平成29年度文化庁映画賞(文化記録映画部門・
映画功労部門)の決定について

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平成29年9月25日

文化庁では,この度,文化庁映画賞(文化記録映画部門・映画功労部門)の受賞作品及び受賞者を決定しましたのでお知らせします。

1.表彰の概要

我が国の映画芸術の向上とその発展に資するため,文化庁映画賞として,優れた文化記録映画作品(文化記録映画部門)及び永年にわたり日本映画を支えてこられた方々(映画功労部門)に対する顕彰を実施しています。

文化記録映画部門では,選考委員会における審査結果に基づき,次の3作品(文化記録映画大賞1作品,文化記録映画優秀賞2作品)を受賞作品として決定しました。各作品の製作団体に対して,賞状及び賞金(文化記録映画大賞200万円,文化記録映画優秀賞100万円)が贈られます。

また,映画功労部門については次の12名の方を受賞者として決定し,文化庁長官から賞状が贈られます。

2.受賞作品及び受賞者

【文化記録映画部門】

文化記録映画
大賞
作品名 五島のトラさん
製作者名 テレビ長崎
文化記録映画
優秀賞
作品名 人生フルーツ
製作者名 東海テレビ放送
作品名 まなぶ通信制中学60年の空白を越えて
製作者名 グループ現代

(作品名50音順)

【映画功労部門】

氏名 分野
浅沼圭司(あさぬまけいじ) 映画学・美学
上松盛明(うえまつもりあき) 特殊造形美術・操演技師
江川悦子(えがわえつこ) 特殊メイク・特殊造形
かわなかのぶひろ(かわなかのぶひろ) 実験映画
鈴木美康(すずきよしやす) タイミング
高橋宏固(たかはしひろかた) アニメーション撮影監督
田辺信道(たなべのぶみち) 映画録音
中本(なかもとあきら) 和楽監修
根岸(ねぎしまこと) テクニカルコーディネーター
古川雅士(ふるかわただし) アニメーション編集
森村幸子(もりむらさちこ) スクリプター
矢部一男(やべかずお) 映画照明

(敬称略・氏名50音順)

3.贈呈式及び受賞記念上映会(都合により,日時・場所の変更の可能性があります。)

(1)贈呈式
日程:10月25日(水)19:00~
会場:六本木ヒルズグランドハイアット東京
(2)受賞記念上映会
日程:10月28日(土)11:00~
会場:神楽座(飯田橋)
11:00~『人生フルーツ』
13:50~まなぶ通信制中学60年の空白を越えて』
16:40~『五島のトラさん』

文化庁文化部芸術文化課

課長
江﨑典宏(内2822)
芸術文化調査官
戸田桂(内2829)
メディア芸術振興係長
中臺正明(内2083)

【代表】03-5253-4111

平成29年度文化庁映画賞贈賞理由及び功績

文化記録映画部門

文化記録映画大賞

『五島のトラさん』テレビ長崎

長崎県五島列島で製麺業を営む大家族を二十二年間,密着取材して完成させたドキュメンタリー。父が確固たる信念と責任のもと子育てをし,子が家族の絆について身体で学ぶという,今の日本では失われかけている家族像が鮮烈にかつ生き生きと刻み込まれている点もさることながら,何よりも父親である犬塚虎夫,通称トラさんの圧倒的な存在感そのものがこの作品にひときわ強い光彩をあたえ,卓抜なドキュメンタリーにしている。

(奥村賢)

文化記録映画優秀賞

『人生フルーツ』東海テレビ放送

愛知県に住む,ある建築家夫妻の自然と調和した豊かな晩年,そしてその背景にある二人の戦後史を丁寧に綴った一篇である。人々のライフスタイルの中に《美》を求めた住宅設計者の姿勢と,それを必ずしも歓迎しなかった高度成長下の日本社会との齟齬をくっきり浮かび上がらせている。終始抑制された柔らかなタッチに徹しているが,声高な発言に頼らずとも,夫妻の生活思想は日常の中で雄弁に語られている。

(岡田秀則)

文化記録映画優秀賞

『まなぶ通信制中学60年の空白を越えて』グループ現代

東京都千代田区立神田一橋中学には,戦中・戦後の混乱期に義務教育を修了できなかった高齢者たちが学ぶ通信教育課程がある。この映画は,それぞれの事情を抱えながらもいきいきと学ぶ生徒と,情熱をもってそれに応える教師の姿を5年にわたり,実に丁寧な眼で追った。特別な偉人やスーパーマンは登場しない。しかし,この映画には,等身大の人生の大いなる勝利が描かれている。見る者に,確かな手触りをもって勇気を与えてくれる。

(山内隆治)

※()内は執筆した選考委員名

映画功労部門

浅沼 圭司 (あさぬま けいじ)

昭和37年『映画美学入門』を著し,日本における映画美学研究のさきがけとなった。映画が今日のように文化・芸術として確たる地位を築く以前の時代から映画の理論的研究に取り組み,『映画学その基本的問題点』(昭40)『映画のために1~2』(昭61,平2)などの著作を発表する。クリスチャン・メッツの『映画記号学の諸問題』『映画における意味作用に関する試論映画記号学の基本問題』を翻訳,その紹介も行った。その外の著作に,『ロベール・ブレッソン研究シネマの否定』(平11)『ゼロからの美学』(平16)『映画における「語り」について七人の映画作家の主題によるカプリッチオ』(平17)など。成城大学,倉敷芸術科学大学,日本大学大学院などで永年にわたり教鞭をとり,日本映像学会会長,美学会会長なども務めた。我が国の映画の学術研究と理論教育に多大な貢献を成し,多くの学生を育て,また,後進の映画研究者に計り知れない影響を与えた。

上松 盛明(うえまつ もりあき)

昭和45年テレビドラマ「はまぐり大将」の小道具を担当。同46年映画『喜劇おめでたい奴』の小道具,同49年には『樺太1945年夏氷雪の門』で特撮操演助手となり,以降,日タイ合作『東南アジア秘密捜査線』(昭50)日米合作『極底探険船ポーラーボーラ』(昭52)などの外国との合作映画や『ウルトラマン怪獣大決戦』(昭54)で,怪獣などをワイヤーで操る特撮操演技師を務めた。『太陽を盗んだ男』(昭54)で特殊造形・メカ,『魚影の群れ』(昭58)『天守物語』(平7)『カンゾー先生』(平10)などで特殊造形美術,『モスラ2海底の大決戦』(平9)などで特撮操演技師として活躍。昭和60年にはアップ・アートを設立。近年も『おくりびと』(平20)『沈まぬ太陽』(平21)『BRAVE HEARTS海猿』(平24)『ラブ&ピース』(平27)など,関わった作品は50本以上に及び,現在もメカニカルスーパーバイザーとして活躍している。永年にわたり,特殊造形美術や操演技師として,監督の意図を具現化し,臨場感のある映像作りに貢献した功績は大きい。

江川 悦子(えがわ えつこ)

文化出版局「装苑」編集部を退社して渡米,『狼男アメリカン』を観て特殊メイクに魅せられ,ハリウッドのメイクアップ学校に通う。スタジオで実習生のような立場で作品を手伝い始め,正式採用後は『メタルストーム』『砂の惑星・デューン』『ゴーストバスターズ』などに参加。昭和61年に帰国し,日活撮影所内に仕事場を置いて,『親鸞・白い道』の特殊造型製作を担当した。日本映画界ではまだ特殊メイクが珍しい時代にスタッフを育て,メイクアップディメンションズを設立。『マルサの女2』(昭63)『血と骨』(平16)『THE有頂天ホテル』(平18)『子ぎつねヘレン』(平18)『アウトレイジ』(平22),近作では『残穢-住んではいけない部屋-』(平28)『忍びの国』(平29)など多くの作品で,特殊メイクや造型などを手がけている。CGのなかった時代からCGと共存する時代への変化に対応しながら,特殊メイクにおけるパイオニア的存在として,映画,テレビ,CM,舞台などで活躍。東京ビジュアルアーツで講座をもつなど,若手の指導にも尽力している。

かわなか のぶひろ(かわなか のぶひろ)

永年にわたり,日本の実験映画・個人映画の中心的存在として活動を行う。映画作家として,『水の記憶』(昭37)『B』(昭58)『私小説』(平8),萩原朔美との共作による連作「映像書簡1~10」(昭54~平17)などの作品を発表。実験映画・個人映画作家たちの組織化や作品の上映拠点づくりに取り組み,「ジャパン・フィルムメーカーズ・コーポラティブ」「日本アンダーグラウンド・センター」を経て,昭和52年「イメージフォーラム」を設立した。昭和55年には,映画批評雑誌「月刊イメージフォーラム」を創刊,初代編集長を務めた。主な著書に『映画・日常の冒険』(昭50)『ビデオ・メーキングコミュニケーションの新しい道具』(昭54)など。また,平成18年まで東京造形大学で教授を務め,イメージフォーラム付属研究所,多摩美術大学などで後進を育成,ぴあフィルムフェスティバルをはじめ,多くの映画祭で審査員を務めるなど,分野の発展に尽くした功績は多大である。

鈴木 美康(すずき よしやす)

昭和46年東洋現像所(現・IMAGICA)に入社し,タイミング作業に従事。映画の仕上げに欠くことのできない技術の第一人者として,『幸福』(昭56)『細雪』(昭58)(市川崑監督),『影武者』(昭55)(黒澤明監督),『時をかける少女』(昭58)(大林宣彦監督),『セーラー服と機関銃』(昭56)(相米慎二監督)など,300作品以上の日本映画を手がけた。平成19年から東京国立近代美術館フィルムセンターの技能補佐員として,年間100作品以上のニュープリントの品質チェック,収蔵フィルムの検査を行う。また,『幸福』のシルバー・カラー復元や『時をかける少女』の再タイミング作業などの監修をする外,映画初の重要文化財『紅葉狩』(明36)や小津安二郎監督によるカラー4作品など数多くのデジタル復元事業において,作業をするタイミングマンへの技術的指導・助言を行っている。平成25年からは,日本大学芸術学部でフィルム技術に関する講師を務めるなど,分野への貢献は多大である。

高橋 宏固(たかはし ひろかた)

昭和37年東映動画スタジオ入社。その後,虫プロダクションを経て,自らのアニメーション撮影スタジオで仕事を始め,昭和52年に高橋プロダクションを設立,テレビシリーズ「家なき子」(昭52)の撮影を担当した。以来,アニメーション界を代表する撮影監督として,映画『エースをねらえ!』(昭54)映画『あしたのジョー2』(昭56)などの出﨑統監督作品をはじめ,宮崎駿監督『ルパン三世カリオストロの城』(昭54)『天空の城ラピュタ』(昭61)など,数多くのアニメーション作品で撮影を手がけてきた。その外,「ベルサイユのばら」(昭54)「おそ松くん」(昭63)「白鯨伝説」(平9)「ASTRO BOY鉄腕アトム」(平15)など多くのテレビ作品も担当し,現在は高橋プロダクション/T2 studio会長。撮影における優れた画面作りの感性と独自のテクニックの高さは定評があり,撮影技術の向上に大きな功績を残した。また,人材の育成にも貢献している。

田辺 信道(たなべ のぶみち)

昭和50年岩波映画製作所に録音部として入り,同社が1960年代末から数々の映画を世に問い,日本映画史に独自の時代を築いた時期にキャリアを積んだ。昭和51年には岩波映画製作所の関連会社として協映を設立し,その後,同社以外の音響制作も手がけるようになった。多くのドキュメンタリー映画を担当し,現場での録音から整音までを自身で行い映画における音の役割の向上に貢献してきた。主な作品に,『こどものそら雪合戦』(平13),すばる望遠鏡の建設を記録した『未知への航海』(平16),製作も務めた『わたしの季節』(平17),『破片のきらめき心の杖として鏡として』(平20)などがある。近年は,企画,監督,撮影,録音までを手がけるなど,より取材対象者とのコミュニケーションを取りながら,ドキュメンタリー映画の製作に取り組んでいる。作品に『「ただいま」〜の声を聞くために〜』(平21)など。

中本 哲(なかもと あきら)

昭和58年に時代劇における「和楽監修」を行う和楽邦生会の三代目を襲名した。以来,楽曲と舞踊等に関する企画,楽曲選定,演奏者の指定,編曲,振付担当者のキャスティングなどを行う京都の撮影所独特の仕事「和楽監修」の分野で,数多くの時代劇を担当している。映画の舞台となる地域の民謡調査,時代考証,演奏者たちの人間関係に至るまで,広範囲の知識と経験が必要とされる仕事であり,現在も後進とともに研鑽に励んでいる。五社英雄監督『陽暉楼』(昭58)『極道の妻たち』(昭61)『吉原炎上』(昭62),深作欣二監督『華の乱』(昭63)『おもちゃ』(平11),篠田正浩監督『梟の城』(平11)の外,『陰陽師』(平13)『十三人の刺客』(平22)『武士の家計簿』(平22)『最後の忠臣蔵』(平22)『利休にたずねよ』(平25)など,京都の東映,松竹などの撮影所で撮影された多くの時代劇の製作を支えてきた功績は多大である。

根岸 誠(ねぎし まこと)

昭和41年東映化学工業(現・東映ラボ・テック)に入社,フィルム現像・プリント,オプチカル処理などの業務に携わる。特に映画のデジタル化最初期からそのプロセスを担当し,『藏』(平7)で東映作品初のスキャニングからデジタル合成処理までを行った。監督たちの信頼も厚く,『鉄道員(ぽっぽや)』(平11)『ホタル』(平13)『突入せよ!あさま山荘事件』(平14)『男たちの大和/YAMATO』(平17)『北のカナリアたち』(平24)など多くの作品で,テクニカルコーディネーターとしてデジタルワークフローの構築,運用などを担当し,比類のない実績とアイデアにより新しい技術やワークフローを提案してきた。また,日本映画テレビ技術協会で代議員などを務め,数多くの映像関連のシンポジウムやセミナーにパネラーや講師として登壇,後進の指導のみならず,監督,撮影監督をはじめ,映像に携わるあらゆる人たちに助言を与え,映像技術の向上と発展に尽力した功績は多大である。

古川 雅士(ふるかわ ただし)

アニメーション界の巨星・手塚治虫氏に師事し,虫プロダクションに編集助手として入社。日本初の連続テレビアニメーション「鉄腕アトム」で編集者となり,「ジャングル大帝」(昭40~昭41),アニメーション映画『千夜一夜物語』(昭44)などの編集を担当した。その後,「まんが日本昔ばなし」(昭50~平6),「はなかっぱ」(平22~平29)などのテレビシリーズ,『銀河鉄道の夜』(昭60),『タッチ背番号のないエース』(昭61)など「タッチ」三部作,『あらしのよるに』(平17),『グスコーブドリの伝記』(平24)などの長編アニメーション映画を数多く手がけており,日本におけるアニメーション創成期を支え,その礎を築いたメンバーの一人である。また,平成27年に退任するまで日本映画・テレビ編集協会の理事を20年以上務め,映画・テレビの編集に携わる後進を数多く育てた功績も大きい。

森村 幸子(もりむら さちこ)

昭和38年に大学卒業後、東映京都撮影所に所属。以後、記録(スクリプター)として、半世紀以上にわたり、撮影現場全体の進行を客観的に見つめ、かつ、細部まで観察し記録する仕事を行っている。山下耕作、中島貞夫など京都撮影所所属の監督ばかりでなく、降旗康男、鈴木則文、伊藤俊也など東京撮影所出身の名匠たちの作品にも数多く携わってきた。また、撮影所システム後に登場した大森一樹、平山秀幸、阪本順治らの監督作品にも積極的に参加し、現在も現役として活躍している。主な作品に、『冬の華』(昭53)『総長の首』(昭54)『青春の門自立篇』(昭57)『序の舞』(昭59)『わが心の銀河鉄道宮沢賢治物語』(平8)『魔界転生』(平15)『男たちの大和/YAMATO』(平17)など。また、東映京都撮影所内では「森村学校」と呼ばれるほど、積極的に後進の指導にもあたり、数多くのスクリプターを育てている。

矢部 一男(やべ かずお)

昭和30年日活撮影所に照明助手として入社し,映画の全盛期の撮影現場で多くの作品に関わる。映画五社照明スタッフの交流親睦会として昭和34年に設立された日本映画照明新人協会(現・日本映画テレビ照明協会)には,設立時から日活支部会員として参加。主な作品に,森田芳光監督『家族ゲーム』(昭58)『それから』(昭60),角川春樹監督『天と地と』(平2),伊丹十三監督『ミンボーの女』(平4),篠原哲雄監督『月とキャベツ』(平8),鈴木清順監督『ピストルオペラ』(平13)『オペレッタ狸御殿』(平17),澤井信一郎監督『蒼き狼~地果て海尽きるまで~』(平19),橋口亮輔監督『ぐるりのこと。』(平20)など。日本映画テレビ照明協会では,機関誌「映像照明」の編集委員を永らく担当しており,平成27年まで理事を務めた。照明技師として活躍する一方,日活芸術学院,城西国際大学などで講師を務め,新人教育の育成にも熱意をもって尽力した。

<参考>平成29年度文化庁映画賞選考委員

【文化記録映画部門】

岡田秀則
東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員/情報資料室長
奥村
いわき明星大学教養学部教授(人文学部兼任)
谷川建司
早稲田大学政治経済学術院客員教授/映画ジャーナリスト
村山英世
一般社団法人記録映画保存センター事務局長
山内隆治
東京大学学術支援専門員
山田顕喜
日本大学芸術学部映画学科・大学院芸術学研究科非常勤講師(元日本大学芸術学部教授/元日本映画テレビ 技術協会理事)
山名
フリー(すかがわ国際短編映画祭実行委員)

【映画功労部門】

金勝浩一
映画映像美術監督/協同組合日本映画・テレビ美術監督協会副理事長
小出正志
東京造形大学教授/日本アニメーション学会会長
佐々木原保志
協同組合日本映画撮影監督協会副理事長/大阪芸術大学映像学科教授
土川
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭ディレクター
中嶋清美
公益社団法人映像文化製作者連盟理事・事務局長

(敬称略・氏名50音順)

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