文化庁主催 第5回コンテンツ流通促進シンポジウム“次世代ネットワーク社会の到来は著作権制度を揺るがすのか”

第2部:研究報告

「平成18年度 次世代ネットワーク社会における著作権制度のあり方についての調査研究」

澤伸恭(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社客員研究員)

澤 伸恭

 ただいま御紹介にあずかりました三菱UFJリサーチ&コンサルティングの澤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、第2部研究報告としまして、「平成18年度 次世代ネットワーク社会における著作権制度のあり方についての調査研究」の概要について、簡単に御報告させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 調査研究の実施概要です。先ほどお話がありましたように、調査研究会を創設して実施いたしました。調査研究会のメンバーは、実務家、著作者、学識経験者、法律家等の計13名の御専門家の方々で、主査は弁護士の前田哲男先生に御担当いただきました。平成18年の6月から平成19年の3月まで10回の調査研究会を開催して、委員の先生方に御議論いただきました。

 調査研究会の委員名簿です。第1部の金先生、そして第3部のパネルディスカッションの先生方も皆さんこの調査研究会のメンバーです。

 調査の流れです。まず音楽ビジネスの現状のビジネスモデルを把握し、その課題を抽出しました。その上で著作権等を用いた資金調達スキームをいくつか検討いたしまして、スキーム別の課題を検討しました。さらに、その中で実現可能性があると思われるスキームをいくつか抽出し、より詳細に検討しました。

 調査研究の背景と目的です。改めて申し上げるまでもないのですが、社会のあらゆる場面においてデジタル化された情報がネットワークを介在して流通する時代が到来しつつあるという中、現在の著作権法が想定していなかった著作物の創造・流通・利用・管理形態が広がっています。その中で、現在の著作権法の枠組みでは十分に対応できない可能性があり、新たな発想で議論をすることが重要ではないかという背景を踏まえまして、新しい時代に即した著作権制度のあり方について、長期的視野に立った検討を行うということを目的に実施しました。このようなテーマですので、必ずしも結論を出すことを目的としたものではありません。実際、委員の先生方は様々なお立場、様々な御意見の方がいらっしゃいますので、意見が一致するという場面の方がむしろ限定的であるということが実態でもありました。

 調査研究会における検討の流れです。次世代ネットワーク社会における著作権制度のあり方に関する論点と提案を抽出し、それから論点を整理して、基本的姿勢を検討しました。また、制度上問題になり得る論点について検討し、ここで1度立ち返り、次世代ネットワーク社会において想定される社会の変化について検討し、その社会の変化を踏まえて、著作権制度のあり方に関する検討結果を整理するという手順で検討を行いました。

 次世代ネットワーク社会において想定される社会の変化についてです。ここでは、まず社会全体の変化はどのようなものなのかについて御議論をいただき、さらにその社会全体の変化が知的創造サイクルに及ぼす影響を検討しました。これは2段階に分けて、社会全体の変化が著作物等を取り巻く環境に及ぼす影響は何かということと、さらにその著作物等を取り巻く環境の変化による知的創造サイクルへの影響は何かということについて御議論いただきました。そして、社会の変化への対応にあたっての留意事項について御意見をいただきました。当然のことながら、ここにおいても調査研究会の中で一致した見通しを持つことには至っていません。

 まずは社会全体の変化について出た御意見を御紹介させていただきたいと思っておりましたが、先ほど金先生から御報告があったことと重なるので、ここでは割愛させていただきます。

 社会全体の変化が著作物等を取り巻く環境に及ぼす影響としてどのようなものがあるかということについて、大きく2点御意見をいただいています。
 1点目は、著作物、創作・流通手段、創作者、ユーザー等の量的拡大・多様化です。
 2点目は、著作物、創作・流通の形態、手段等における質的変化です。質的変化は、例えば、インターネットで共同作業するということで共同の著作物が増える、あるいはインターネット等のネットワークを通じて著作物そのものが無体物として流通するため、流通コストが削減されるというようなことです。

 

123