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パネルディスカッション


 
   
第二部 パネルディスカッション
   
   
「映像コンテンツ契約の現状と課題」
   
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    上原 ありがとうございました。それで、物を欲しがらないというところですが、これ非常に面白くて、韓国へ行きますとよくいわれるのですが、日本の人は物を欲しがるのでDVDが売れて大変うらやましいというふうに、向こうの業者の方にいわれます。アメリカやイギリス、ヨーロッパへ行きましても、日本ほどDVD等が「物(ぶつ)」のかたちで売れるところは少ないと。アメリカやヨーロッパでもまだビデオグラム市場は残っておりますが、日本のほうがはるかに優勢であるということで、おそらく隣の国でありながら日本が一番物を持ちたがり、韓国の方が一番物を持ちたがらないというか、無くてもいいということかと思います。
   そういう点で、日本では放送番組あるいは映画などでも、展開するときに映像のマルチ展開ではございませんが、映像を黒字にするためあるいはよりもうけを得るための一つの二次利用といいますか、展開の仕方としてマーチャンダイジング、あるいはキャラクターグッズの販売ということが行われているわけですが、韓国ではほとんど無いというふうに聞いておりますが、それはいかがでしょうか。

張   そうですね、放送とか映画のDVDが全く売れてないわけではないのですけども、基本的には、特にテレビ放送の場合は、一回見れば終わりという認識が強いというのがあります。ただ最近一部の、たとえば視聴率は低くても、ファン層が厚い一部のマニアのドラマに関しては、視聴者の書き込みができる掲示板とかに、これDVD化しろというような視聴者の声がたくさんあるとDVD化するというようなことは起きていると聞いています。

上原   ありがとうございます。なんかマニアの方というのはどこの国にもいるみたいで、そういう方の声というのも逆に強く出てきているということでしょうね。キャラクターグッズなどはほとんど売れないそうで、ソウルで売っているキャラクターグッズは、ほとんど日本人観光客向けであるというふうにお聞きしております。
   ということで、特有の環境があり、また国自体がバックアップしていて、たとえばインフラの整備でございますが、こうしたものは実質的には国のお金で行われているところが、韓国の場合あるというところで、それに対する原資を取り戻す必要があまり無いというところも、実は黒字化に貢献しているところが大きかったと思います。韓国についてはそうした特殊な事情の中で、黒字化がされているということでございます。
   次にキャッチアップTVですが、実はキャッチアップTVは韓国でも無料ですよね。実はキャッチアップTV、NHKさんが苦労なさっているNHKオンデマンドの中の、半分ぐらいがキャッチアップTVで、そのうちのいくつかが無料で、いくつかが有料というかたちになっているのだと思いますが。世界的にはキャッチアップTVは、調べた4カ国でどこも無料でございました。イギリスでは30日程度のキャッチアップTVの権利が、一次放送と同時に得られております。ITVさんはそのまんま無料でやっていますが、BBCさんが最初の1週間は無料で行って、残りを関連会社のBBCワールドさんを通じて、カンガルーテレビということで、有料でやろうとしましたがうまくいかずに、有料化を諦めれてるという状況が現在あるようでございます。そういう意味ではインターネット配信の有料化というのは、なかなかに難しい状況にあるということかと思います。
   アメリカにおきましては、先ほど関本さんのご説明にもございましたが、当初ハリウッドもあまり熱心でなかったのが対抗的にできたということと、実際には一昨年のライターズギルドとの交渉が成り立ち、その後SAG、AFTRAとの交渉が成り立ったということで、かなり出やすくなったという、そういうことも含めてここのところアメリカにおいては、映像の配信がだいぶ流れてきているという状況があると思うのですが、そのあたりは升本さんいかがでしょうか。

升本   そうですね、やはりこのギルドとの基本協定は、基本的には4年ごとに内容を更新していくということですので、当然新しいメディアが出てきた段階で、それを前提とした使用料の条項などについて交渉していくことになります。ですからそういった意味では、アメリカでは、権利処理に関するルールが、システムとして明確になっているという面があるといえると思います。日本ですと、先ほどもでましたが、契約内容を書面化してなくて紛争が起こるなど、ルールが明確でない中での紛争がよくあるわけですが、アメリカの場合はいったん決まれば、そのルールに従って動いていくということがあり、こうしたことは日本と異なる特徴であるといえるのかなとは思います。

上原   ありがとうございました。それではだいぶ時間が少なくなってまいりましたので、現状をどう見るかというのは、このへんまでにしていきたいと思いますが、何かここまでで特にご質問というのは、フロアからございますでしょうか。よろしゅうございますか。よろしければ、今後のことを見定めてどんな方策があるのか、あるいはどんな方策が無いのか、無いのかというと希望がなくなってしまうのですが、というようなことを、若干お話したいと思うのですが。
   先ほど岡本さんの報告の中から、93条の問題が出てまいりました。つまり放送のための固定というものです。実は日本では録音録画権、91条で実演家がもっておりますが、録音録画権の許諾をしてしまいますと、基本的にその他の財産権としての隣接権が無くなってしまうということになります。
   ただし、放送許諾を受けたものについては、放送に使う目的のためだけ固定をすることが別途認められるというかたちで、それは放送以外には使えないと。別の目的に使うときには改めて一から許諾を取らなければいけないというところで、これが問題であるのではないかということは、実は数年前から指摘されていたところでもありますし、岡本さんの発表の中ではこのような、決まりはほかの国にはないということがございました。
   また、先ほどの財田さんからのプレゼンテーションにもありましたように、29条2項つまり専ら放送のために技術的に作られた映画の著作物、というような規程も他の国には見られないところでございました。というところで、果たして93条を取っ払ったら、映像コンテンツの促進と流通がうまくいくのかというところでございますが、このへんにつきましては1番関連の深い大林さん、少しご意見を賜りたいと思いますですがいかがでしょう。

大林   iPodの議論の中で、視聴覚的著作物という概念で議論されていたと思うのですが、その概念で統一しやるのかどうなのかという、これからの著作権の議論があると思いますが、乱暴に言えば、ある意味ではわたしはどうでもいいなと思います。というのは、実演家は現場で演技し、歌を歌いいろいろなことをやって、ものを作っていくわけですから、それがあってその後の利用があってということで、できればクリエーターとビジネスそしてユーザーと、この三者がどのような満足を得られるかということで、法律というのはハーモナイズしていかなければならないだろうと。
   私は一方の当事者でございますので、当事者から見れば、そこをハーモナイズしていかないと未来はないのだろうなと。一番大切なことは、著作権というものは、文化であること。これは先日の著作権分科会のほうで、斎藤博先生のご講演の後に、東京芸大の根木昭先生が文化芸術振興基本法を引きながら、そして旧文部省設置法の中の、一文を引きながらおっしゃったことなのですが、ここをきちっと抑えていただきたいということがわたしたちの願いでございます。
   ものを作る者に適正な権利保護と適正な対価が還元し、より次の創作のサイクルというものが生まれてくるという中で、いろいろなことを考えていただければいいなということが願いでございます。いろいろなビジネスがあることは確かに大切でしょうし、それに伴う流通も大切だと思いますけれども、こういう論議の中で、そこは絶対に忘れてはいけない部分ではないかなということです。今日このことだけは本当に申し上げておきたいなと。そのようなことは分かっているという方が一杯いらっしゃるかもしれませんが、ぜひ今後の議論で、頭の中に残していただきたいと思っているところでございます。

   

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