当面の文化芸術活動について

 このたびの東日本大震災によって亡くなられた方々の御冥福を衷心よりお祈り申し上げるとともに,被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。被災地においては,今なお行方不明の方々の捜索が続き,不安かつ御不自由な生活を余儀なくされている方々が多数いらっしゃることには胸が痛むばかりです。

 こうした中で,余震のおそれや計画停電,事業の自粛などにより,被災地以外の地域においても伝統的な行事や文化芸術活動が縮小されるなどの動きがあると承知しております。文化芸術は本来,私たちの心に安らぎと力を与え,地域のきずなを強め,明日への希望を与えてくれるものであり,その縮小は経済社会全体の活力にとって好ましいものではありません。全国各地の活発な文化芸術活動によって国民一人一人が活力を取り戻すことが,日本全体の元気を復活させるために必要なことであり,被災された方々に対する一層の支援につながるものと考えます。こうした動きはまた,復興に向けた力強い日本の姿を国際的に印象付けることにもなりましょう。

 被災地では様々な生活支援事業に加え,既に各地で文化芸術を通して被災された方々を慰め,勇気付ける自主的な取組が見られることに意を強くしています。文化芸術は,復興への歩みを進める方々の心の滋養になることを過去の経験が物語っているからです。また大震災直後から国の内外で文化芸術分野におけるチャリティーの催しが数多く行われ,それらを通じて皆様が心を一つにして支援の動きを強めておられるのを目の当たりにしております。海外のアーティストによる支援活動も広がっており,芸術家の国境を越えた連帯と,文化芸術の持つ力を再認識しました。

 文化庁は,従来の文化芸術振興策を積極的に推進するとともに,被災地の復興と歩調を合わせながら,現地での文化芸術活動への支援など,被災された方々を勇気付ける取組にも意を用いてまいります。

 今後,被災された方々に心を寄せつつ,電力事情,安全性等を十分踏まえながら,それぞれのお立場で,文化を創造しあるいは親しむ活動を積極的に行うことにより,日本の力強い復興を支えてくださいますようお願い申し上げます。

平成23年4月12日
文化庁長官近藤誠一

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