12月の2回、直近半年間の市場実勢相場を基に、向こう半年間適用される相場として、財務大臣により日本銀行本店において公示されるもので、日本銀行のウェブサイト(http://www.boj.or.jp/stat/tame/tame.htm)でも閲覧できる。

第3 権利者が本措置を行使するに当たっての実務上の留意事項
 
1 輸入差止申立制度の活用

(1)輸入差止申立ての活用

  権利者が実際に本措置を行使するに当たっては、輸入差止申立てを行うことが適当であること。
  なお、輸入差止申立てに当たっては、あらかじめ税関と十分に相談を行うこと。

(2)輸入差止申立ての取下げ

 輸入差止申立てが受理されたレコード会社においては、当該申立ての前提となっている国内頒布目的商業用レコードに廃盤予定がある場合には、税関に対する事前の情報提供に努めるとともに、当該国内頒布目的商業用レコードが廃盤となった場合など、本措置の対象外として取り扱われるべき状況となった場合には、当該申立てを速やかに取り下げること。

2 対象リストの運用

(1)対象リストの公開

 日本レコード協会は、自ら又は他の者にライセンスを付与して国外頒布目的商業用レコードを発行している加盟会社に対し、当該国外頒布目的商業用レコードの輸入差止申立てに係る、少なくとも次のアからキまでの内容を含むリスト(以下「対象リスト」という。)を作成させ、当該加盟会社のウェブサイトにおいて速やかに公開及び更新させるとともに、加盟会社の対象リストを取りまとめ、日本レコード協会のウェブサイト等を通じて一般に周知すること。

ア 輸入差止申立てに係る状況表示
 (申立て予定/受理済み/取下げ予定(日付)/取下げ済み又は対象期限経過)
イ アーティスト名 
ウ タイトル
エ 商品番号
オ 発行(予定)日
カ 対象期限
キ 発行又はライセンス国等

(2)対象リストからの削除

 輸入差止申立ての前提となっている国内頒布目的商業用レコードが廃盤となり、当該申立てを取り下げた場合や、本措置の対象期限を経過した等の場合は、上記第3の2の(1)のアの状況表示において、その旨を表示することが必要となるが、これらの場合において、当該表示をした日の翌日から起算して少なくとも30日を経過した後でなければ、当該国外頒布目的商業用レコードの輸入差止申立てに係る情報を対象リストから削除しないようにすること。

3 要件Aに係る表示の運用

 日本レコード協会は、本通知を踏まえ、本措置の税関等における円滑な運用に資するため、少なくとも次のアからカまでの内容を満たす、要件Aに係る表示に関する運用基準を作成及び公表し、加盟会社に適切な表示内容及び方法として推奨するとともに、今後の運用状況を踏まえ、必要に応じて適宜見直しを行うこと。
 なお、その作成及び見直しに当たっては、事前に文化庁に協議されたいこと。

ア ジャケット、バックインレイ、キャップなど外部から見える場所のほか、相対的に簡易な記載内容でも差し支えないので、盤面にも表示すること。
イ 特段の理由がない限り、シールの貼付等ではなく印刷によること。
ウ 日本語又は英語を含む、2種類の言語で併記すること。
エ 当該国外頒布目的商業用レコードに係る本措置の対象期限についても記載すること。
オ 本措置を行使するために必要な他の要件のうち、表示を付する時点で判断可能なもの(@、C(可能な場合)及びD)については、各要件を充足することを確認した上で、表示を付すること。
カ 旧譜より後又は同時に発行された、それと同一の国外頒布目的商業用レコードについても、当該運用基準は同様に適用すること。

4 他の権利者への配慮

 本措置は、法制的には、当該国外頒布目的商業用レコードに係る権利者(以下「関係権利者」という。)のうちいずれかのものにとって要件を満たす限り、当該権利者により行使し得るものであるが、必要に応じて、関係権利者間で連絡調整を行う等他の関係権利者にも配慮するように努めること。

5 日本レコード協会の協力

 日本レコード協会は、文化庁の求めに応じ、本措置にかかわる諸情勢に関する調査研究及び情報提供その他の必要な協力を行うこと。


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