文化庁主催 第3回コンテンツ流通促進シンポジウム
日本映画界は、ハリウッド映画並みの大作を作れるのか?−外部資金の活用を考える−

2005年7月13日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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パネルディスカッション
当日配布資料(福田氏)のダウンロード (PDF:380KB)
当日配布資料(土井氏)のダウンロード (PDF:263KB)

資金調達の多様化と外部資金導入のための条件整備について
松田でございます。最初に少しこのパネルディスカッションの趣旨を説明させていただくということになりますが、先ほど澤さんから説明、解説のありましたこの調査研究報告書。この報告の内容を浮き彫りにできれば、私はお役目は果たせたのだろうと思います。それ以外にも会場からご発言をいただくように準備をしておりますけれども、有識者の方々。しかし、たった20分の間の休み時間に質問がこんなに沢山来ておりまして、いま目を全部通すわけにいかないので、発言の途中に整理をして発言をいただくようにいたしますけれども、ぜひ活発に浮き彫りにする、さらに問題点を指摘するということのお役目を果たせればというふうに思っております。

澤さんから話がありましたように、わが国の映画界が飛躍的に大きくなって、日本の文化やビジネスが外に出る。それが産業の1つの柱になるとか、日本の状況を理解していただくということのお役目が果たせれば、これはもうそれに越したことはないわけでありますから、拡大しようということについては、それほど異論はないようでありますけれども、外部からの資本を、資金を導入するというのは結局何かといいますと、映画産業界に関わる方ではない方、これは映画産業というのは実は先ほどの説明にもありましたように、利ないしは2次的利用をする業界の方々、これがあらかじめ投資をする。これは制作委員会方式でやるのが普通であるわけですけれども、この方々以外の資本を導入したらどうだろうかと。

実は私、弁護士ですから、個別的な案件のご相談や、それからスキームが組み立てられる過程における契約関係についてご相談を承るとか、書面を作成するとかということは日常に行なっているわけでありますが、それを概観してみますと、実は資金は結構日本にあるのではないか、それから投資をしたい人も実はいる。そういうふうに私は見ております。

特に、いろいろな投資の中で、これからこの分野、特に映画、ゲームですね、キャクラター物。こういうものに投資をしてみたいという企業は、私、かなりあるなというふうに思っております。その人たちがいい作品を作るために投資もしましょうという用意があるのであれば、やっぱりその受け皿をきちんと作らなければいけない。

昨年法律ができましたところの新しい信託業法によりまして、一定のものもでき上がりました、事業会社としての信託会社が土井さんのところではもう免許が得られているわけでございますので、どんどん活動してもらいたい。

ただ、これはそのお金を導入する、いい作品を作る、それから制度もできたといたしましても、1つ大きな流れにしていかないとなかなかお金って流れていかない、産業っていうのは回っていかないというふうに私は思います。そのためには、もっともっと事業会社で信託事業を行なう。こういう会社がどんどん現れてもらいたいと思いますし、それから外部の資金の準備をなさる方々についても、わかりやすい投資に結びつけなければいけない。こういうことであります。

そうなりますと、当然のことながら評価という問題が重要になることは間違いありません。それで主に評価、それとビジネスモデルも検討いたしましたけれども、この研究報告が役に立つというふうに私どもは思っておるわけでありますけれども、評価が正しく行なわれれば、投資家も制作者側に、それからそれに映画に参画するいろいろな方々も、映画だけでございませんので映像に参画する方々も、平等に透明性のある配分を受ける。こういうことまででき上がらないと、実はなかなか螺旋階段を昇るようにどんどん投資と開発、投資と開発というふうにいかないのだろうと思います。

いろいろな方のご協力を得て、そういう社会ができるように、その一助として今日のディスカッションが役に立てばと思っております。ご協力をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

それでは、順番に土肥さんのほうから。そうだ。順番は宮島さん、福田さん、土井さんの順ですが、10分程度のプレゼンテーションを頂戴することになっています。よろしくお願いいたします。

ご紹介にあずかりました松竹のゼネラルプロデューサー、肩書はどうでもいいんですけれども、とりあえず今日お集まりの方々は金融・法律関係、もちろん映画界の関係の方、それと名簿を見ますと早稲田とか専修大学の学生の方もいらっしゃるということなので、とりあえずいま制作者、プロデューサーの立場でお話しできる、非常にわかりやすい日本映画の現状ですとか、その辺からお話しできればいいなと思います。

僕は資料とか今日用意していないんですね。こういうプレゼンって聞いてなくて、面白おかしくお話をすればいいのかなというふうに伺っていたので、とりあえず皆さん、ちょうど午後で眠くなる頃だなと思うので、わりと眠くならないようなお話から入って、あと福田さんと土井さんに厳しいお話につないでいければいいなと思います。

まず、いま韓国映画が非常に元気がいいというのは、一部でシネカノンの李さんのほうから多分お話があったと思うんですね。実は昨日、MBCという韓国のテレビ局から僕もインタビューを受けまして、皆さんご存じのように、韓国では非常にスタークラスの俳優さんのギャランティが高騰している。莫大なギャランティがあるために、映画制作がしにくくなっているというニュースがあります。それで、それは発言をしたのが韓国のプロデューサーであり監督である、中心人物としても活躍している、『シルミド』なんかを撮った人ですね。カン・ウソクというシネマサービスという会社の代表なのですが、非常に親しいお付き合いを僕も、日韓の合作映画を彼とも作っていますので、ちょっと心配だなというふうに思っています。

それで、韓国はどちらかというとハリウッドシステムに近いギャランティの構造を持っています。日本はどうしてもスターでお客が呼べる、動員力を持ったスターがなかなか育っていないという現状があります。この辺、プロデューサーとしては、どんどん育てていかなければいけないというふうに日々思っておりますけれども、現状としては、なかなかスターでお客が来ない。ところが、韓国は明らかにこの男優さん、この女優さんのスターが初共演すると、それだけで動員が増してしまう。

僕もホ・ジノ監督の『春の日は過ぎゆく』とか何本か作っていますので、そのプロデュースをした経験でソウルの中心にある劇場の早朝からダーッとカップルが列をなして映画の公開を待つというのは、非常にうらやましい限りだったわけですね。そのくらいにスターを見に映画館に足を向けるという、非常に美しい状態が韓国ではでき上がっているなと。

それは日本映画も見習いたいところなのですが、そんな中で確かにギャランティは高いです。今、李さんがおっしゃったかどうかわからないのですが、とりあえず5000万円をギャランティで要求している俳優さんが男優で5人います。その5人の俳優さん、もちろんソン・ガンホもハン・ソッキもチェ・ミンスクも入っていますけれども、その俳優さんたち、なぜそんな高額なギャラを取るか。

1つには、日本のシステム、日本の映画の状況と比べながらお話をしますけれども、まずスターシステムが確立しているということと同時に、これは制作会社としてサイダスという非常に有能な『殺人の追憶』ですとか、優秀な作品をいっぱい作っている制作会社の代表であるプロデューサーを兼ねるチャ・スンジェさんという、僕は友人なものですから、お話をしょっちゅうするのですけれども、彼とこんな話をしている時に、とりあえず5000万というのは決して高くないのだなと。

まず拘束期間が長いです。『春の日は過ぎゆく』というのが非常にナイーブなラブストーリーですけれども、通常でいえば、日本映画であれば、多分30日ちょっと、45日間くらいの撮影期間、1.5カ月で制作をする映画の規模だと思います。ところが、ホ・ジノ監督の資質もあるのですけれども、韓国で作る場合には4カ月、やはり約2.5倍の撮影スケジュールを組むということが現状としてあります。その期間、当然日本のタレントさんみたくテレビレギュラーなどぬってしまうということはないわけですから、当然拘束期間してはそれだけのロングの拘束になります。『殺人の追憶』では主演のソン・ガンホがやはり5カ月拘束と。そういう意味ではきちっと拘束をして、その映画のために役作りを含めて当たっていくという意味では、拘束期間を考えるとそんなに高額なギャラではないのかなというふうに思います。

あとシステム的には、これはギャランティですけれども、固定のギャランティ、1本いくらというギャランティ・プラス・ロイヤリティが必ずあります。成功報酬ですね。その成功報酬は、動員がリクープラインを超えて1人増えると何ウォンみたいな、非常にそこはビジネスライクになっています。それが、僕も契約書を作りましたけれども、その契約書の中に明記されてきます。そうすると俳優さんが今、韓流ブームで世の中の奥様方が大変ですけれども、スターたちが「ファン」と言わないで「家族」と言います。そのくらい非常に映画ファンを大事にしているという現状がありますけれども、それはなぜかというと成功報酬が保証されているからなのですね。
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