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パネルディスカッション


 
   
第二部 パネルディスカッション
   
   
「映像コンテンツ契約の現状と課題」
   
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     実演家については、視聴覚著作物製作契約により、実演家の権利が、こちらでは、法定許諾されますが、この契約には、実演家の署名が必要とされ、また、利用方法ごとの異なる報酬を定めなければならないとされています。
今回の実態調査では、著作者であれ、実演家であれ、新しい媒体で利用する場合には、改めて許諾を得る必要があると、権利者サイドもユーザーサイドも考えていました。 レコード製作者・実演家は、商業用レコードの複製やインターネット送信については、原則、許諾権を有しますが、放送および放送の有線同時再送信、そのための複製については、報酬請求権となっています。
このように、フランスでは、視聴覚著作物製作契約により、著作者の権利、あるいは実演家の権利が、推定譲渡や法定許諾されるとともに、利用方法ごとの報酬支払いが義務づけられているため、集中管理制度が非常に発達しています。映像コンテンツをマルチユースする際の権利処理の大半は、今、画面上に表示されている集中管理団体を通じて行われています。
  財田氏    
     最後に、ネット配信の現状ですが、過去の作品をネット配信する際には、改めて、権利者から許諾を得る必要があるので、現在、放送局と集中管理団 体との間で、使用料交渉が行われているところです。一部の大きな問題にならないと思われるような作品について、放送局側は、使用料が決まった後に、さかのぼって使用料を支払うことを前提に、VOD配信をスタートしているとのことでした。
実演家に関しましては、2007年に、放送番組のVOD配信に関する団体協定が成立し、実演家の権利処理の相当数が容易になったと聞いております。最近の作品については、できるかぎり、製作段階で権利処理をしております。新作については、放送終了後、1週間のVOD配信である、キャッチアップTVと呼ばれるサービスが行われており、これは、通常、最初の放送権に含まれております。
 続きまして、イギリスの調査結果に移らせていただきたいと思います。まず、イギリス法の特徴ですが、イギリスでは、映画の著作物とともに、レコ ードと放送が著作物と定められており、著作隣接権の対象となるのは実演だ けとなっています。また、放送の概念が、日本法よりも広く、無線放送、有 線放送に加え、インターネットでの放送の同時送信、インターネットストリ ーミング送信、生イベントの同時ネット送信も含まれます。ただし、実務上 、地上波放送と、インターネット送信が別々に取り扱われているのはフランスと同じです。
また、日本と同様に、職務著作の規定がおかれているのが特徴です。ただ し、日本法でいう従業員である必要はありません。役務契約を締結していれば、職務著作が認められますが、この役務契約については、イギリスでもさまざまな解釈があるようです。また、雇用主は著作権者となり、著作者となるわけではありません。このため、職務著作であっても、著作者人格権は、 著作者が持ちます。この点は、日本の職務著作と異なっております。一方で 、著作者人格権は、譲渡はできませんが、放棄が可能となっております。
 続きまして、映画の著作物は、「何らかの手段により、動く影像を生じさせ得るあらゆる媒体上の記録物」と定義されており、劇場用映画、放送番組 、ビデオグラムはすべて、著作権法上の映画に含まれます。イギリスでも、 日本の29条2項のような、放送のための映画の著作物という定めはありません。映画の著作者とみなされるのは、製作者および主たる監督ですが、職務 著作により、現実には、製作者のみが映画の著作権者となっています。さらに、監督は、製作段階で、一定の氏名表示を担保した上で、著作者人格権を放棄する契約を、製作者と結んでいますので、イギリスでは、実質的には、映画製作者が、映画の著作物の唯一の権利者となっています。ただし、近年 では、ギルドとの協定に基づき、監督に一定の追加報酬が支払われることがあります。
   
         
   

 次に、原著作者に関しては製作段階で、ギルドとの協定に基づいて、マルチユース契約を結んでいます。しかし、過去作品をネット配信する場合には、ライターやエージェントから、個別に許諾を得る必要があります。実演家の場合も同様で、製作段階で、ギルドとの協定に基づき、マルチユース契約を結んでいます。実演家は、イギリスでは、固定された実演の放送について、著作権法上、権利を有していませんが、ギルドとの団体協定に基づき、追加報酬の支払いを受けています。
 作詞家・作曲家については、日本同様、集中管理団体による集中管理が進んでおり、マルチユースに際して特段の問題は生じていません。レコードについても集中管理団体があり、インターネット送信を含むマルチユースの大半の権利処理が、集中管理団体経由で行われています。イギリスでは、レコードは著作物であり、レコード製作者は、放送についても許諾権を有していますが、放送局が集中管理団体と包括契約を結んでおり、事実上、報酬請求権化しています。また、昨年には、二次利用も含んだ包括契約となったため、放送番組のマルチユースは行いやすくなっています。ただし、ビートルズなどの著名なアーティストについては、個別に露出を制限する例も見られます。
 最後に、ネット配信の現状ですが、過去作品のネット配信については、とりわけ、個別の許諾が必要なライターの権利処理が難しく、使用を断念することも多いそうです。最近の作品については、団体協定や集中管理団体を通じた権利処理により、ネット配信自体は可能となるように進んでいますが、新しい媒体での使用については、収入もそれほど多くなく、使用料交渉が難航する場合も少なくないようです。
 また、イギリスでも、フランス同様、新作については、放送終了後、30日程度のキャッチアップTVサービスが、既に行われていますが、この権利は、最初の放送権に含まれています。なお、イギリスもフランスも、キャッチアップTVは、基本的に無料で提供されています。
 以上、駆け足でございましたが、イギリスとフランスの調査結果のご報告とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

上原   財田さん、どうもありがとうございました。フランスの管理団体として、出ていましたところは、フランスの主なところでございまして、これ以外にもたくさんございますが、この主なところで、大体の権利処理がある程度できるような状況になっているというところだと思います。また、イギリ スにおいて、監督さんがほとんど権利を持ってないというのは、少しびっくりしたところでありますが、劇場用映画などでは当然、有名監督さん等は、 特約をしておりますので、そういう例外的なケースが別途あるというふうに、ご理解ください。
それでは、引き続きまして、今度は、張さんの方から、韓国における状況 について、プレゼンテーションをお願いしたいと思います。よろしくお願い いたします。

張   よろしくお願いします。先ほど関本先生から韓国は少し特殊な事情であるという話があったのですけども、本日は、韓国の映像コンテンツの契約に おける特徴というものを、簡単にご説明させていただきたいと思います。 韓国の著作権法では、映像著作物の円滑な利用のために、映像著作物に関する特例の規定を設けています。第99条では、「著作物の映像化」というこ とで、「著作財産権者が、著作物の映像化をほかの人に許諾する場合、特約がないときは、脚色、公開上映、放送、転送、複製、頒布、翻訳して同じ方法で使用することを含んで、許諾するものと推定する」というふうに規定しています。
 こちらに、「公開上映」、「放送」、「転送」というふうに、1号から並べているのですけども、すべての使用形態に適用されるのではなく、「公開上映のための映像著作物を公開上映する場合」、「放送目的の著作物を放送する場合」、「転送目的のものを転送する場合」というふうに、目的が限定 されています。そのため、放送するためのものを転送する場合とか、公開上映する場合には、また別途、処理が必要になるということになります。ただし、実質的には、製作の段階で、すべての形で使用できるように、権利の処理をしています。一旦、この原著作者から許諾を得た映像の製作者は、その後5年間は、何の処理もせず、映像化を自由にできる、すなわち独占することができるようになっています。
 次の第100条では、映像著作物に対する権利を決めています。監督などいわゆるモダンオーサーの権利については、特約がないかぎり、映像の製作者 へ譲渡されたものと推定されます。当然ですけども、例えば原作の小説家など、いわゆるクラシカルオーサーについては、この推定が適用されないと、第2項に確認規定を置いています。また、特約がないかぎり、俳優など実演家に関しては、その権利が映像製作者へと譲渡されたものと推定されます。 ただしこの実演家に関しては、韓流スターなど著名俳優の場合のように追加報酬などが支払われるケースもあります。
 韓国においては、このように、製作された映像著作物に関して、特段の契約がないかぎりは、基本的には、映像の製作者が、当初の目的に沿って、自由に使うことができるようになっています。ただし、もちろん、音楽に関しては、別途の許諾を得る必要がありますので、韓国のJASRACに該当する韓国音楽著作権協会(KOMCA)に権利処理をお願いすることになっています。使用を申し込んだときに、断られることはあまりないので、実質は 、報酬請求権と同じように扱われているといわれています。

   

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