国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第1期国語審議会 > 4 話しことばの問題

4 話しことばの問題

(2) 講演

 講演のことばも,しだいに注意されているようであるが,本質的に考えてみれば,今日もなお依然として「書きことば」が用いられているのが実状で全体のことばがまだ話しことばになっていない。

(3) 小学校および中学校における話しことば

 よい話しことばの普及は,成人の場合よりも,むしろ低学年の生徒を対象とした場合に,より効果的に行われるのもと期待される。一定の系統的方針のもとに,組織的に指導され,教育される機会が与えられているからである。話しことばの訓練は小学校の国語教育から開始されるのが望ましい。
 従来の国語教育は,主として「読み」「書き」の訓練に重点がおかれていた。つまり視覚を重んじすぎる国語教育であった。
 外国語の教育もしだいに改善され,特にわが国の英語教育の異常な進展に応じて,テキストブックによる文字中心主義の初歩教育をようやく離れて,単純な英会話から指導する教授法が強調されているが,日本語の話しことばについては,いかに指導すべきかという基本的問題がまだじゅうぶんには解決されていない。小学校における初等国語教育は,正しい,よい話しことばの教授に力点をおいて開始されることが望ましい。
 国語の聴覚を主とした教授法を実施するにあたって,早急にその方面の適当な教師をうることが困難であれば,国語読本の読み方を録音し,これをリンガフォン(ジェイ=ロストンが20世紀の初めにイギリスに創設したザリンガフォン インスティチュートに由来する「ことばのレコード」)として全国の学校において利用する方法も考えられよう。あるいはこの目的に即した国語教育のモデルスクールを設立し,特殊の教育を励行することも必要となるであろう。しかし現在の緊急対策としては,新しい国語教育の積極的方法を考える前に,まず「避けたい話しこよば」を除くことが先決の問題である。
 右のようなしだいであるから,まず話しことばの基本文型を選定し,これを基礎として純正な話しことばの教育を奨励することが最も急務であると認め,ひととおりその文型を検討した。
 次に話しことばの教育上の最も密接な関係を有するものは方言の問題であるが,国語の教育は純正な話しことばを基礎として奨励するのがたてまえであるから,できるだけ方言を避けなければならない。しかし,各地方における国語教育の実際をみると,地方によっては,方言を無視することができない関係にあるので,これをいかに処理すべきかが重大な問題である。また映画・ラジオ・演劇・演芸方面においてもまた同様であるから,できるだけ純正な共通語の慣用を促したい。また作家としても,特に必要のある場合のほかは方言の駆使を避けることに協力されるよう希望する。
 以上を要約して部会は次の事項につき,特に留意されるよう要望する。

@ 話しことばのモデルスクールの設置。
A リンガフォンの普及。
B 講習会の開催。
C 映画・演劇・ラジオなどの関係者に対して話しことばへの関心をよび起す。

トップページへ

ページトップへ