「誰でもできる著作権契約マニュアル」 第1章 2. (1)

(1)契約とは
<1> 契約とは、法的な拘束力を持った合意のことです。

 契約が有効に結ばれると、相手方に対して単に道徳的に「約束を守れ」と言えるだけでなく、裁判を通じて強制的に約束の内容を実現させたり、相手方の約束違反によって被った損害の賠償を請求することができます。

<2> 契約の内容等は当事者が自由に決めることができます。
  • 契約の内容等は当事者が自由に決めることができます(契約自由の原則)。つまり、契約を結ぶかどうか、誰と契約を結ぶか、どんな内容の契約を結ぶか、どのような方式で契約を結ぶか等は、原則として当事者が自由に決めることができます。
  • ただし、一定の場合には、この原則が制限される場合もあります。
    • 法律等によって契約を締結する義務を負わされる場合があります。たとえば、著作権等管理事業者は、正当な理由がなければ著作物等の利用許諾契約の締結を拒否することができません(著作権等管理事業法第16条)。
    • 公序良俗に違反する内容の契約や、いわゆる「強行規定」に違反する内容の契約は無効になります。たとえば、契約書で実際に著作物を創作した者でない者を「著作者」とすることを規定しても、その規定は無効です。
    • 合意内容が不明確なため内容を確定できなかったり、合意内容を実現することがはじめから不可能な契約は無効になります。たとえば、既に亡くなっているタレントを生出演させるといった内容の契約は、無効になります。
    • 契約の中に法的に無効な条項があっても常に契約全体が無効になるわけではなく、その条項の効力が認められないにとどまるのが原則です。ただし、無効な条項が契約の本質的内容になっている場合には、契約全体が無効になることもあります。
<3> 契約は、当事者の合意が成立したときにその効力が発生します。
  • 契約は、当事者の一方からの申込みに対して相手方が承諾したときに成立します。
  • 両当事者が離れた場所にいて、承諾の意思表示を書面の郵送によって行うような場合には、承諾の書面を発信したときに契約は成立します。