国語施策・日本語教育

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議事 ふたたび,当用漢字表の補正について

松 坂

 当用漢字表の補正案を作るについては,国民の読み書き能力,タイプの能率化,事務能率の促進などをも合わせ考えなければならない。毎日新聞社には,当用漢字表制定以後14か月間の活字鋳造の詳しいデータがあるが,それによると8900万本鋳造したうち,当用漢字が4200万本,それ以外の漢字は100万本で,この100万本の活字も,そのほとんどは地名・人名用漢字であった。このデータによっても,当用漢字がいかによく選ばれているかがわかる。学術用語は一時にその全部を当用漢字でまかなおうとしても,できないのはもっともだが,だんだん近づける方針を採用してほしい。一昨年の読み書き能力テストの結果,15のやさしい文字について全部できた者は,32%だけだった。原則として,当用漢字表の文字をふやさないということに決めたい。

舟 橋

 われわれ作家と審議会との関係は対立的であるように世間では見ている。しかし,われわれは国語の簡素化に反対でなはい。小説家は,やさしい表現と達意のために骨身を削っている。でないと読者が離れるからである。ところが当用漢字表は,達意のじゃまをする。山本有三氏がわれわれの代表として審議会に参与したのがまちがいである。山本氏のやり方は,独善的,独裁的で,もまないでまとめることばかりにほねをおる。審議会は大いにもんでもらいたい。

松 坂

 当用漢字表は,山本氏が独善的にまとめたと言われたが,これは誤解である。山本氏は総会において前例のない主査委員会の案をくつがえし,新たに新聞社・文壇の人を臨時委員に加えたが,不幸にして文壇の協力を得られなかったのは,舟橋氏も御存知のはず。審議会の歴史を正すために一言。

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