平成27年度文化庁映画賞(文化記録映画部門・
映画功労部門)の決定について

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平成27年9月11日

 文化庁では,このたび,文化庁映画賞(文化記録映画部門・映画功労部門)の受賞作品及び受賞者を決定しましたのでお知らせします。

1.表彰の概要

 我が国の映画芸術の向上とその発展に資するため,文化庁映画賞として,優れた文化記録映画作品(文化記録映画部門)及び永年にわたり日本映画を支えてこられた方々(映画功労部門)に対する顕彰を実施しています。
 文化記録映画部門では,選考委員会における審査結果に基づき,次の3作品(文化記録映画優秀賞3作品)を受賞作品として決定しました。各作品の製作団体に対して,賞状及び賞金(文化記録映画優秀賞100万円)が贈られます。
 また,映画功労部門については次の8名の方を受賞者として決定し,文化庁長官から賞状が贈られます。

2.受賞作品及び受賞者

【文化記録映画部門】

文化記録映画
優秀賞
作品名 「生命の誕生」
 ~絶滅危惧種日本メダカの発生~
製作者名 映像計画研究所
作品名 抱擁
製作者名 株式会社スーパーサウルス
作品名 未来をなぞる 写真家・畠山直哉
製作者名 豊岡劇場/SIB合同会社

(作品名50音順)

【映画功労部門】

氏名 分野
飯塚 定雄(いいづか さだお) 光学合成
上田 正治(うえだ しょうじ) 映画撮影監督
大橋 富代(おおはし とみよ) 映像編集
島田 忠昭(しまだ ただあき) 映画照明
白井 久男(しらい ひさお) アニメーション撮影
林 基継(はやし もとつぐ) 録音・整音
松本 正道(まつもと まさみち) 映画上映・普及
吉田 晴美(よしだ はるみ) 映像美術・大道具

(敬称略・氏名50音順)

3.贈呈式及び受賞記念上映会
 (都合により,日時・場所の変更の可能性があります。)

  • (1)贈呈式
  • 日程:10月22日(木) 20:30~
  • 会場:六本木ヒルズ グランドハイアット東京 2F
  • (2)受賞記念上映会
  • 日程:10月25日(日) 11:40~
  • 会場:神楽座(飯田橋)
  • 11:40~ 『「生命の誕生」~絶滅危惧種日本メダカの発生~』
  • 13:20~ 『抱擁』
  • 16:20~ 『未来をなぞる 写真家・畠山直哉』

文化庁文化部芸術文化課

課長
 加藤 敬(内2822)
芸術文化調査官
 入江 良郎(内2829)
メディア芸術振興係主任
 中臺 正明(内2083)

【電話】03-5253-4111(代表)

平成27年度文化庁映画賞贈賞理由及び功績

文化記録映画部門

 文化記録映画優秀賞

 『「生命の誕生」~絶滅危惧種日本メダカの発生~』映像計画研究所

 繊細な音楽とともに,息をつめてじっくりといのちの始まりを実感する13分間であった。
 メダカは実験動物として取扱いしやすく,発生の様子はこれまで数多くの科学映画に収められて来たが,本作品は卓越した撮影技術により,たったひとつの精子と卵子の出逢うための仕組みのひとつとしての卵門の機能を紹介するなど,興味深い映像を美しく簡潔にまとめることで,私達にも共通する「いのち」を見つめる映画に仕上げている。

(矢島 仁)

 文化記録映画優秀賞

 『抱擁』 株式会社スーパーサウルス

 娘を亡くしたショックから精神安定剤に頼る日々を送る高齢の母親を息子が撮った。時に理解しがたい混乱状態に陥る母親は,夫の死をきっかけに郷里の種子島へ戻り,実妹の献身的な介護を受け,次第に健康を取り戻していく。自らの家族を撮ったセルフドキュメンタリーであるが,生まれ故郷や人との交わりの治癒力,“老い”の幸せな迎え方を描き出した。特にケーキを食べながら二人で笑い転げる場面は姉妹の絆の強さを感じさせてくれる。

(中嶋 清美)

 文化記録映画優秀賞

 『未来をなぞる 写真家・畠山直哉』 豊岡劇場/SIB合同会社

 世界的に活躍する写真家,畠山直哉は東日本大震災の津波で実家を流され,母親を失った。その後,2年間密着取材し,写真家とは何かを自問自答して葛藤する姿に迫った労作である。震災後,写真の意味が変わったことや,記憶と記録,写真の芸術性という普遍的なテーマを扱い,震災をめぐる新たなドキュメンタリーとして多くの示唆的な問題を提起している。「もし,当事者の姿を写真に撮っても,その人の過去の体験や記録までは写真には写りません」と語る場面に心を打たれる。

(濱崎 好治)

※( )内は執筆した選考委員名

映画功労部門

飯塚 定雄(いいづか さだお)

 昭和29年の『ゴジラ』で特殊美術助手に就き映画界入り。円谷英二特技監督の勧めで同32年の『地球防衛軍』より作画合成部門に専従し,アニメーション線画を駆使した特殊効果の第一人者となる。熱線を吐くゴジラの背びれの発光や,キングギドラの引力光線,テレビではウルトラマンのスペシウム光線など,独自のセンスで視覚化された空想映像の数々は,火薬によるミニチュアの爆破とも絶妙にマッチした精緻な技術と相まって,エフェクトアニメーターの金田伊功や特撮監督の樋口真嗣,田口清隆らに大きな影響を与えた。同45年には高野宏一,中野稔と共同で合成専門のデン・フィルムエフェクトを設立し,数多くの映画やドラマ,CMの光学合成を担当。デジタル合成時代の到来後は,日本映像クリエイティブなどの会社で後進の指導にあたり,斯界の発展に多大な貢献をしている。

上田 正治(うえだ しょうじ)

 昭和31年東宝に入社。撮影助手として黒澤明作品の他,岡本喜八監督の「独立愚連隊」シリーズ,古澤憲吾監督の「無責任」シリーズなど数多くの作品に参加した後,同46年に技師昇進。黒澤明,恩地日出夫,小谷承靖などの監督作品を手掛け,同58年にフリー。特に黒澤映画の後継者小泉堯史監督とは全作品でコンビを組み数々の名作を残している。
 代表作に『まあだだよ』(平5)『蜩ノ記』(平26)など。日本アカデミー賞優秀撮影賞を4回,最優秀撮影賞を3回獲得。バンコク国際映画祭Asian Perspective Award,シラキュース国際映画祭撮影賞,英国アカデミー賞撮影賞を受賞,またパームスプリングス国際映画祭では審査員を務めるなど国際的な活躍も目立つ。これらの功績に加え,日本映画学校(現日本映画大学)では後進の育成にもあたるなど,精力的な活動が映画界に与えた影響は大きい。

大橋 富代(おおはし とみよ)

 昭和43年に東京テレビセンターに入社。その後,浦岡敬一に師事してフリーとなり『あさき夢みし』(実相寺昭雄 昭49)『ええじゃないか』(今村昌平 昭56)などで編集助手とネガ編集に従事する。一本立ちをして以降は,『蔵の中』(高林陽一 昭56)『生きてはみたけれど 小津安二郎伝』(井上和男 昭58)のネガ編集,テレビでも「探偵物語」のネガ編集,平成「ウルトラマン」シリーズの編集などに携わり,多数の作品に関わりながら現場の後進育成にも努める。2000年代に入ってからは『兼子 Kaneko』(渋谷昶子 平16)や『女性監督にカンパイ!』(山崎博子 平19)『作兵衛さんとの対話 2015』(熊谷博子 平27)など,女性監督たちによるドキュメンタリーの編集を中心に,活発な活動を続けている。日本映画・テレビ編集協会の理事を務めその運営を通じ、斯界の発展にも尽力してきた。

島田 忠昭(しまだ ただあき)

 昭和31年日活撮影所に入社。照明助手として数多くの現場を経験しながら,日本映画照明新人協会に日活支部員として参加し,各社照明助手の連携と情報交換にも積極的に取り組む。同47年にフリーとなり,『宇宙怪獣ガメラ』(湯浅憲明 昭55)で一本立ち。日本アカデミー賞最優秀照明賞を受賞した『泥の河』(小栗康平 昭56)『螢川』(須川栄三 昭62)など,数々の作品で手腕を発揮する。他の代表作には『台風クラブ』(相米慎二 昭60)『嵐が丘』(吉田喜重 昭63)『愛する』(熊井啓 平9)など。日本映画テレビ照明協会の運営委員,機関誌「映像照明」の編集委員,事務局長を歴任し,永年にわたり団体の運営に寄与するとともに,現在は東京ビジュアルアーツで講師を務め後進の育成にも尽力するなど,分野への貢献は多大である。

白井 久男(しらい ひさお)

 日本のテレビアニメの黎明期よりアニメーションの撮影に携わり,昭和49年にはスタジオコスモスを設立。撮影台を使用したセル画の時代からデジタル化が進む現在まで第一線で活躍し,早くから撮影技師の育成にも取り組んできた。『となりのトトロ』(宮崎駿 昭63)『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(押井守 平7)『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』(庵野秀明 平9)「ポケットモンスター」シリーズ(平10~)をはじめ,これまで手掛けた劇場作品,テレビ作品は膨大かつ広範囲にわたる。演出の意図を的確に捉え,動画と背景を一体化して違和感の無い映像を作り上げる手腕は高く評価されており,現在のデジタル制作の工程においても同様の基本姿勢を貫いている。その他の代表作には『おもひでぽろぽろ』(高畑勲 平3)『人狼 JIN-ROH』(沖浦啓之 平12)『千年女優』(今敏 平14)など。

林 基継(はやし もとつぐ)

 録音・整音技師として,永年にわたり京都を中心に関西地方で活躍。昭和48年日本シネスタジオに入社。同50年にフリーとなり勝プロ,映像京都,東映,松竹などの作品に従事する。平成6年には作品仕上げの個人スタジオ884(はやし)を開設(平15年に法人化)。代表作に『陽炎2』(橋本以蔵 平8)『花のお江戸の釣りバカ日誌』(栗山富夫 平10)『いちげんさん』(森本功 平12)『新・仁義の墓場』(三池崇史 平14)『太秦ライムライト』(落合賢 平26)など。平成18年より同27年3月まで立命館大学映像学部教授として後進の育成に努め,日本映画・テレビ録音協会では関西支部理事として斯界の発展に尽力してきた。近年は衣笠貞之助監督『地獄門』(昭28)や市川崑監督『炎上』(昭33)『おとうと』(昭35)『雪之丞変化』(昭38)など古典作品のデジタル修復で音声の監修にあたり,映画保存事業に貢献したことも高く評価される。

松本 正道(まつもと まさみち)

 昭和54年よりアテネ・フランセ文化センターの主任を務め,永年にわたり商業上映の困難な内外の映画を紹介するシネマテークの運営にあたる。古典から現代映画まで多様な作品の上映を通して作家の発掘,再評価に努めるとともに,新進の批評家や映画人による講演会,研究会などを積極的に実施して新たな映画ファンを育ててきた。また,これらと並行して平成9年にはユーロスペース代表の堀越謙三と共同で「映画技術美学講座」を開講,同10年には「映画美学校」を設立して映画人の育成事業にも取り組み,多くの若い才能を輩出している。近年はコミュニティシネマセンターの理事や,東京国立近代美術館評議員(映画部会),川喜多記念映画文化財団評議員などを歴任し,豊富な経験と知識を活かして映画文化の振興に幅広く貢献している。

吉田 晴美(よしだ はるみ)

 昭和29年に東宝撮影所美術課大道具係に入社。同年の稲垣浩監督『宮本武蔵』に参加して以来,60年以上にわたり大道具の製作に携わる。『蜘蛛巣城』(昭32)から『まあだだよ』(平5)に至るほとんどの黒澤明作品をはじめ,豊田四郎,成瀬巳喜男,市川崑,岡本喜八などの監督作,「ゴジラ」シリーズ,「若大将」シリーズなど東宝製作の主要作品に関わる。東宝撮影所在籍中は管理職に就いて以降も技術の継承と経営の両面で手腕を発揮し,平成3年には吉田美術を設立。多くの後進を育てながら自らも映画美術製作の現場に携わってきた。近年の代表作には『清須会議』(三谷幸喜 平25)『小さいおうち』(山田洋次 平26)『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(樋口真嗣 平27)など。東宝作品に限らず,砧のスタジオで撮影される作品のほとんどで大道具を担当し,日本映画の表現技術を支えている。

<参考>平成27年度文化庁映画賞選考委員

【文化記録映画部門】

大前 和美 撮影監督
恩田 泰子 株式会社読売新聞東京本社文化部記者
戸田 桂太 武蔵大学名誉教授
中嶋 清美 公益社団法人映像文化製作者連盟事務局長
濱崎 好治 公益財団法人川崎市生涯学習財団川崎市市民ミュージアム学芸室学芸員主査
原田 健一 新潟大学教授
矢島 仁 東京工芸大学芸術学部映像学科准教授

【映画功労部門】

青木 眞弥 株式会社キネマ旬報社編集本部長
金勝 浩一 映画映像美術監督/協同組合日本映画・テレビ美術監督協会副理事長
佐々木原 保志 協同組合日本映画撮影監督協会副理事長/大阪芸術大学映像学科教授
土川 勉 プロデューサー
氷川 竜介 明治大学大学院客員教授/アニメ・特撮研究家

(敬称略・氏名50音順)

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