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パネルディスカッション


 
   
第二部 パネルディスカッション
   
   
「映像コンテンツ契約の現状と課題」
   
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        そのほか、クレジット。例えば、監督、脚本など、どういったクレジットにするのか、あるいはどういう大きさにするのかなど、非常に細かいことが定められています。
さらには、基本的な労働条件、年金、保険、その他、紛争解決など、およそ想定される問題に関しては、この基本協定の中で定められています。
    以上が基本的な考え方ですので、アメリカの場合は、まず、その著作権法の「Work made for hire」という概念によって、映画製作者、プロデューサーとか製作プロダクション側が、脚本家や監督、あるいは俳優その他の人たちの権利を、いわば吸い上げるというか、全部持つという形になります。しかし、では何でも自由にできるかというと、そうではなくて、各ギルドとの基本協定の中で、追加報酬を払ったりとか、クレジットその他の製作上のいろいろな制約を受けたりとか、そのようなことがあるわけです。
    最後に、その他の問題点について、いくつかお話ししたいと思います。第一に、ギルドと製作者側の団体との間で定められているミニマムのギャランティーや二次使用料を超える報酬についての取扱いです。
升本氏
    さんたちが所属する団体でありまして、AFTRAの方は、放送番組の出演者の団体だというような形でスタートをしています。
        例えば、ウィル・スミスが、2008年に8,000万ドルも稼いだ。日本円にすると80億弱でしょうか。あるいはトム・クルーズが、宇宙戦争という映画では、全世界の興行収入の10パーセント払われる、そのような契約があったとか、そのような報道があります。ギルドが定める最低二次使用料を超える部分についての追加報酬については、個別に契約によって定められます。特に著名な監督や脚本家や俳優になると、巨額な契約が結ばれることもあります。
    第二に、映像コンテンツ中に第三者の音楽とか映像を使用する場合、これらは職務著作物、Work made for hireには当たりませんので、やはり個別の権利処理をしているということを指摘しておきたいと思います。
    第三に、新しいメディア、特にインターネットでの映像コンテンツの二次使用料をどうするのかということです。2007年、WGAが、3カ月以上のストライキをして、ハリウッドのビジネスが停滞した、という報道がなされたのも記憶に新しいところですが、まさにあれは、インターネットに関する映像の二次使用料の基準を巡って、合意ができずに、ストライキとなったということです。
    現在では、(今日、皆さんのお手元にお配りした報告書の、158ページ辺りに書いてありますが)DGAやWGAは、基本協定を結んで、インターネットの二次使用料率も明確になっています。SAG、AFTRAも同様に、基本協定が締結されるに至っています。
    最後に、その他のギルドの関係というのは、先ほど申し上げましたように、脚本家、俳優、監督だけでなく、そのほかのスタッフの人たちも、ギルドを組成して、映像製作者、プロデューサー側との団体交渉を行うといった、同じような考え方で規律されているということです。以上です。


上原   どうもありがとうございました。アメリカにおいては、職務著作とギルドがベースになっているというお話だったかと思います。ここで、一応4カ国のご報告が終わりましたので、今ご紹介いただいたことを中心に、簡単にまとめてみたいと思います。
    先ほどのプレゼンテーションにありましたように、もともとフランスは、自然人しか著作者になれないという、非常に自然法的な基本に従った国でございまして、そういう意味では、権利者に対する保護が厚いわけでございますが、利用に対する、ある意味で、目配りがされていて、それが、推定譲渡、あるいは法定許諾という形で定められ、それを、今度は補うために、いわば、報酬請求権化した形、つまり報酬を同時に決めなさいということになっているということでございます。
    この明示的な製作契約につきましては、報酬の定めが具体的にされていない利用方法については、譲渡されたものとは見なされない。あるいは許諾されたものとならないという意見もありますし、そこは、後から払えばいいんだという意見もあったりして、少し解釈が分かれているようではありますが、かなり厳しくとらえられているというところでございます。
    どちらにしても、実態的には、法律の制度に基づいて、報酬請求権化したスタイルになっているために、集中管理団体が、非常に発達しているということでございます。権利者の団体が、直接、実際の運営を行うということではなくて、実際の運営は、それを行うことを請け負う会社が、管理団体として行うというような構造になっているということでございます。
    それから、イギリスにおきましては、監督の権利は職務著作になるということですが、レコードは、著作物で、放送の許諾権を持ちながらも、実態としては、PPLという、管理団体の下に一元化されて、報酬請求権化されているというような状況があるようです。
    ところが、逆に、実演家の場合は、隣接権を持っておりますが、固定された実演の放送権は、イギリスではありません。しかしながら、ギルドが構成されていて、ギルドの基本協定によりまして、ここのところは、例えば、放送の再放送、リピート放送ですね、について等、あるいはその他二次利用について、かなりいい料率の、報酬が決まっている。放送の、固定された実演の放送については、リピート放送等ですが、これは、日本のリピート放送の、通常の実演家さんの料率から考えられない、非常に高い料率が定められています。
    BBCが、BBCで製作したものを、もう一度リピート放送する場合には、最初のギャランティーの100パーセント、プラス、インフレ加算がされますので、1971年に製作・放送した番組を、2008年に放送する場合には、最初のギャランティーの700パーセントを支払わないと、放送できないということでございまして、実際には、再放送はほとんどできないという実態になっているということでございます。この辺も日本ではあまり知られていないところでございます。
    ギルド側もそうしたことは認めておりますが、一方で、実演家の団体といたしましては、出演機会の創出の方が大事であるので、二次利用の促進よりも、出演機会の創出、つまり、再放送をできるだけストップするということの方に、より力点を置いた今の制度は維持したいという話がございました。そういう意味では、コンテンツ流通という部分については、ここにストップがかかっているというところがあるわけでございます。
    アメリカについては、ギルドと職務著作があるという点では、英国と同じでございますが、このギルドと職務著作の部分に特化して、制度、システムがつくられているという部分においては、やはり、イギリスと相当違った状態にあるであろうと思います。
    ギルドという言葉は、日本でもよく知られておりますが、その実態については、あまりよく知られておりませんところで、先ほど、升本さんからのご説明にもありましたように、イギリスでもそうでありますが、基本的に、労働組合であるということで、労働組合としての権利を持っておりますので、例えば独禁法がかからないというような、さまざまな利点といいますか、プラス点を持っている部分があるということが大きいかと思います。
    ちなみに、いわゆるエキストラの方々は、米国のギルドの基本協定では、追加報酬をもらう権利はありませんが、ギルドの組合員にはなれます。どこにメリットがあるかというと、労働組合でございますので、さまざまな最低労働条件が決められておる。その部分が享受できるということになるわけでございます。
    それから、韓国です。順番と違って、韓国を最後にしましたのは、韓国は一番、制度としては特殊な国ということだろうということだからでございまして、販権に支えられたシステムということになっております。

   

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