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議事 2 国語の現状分析
石 黒
「文化地理学的条件」を,普通の人が読んで親しみのある文句になおしてはどうか。「現状を呈するに至った」も,もっとやわらげた表現にしたい。学者の間にわかりやすくても,一般の人に通用しない語を使うのは,審議会として避けるべきだ。
大 野
「日本語とは」が主格のような錯覚を起こす。
金田一
「日本語とは」を除いたほうがいい。
折 口
「国語を使うもの」は「用いるもの」となおしたい。
照 井
「文化地理学的……」は「文化摂取の地理学的条件のために,系統の異なる諸外国の言語・文学に接し」とする。
金田一
原因を説明しなくてもわかる。現状を言えばいいのだから,とってしまえばいい。
時 枝
「日本語と系統の異なる」として「は」をとる。
松 坂
3ページ「しかも今日」を「しかし今日」としたい。
山 口
日本人が自分の思想を発表するのに,遠慮したる,ちゅうちょしたりするが,もっと自由に発表するように,国語を用いるものの態度について どこかに入れてもらえないか。
石 黒
3ページから4ページへかけて「国語教育の成績が上がらない」ことを述べてあるが,もっと理解をもって書いていただきたい。
時 枝
国語の簡易化などは教育にまたねばならないが,国語教育に全面的に負担をかけているのではない。
倉 石
3ページ,「内容の明らかにされる必要がある……」は訳語句調である。4ページ2行目と3行目に「二つの使命」が重複している。
松 坂
「伝承」は「受け継ぐ」のほうがいい。
滝 口
「同時に」をとらなければ,変だ。
土岐会長
「語い」の代案はないか。
松 坂
国語研究所でわたくしが主張して入れられなかったが,「語種」といってはどうか。
石 黒
読み書き能力の報告書には「語彙」を使っている。
時 枝
発表に目新しいことばを出すのは考えものである。「かたらい」と読まれては困るから,ふりがなにしてはどうか。
佐 野
むずかしい彙の字をないことにして漢字制限をしているのである。当用漢字だけでなんとかことばを考えていくべきである。「種」では「彙」と違うかもしれないが,多少のことはがまんして,今日使ってもいい漢字の範囲内でことばを考えたい。
園 田
新聞ではボキャブラリーという英語をそのまま使っている。国語研究所では「用語範囲」といっている。
折 口
「語い」はりっぱな日本語になっている。ただ表記法だけが問題である。われわれは代案を決める権限はないが,文学などで,使って広めることはできる。新しい語は避けたほうがいいが,新しいことばを発表する機関をもたなければならない。
時 枝
代用語ではなく,別のことばで,「用語」としてはどうか。
(賛成)
颯 田
「かね合い」ということば,「新造語を造られ,試みられ」という表現もおかしい。「新語」だけでよいだろう。
服部(静)
5ページ,翻訳語の例だけではなく,ほかの例も入れたい。
松 坂
新語の同音語を避けるだけでなく,すでにある同音語をも取り上げなければならない。
園 田
「かね合いをはかる」としてはどうか。
倉 石
4ページ,同音語のところを,「同じ発音で意味が違い,耳で聞いて判断できない」と短くまとめる。5ページ,「しいて」を「むりに」とわかりやすくする。
颯 田
「聞いただけで」でよろしい。
田 口
国語の正確なアクセントの教育などのほかに,「美しい声,発声法」のことを入れていただきたい。
倉 石
発音の項の終わり「前項の……」の1節をもっとやさしくする。なお「前項」だけではどれをさすか,わからない。
内 藤
標準の項,山の手の「中流階級」が気になる。
中 島
これは歴史的考察である。
田 口
6ページ,社会生活と言語との「ずれ」をもう少し詳しく説明してもらいたい。敬語の複雑な理由として,日本の社会が外国の自由な社会と違うことを強調しなくてもよいか。
土岐会長
現状としては対人関係が主であるから,最初の草案にあった発生の歴史などは省いた。
時 枝
外国にも敬語がないのではない。封建性だけが発生の由来でない。
宮沢副会長
発生の由来は「社会生活の反映」というなかにはいっている。
中 島
「山の手の中流階級」というところ,「考えられていた」を「言われていた」とし,「今日では……」を「実際はあいまいになっている」となおす。
松 坂
表記法については,複雑困難な現状だけで,そのために,どんな困ったことがあるかの具体的実状が示されていない。全然表現のできない,または読めない者もいる国民大衆の能力について,ぜひ書き加えなければならない。
10ページの「読み書き能力」のことなどは,むしろ8ページの終りに移したほうがいい。
服部(静)
「漢字かなまじり文」というのは,漢字が多いからか,単に質的にまじっているからか,「漢字とかなのまじった文」ではいけないのか。
土岐会長・時枝
量的の意味ではなく,単なる名称である。
倉 石
7ページの「強調の目的」をわかりやすいことばになおしたい。
時 枝
「きわだたせる」ではどうか。
松 坂
「変化を与えて読みやすくする」ためである。
折 口
6ページ,「考えられる必要がある」はおかしい。「考える……」とする。