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講演


 
   
第一部 特別講演
   
   
「契約面から見たNHKオンデマンドの現状と課題」
   
   
関本 好則 (NHK放送総局特別主幹)
   
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司会   続きまして、3人目の講演者の方をご紹介いたします。NHK放送総局特別主幹の関本好則さまでございます。関本さまは昨年12月から開始されました、インターネットで放送番組を配信するという、NHKオンデマンドに関わっている方でございまして。このプロジェクトの開始に当たりましては、いわゆる原野に契約ルールという道を何本も作られるという地道な、困難な交渉を続けてこられたわけでございます。
わたしの立場から申し上げますと、契約ルールを整備することにより、コンテンツがネットに供給できるということを実務をとおして立証され、放送業界における契約システムの改善に多大な貢献をされたというふうに考えております。本日は、契約面から見たNHKオンデマンドの現状と課題というテーマで、NHKオンデマンドについてご紹介いただくということでございます。それでは、関本さん、よろしくお願いいたします。

  関本氏1    
    関本   NHKの関本です、よろしくお願いします。よく知っている方が多くいらっしゃいますし、どういうレベルでしゃべったらいいのかなと思っていたのですが、みなさん岡本さんの話を理解されているとすれば、相当プロの方たちばかりかなというふうに考えてお話をさせていただきます。1つは、オンデマンドの現状と課題、契約面を含めてを中心にお話をしようと思いますが、時間があれば世界の現状と課題みたいなものについてもお話をさせていただきたいと思っています。
 参考のために振り返って年表を書いたのですが、まず、テレビのインターネットを利用した配信についていうと、日本まず、テレビのインターネットを利用した配信についていうと、日本の民放さんが実は世界で一番早かったのですね。これは割合に知られていないのですが、民放さんが最初にやって、このころ、ヨーロッパ、アメリカを見てもどこもやっておりませんでした。これ、トレソーラの実験をやって、実は大赤字だったものですから、民放さんだけが赤字になるのは大変だというので、経団連で「利用者団体協議会を作れ」という話になり、そこである種の権利者団体のレベニューシェア、どれだけの収入があった、この団体には何%とかという料率を決めようとしたのですが、ここで決めきれなかった。正直いって、「実演家さんの団体さんの料率はあまりにも低すぎるよね」というふうに、後で聞いて思いました。この、決めたのだけれども利用されなかったという状況の中で、実はここで竹中さんが総務大臣になられて、NHKはそれまではインターネットに関しては番組配信とかも含めて、「絶対にやっちゃいけない」と、いろいろなルールを決められて、「ドラマの配信なんてとんでもない」というのがこの辺で決められて、われわれ、何の準備もしておりませんでした。それがここの政府与党合意辺りから「NHKやれ」というふうに決まって、大慌てをしました。ここからピンク色で書いてあるのは、状況が変わったというのと同時に、わたしはここから関わっておりますので、この辺の話は伝聞の話しか知りません、そこのところはご了解ください。
 それから、この2005年、2006年というのは、世界でもいろいろな動きが出てきたときです。BBCが5,000人を対象にしたiPlayerの配信実験を始めたり、フランスの公共サービスが有料のVODサービス、NHKがやっているようなものを始めて、実はこれ、半年で撤退しました、無料にしました。つまり、ビジネスとしては全然成り立たないし、ほとんどの人が見ないということで無料化しました。
 実はアメリカのテレビ局というのは、こういった状況を見てきて、「儲からない」と思い、あまりやる気がありませんでした。ところが、YouTubeが出てきて、どんどん違法サイトが出てくるものですから、違法に出されるくらいだったら、自分たちでやった方がいいというので、ABC・ディズニーが最初にトップをきって各放送局が始め、ここも最初のころ、上手くいったとはいわれていたのですが、全社苦戦しました。この後にこの「hulu」があります。これ後で時間があればお話ししたいと思うのですが、韓国は少し特殊なので除くと、世界中で実はこういう動画配信、ネットの動画配信で儲かっているところはないですよね。ただ、ひょっとしたら唯一、単黒になるだろうというのがこのhuluで、このhuluについては相当、今までと違った考え方で出てきているということです。
 それから、ちょっと日本側に戻りますが、こういう動きの中で「NHKもやれ」となったので、実は、じゃあ、その権利者の方々の許諾をとらないとできないのに、これ空中分解していましたから、「どうしようか」となりました。ここで大層な名前がついていますが、「第1回の報告会、ネット配信などの合意」というふうに書いてありますが、ここで実演家さんも含めて、この段階で一応「こういうルールでいこうね」ということが決まり、放送法改正があって、施行があって7カ月でNODがスタートしました。このことが後々、えらいことにつながります。

 最初にもう率直に申し上げますが、最初の事業計画に比べると大変苦戦をしております。1つは100年に一度の金融危機、リーマンショック、に重なって去年の12月に始まった。300円の弁当を買うことを一生懸命考えている時代に「NHKの番組、45分300円で払って買うかよ」というのを中でも議論していて、「いくらなんでも高すぎるよね」と。NHKという局は残念ながら価格も自由に決められない。総務省さんに報告して、みんなパブコメかけてというようなことをやらなきゃいけないということもありますが、この金融危機が非常に響いている。それから、さきほど申し上げたように、世界中で動画配信自体、苦戦中です。YouTubeだって単黒の見通しはまったくつかないので、今、BBC、NHKも受けましたけど、世界の放送局に入って、いわゆる投稿動画ではコマーシャルつかないので、「ちゃんとしたところ入ってください」ということで走り回っている。
 それぞれの項目についてはそれぞれ、関係するところで申し上げますが、この黄色で書いてあるところですが、半年でぶっつけ本番で一番困ったのが、12月1日からのサービスだったのですが、11月30日まで、実はこのシステム、NTTデータさん、もう最後の最後まで、明日ちゃんと出るかというぐらいの作業の突貫工事でした。そのためにDRMでコピー制御なのですが、権利者団体さんの「ネットって簡単にコピーできるじゃないか」という疑念があったので、じゃあ、「世界の最高水準のDRMを使いましょうね」という緩やかな合意をしました。NHKの技術陣というのは本当に真面目で、本当に世界最高水準のものを使っちゃったのですよ。ウィンドウズ2000というのをかけたのですね。そのために何が起こったかといいますと、当初はDRMの問題で、VistaかXPの1年ぐらい前に買ったもの以外は入れない。つまり、たどり着けないということが起こりました。これの解消に数カ月かかりました。それから、ウィンドウズのDRMを使っているものですから、Macを使っている方は見られない。それから、ウィンドウズでもいろいろなブラウザがあって、実はウィンドウズを使ってちゃんと入れる人は、パソコンを持っている人の65%しか現実にはいないのですね。しかも古いパソコンだとなかなか入れないというので、想定ですけど、今でもパソコンを持っている方の半分はNHKにアクセスできないというような状態に入っています。ここは実証実験も何もしないでやったつけがまわったのだなというふうに思っています。さきほど、携帯の話がありましたが、ビジネスモデルを含めて、まだまだできてないというところがあります。
 それから、もう1つの誤算は売上高比で見ますと、PC系と、IPを含むケーブルを含めてですが、テレビ系でだいたい6対4、あるいは、正確にいうと、6.3対3.7ぐらいになっています。当初始まったときは、実は5対5ぐらいだったのです。僕らは1年たったら、これ反対だと思っていたのですね。ご覧になった方はよくお分かりだと思いますけれども、テレビ系で見ると、40インチ、50インチのフルハイビジョンで見ても、ほとんど遜色のないぐらいの映像が出ています。わたし、60歳ですから、例えば60分とか90分のドラマをPCで見るなんていうのはもう辛くてしょうがないのですが、テレビで見ると、もう普通に見られます。だから、テレビ系の方がいくだろうと思いました。アクトビラとNTT、J:COMでスタートして、その後イッツコムさん等いろいろ入ってきて、これからも増加すると思いますが、ここがもっと伸びるだろうと思いましたが、意外に伸びていない。これも不況のせいで後継機が売れないとか、あるいは、それ家庭で買って、実はその受像機自体は対応しているんだけど、どうやってその線につないでいいか分からないという方が結構いらっしゃるとか、その辺の問題があってなかなか伸びていないというのも誤算です。
 このページ以降に出てくるデータの、かなり詳細なデータが出てきますが、PC系のみのデータです。アクトビラさんとか、ひかりさん、よそさまに売っているってことがあって、詳細なデータが入ってこない。それから、いわゆる属性とか、いろいろなことについては各社さん、テレビ系のところはやってらっしゃらないので、PC系だけだと思ってください。まず、PC系の会員数は一応右肩上がりには伸びています。これは、想定数でいくと全然下ですが、一応右肩上がりに伸びていまして、今日聞いたら18万ですから、20万の登録会員が居ると。登録会員というのは住所、氏名、年齢含めて、自分のパソコンのナンバーも含めて全部登録して、もういつでも見られる状態にまでした人のことをいうのですが、約20万まではいきました。これにテレビ系がもしあるとしたら、6対4の比率でいくと、36~37万ぐらいの会員かなというふうに推定されるところです。
 実は、これもPC系だけではこういうことが分かるのですが、少し細かいので、手元の資料を見ていただいた方がいいかも知れませんが、一番ピークで見ているのが40代で、次が30代と50代、60、70代とかはどーんと落ちます。NHKの番組のNODを見ている40代、しかも、男性が77%、これも大誤算です。これでは商売にならない。NHKの番組を見ている人たちですが、50、60代が圧倒的ですよね。50、60、70代、この人たちが見てくれないと、母数が増えないということがもう最初からわかっていて、この人たちが見てくれるのはテレビしかないと、パソコンでなんか見ないというふうに思っていた。そこが大誤算の1つだといえると思います。
   
         
岸原孝昌「携帯向け映像配信ビジネスの現状」 │ 関本好則「契約面から見たNHKオンデマンドの現状と課題」

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