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第9回総会

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〔開催日〕

昭和26年3月9日

〔出席者〕

土岐会長,宮沢副会長
安藤,石黒,鹿住,颯田,佐野,園田,田口,千葉,時枝,中島,服部,原,藤森,松坂,山口各委員
井上,大塚,武藤,山崎各臨時委員
関口調査普及局長,原国語課長,ほか関係官
西尾国立国語研究所長



<<議  事>>

各部会長の中間報告について(略)

名づけ文字について

名づけ文字に関する問題経過報告(原国語課長)

 2月6日の衆議院予算委員会の席で,川端委員から当用漢字表には大事な字が抜けていたり,むずかしい字が載っているようであり,矛盾を感じている,という質問があった。また人名が法律で制限されている結果,最近ある人が訴訟問題を起した。さらに国会で文部大臣が一般の漢字制限については専門家が考えたものであるから今のところどうする考えはないが,人名については自分もどうにかしなければならないと考えている,と発言があった。一方衆議院の法務委員会においても問題になり,昨日開かれた小委員会の空気には,戸籍法の常用平易な文字を用いることだけを残してあとは削るという第1案と,法律を改正し,平易な文字のわくを示すことは示すがわく以外の字をつけたいものに対しては拒否権を用いず注意権に変えようという第2案とがある。一般的に言って,第1案を支持する空気が強い。法務庁の民事局は,野放しにしては困るから事務処理上の基準がほしい,と言っている。
 法務委員会がどの案に決めるとしても,直接当用漢字につながる問題だから,国語審議会が人名漢字表について早急に審議していただきたいと思っている。

土岐会長

 この問題は戸籍法施行規則だけの問題ならそっちで扱えばよく,審議会では触れなくてよいという考えもあるかもしれないが,問題が当然当用漢字に及んでくることだろうし,固有名詞のことは当用漢字制定当時別に考えるとあるのに,まだ考えていないということもあるので,わたくしは審議会では取り上げたほうがいいと思う。3月2日の部会長会議でも取り上げたほうがよいという意見であったので,本日総会を開いたしだいである。
 ではこの問題を総会で取り上げるか上げないかを伺いたい。

時 枝

 法務庁および国会の法務委員会に拘束されないで取り上げるのならば賛成。

土岐会長

 もちろん,審議会としては自主的にやる。
 では取り上げることに異議はないか。


(一同異議なし)

千 種

 国会あたりでは当用漢字に対して非常に認識が不足している。そして当用漢字そのものに対して反感をもっているから,今回名づけ文字の問題も当然当用漢字そのものにも関係してくることを考慮しておいてもらいたい。法務庁の民事局としては審議会に任せる考えである。
 わたくしの理想は,当用漢字そのものを検討してもらうことである。とりあえず名まえについて許容する別表を研究してもらいたい。そして,やむをえない事情のあるものは家庭裁判所で許可をうることにしたい。

土岐会長

 では取り上げていく方法を考えてもらいたい。部会長会議でも部会をつくってはどうかということだった。

藤 森

 時間的に間にあうか。

土岐会長

 問題はけっきょく審議会のほうへまわってくるようだから,だいじょうぶだと思う。

藤 森

 この席で決めることはできないか。

土岐会長

 出席者が定員数に足りないから無効になる。

宮沢副会長

 衆議院の法務委員会が審議会にかまわず決めてしまうことがあるか。

土岐会長

 法務委員会にも連絡してあるし,あちらも審議会に関心をもっているから,かってに決めてしまうことはないと思う。

宮沢副会長

 正式に会長から連絡しておくことが必要である。

田 口

 今回の問題が起った原因の一つには,国会から審議会にひとりも出席していないこともある。出席してもらうように申し入れてもらいたい。

原課長

 その問題は改組のとき,改組委員会で衆参両院から1名ずつ委員を入れる話が出て,人まで決まっていたが,衆議院のほうが承認をえられなかったので,実現できなかったのである。その後も上程されそうもない状態である。

土岐会長

 総会でこの問題を取り上げたということに決め,その理由か,あるいは部会のゆき方についての声明書を出してはどうか。

時 枝

 法務庁や法務委員会の人たちと協議会をつくって協議したほうがいいのではないか。

藤 森

 その前に審議会の態度をはっきりしたい。

中 島

 今まで審議会が固有名詞の問題を取り上げなかったのに,今回の問題が起ってはじめて取り上げるのはどうかと思う。

土岐会長

 中国地名・人名のこともあり,全然取り上げなかったわけではない。

松 坂

 内閣の訓令に当用漢字を取り上げられたのは審議会とは関係ないが,それはけっこうなことである。それが暗しょうに乗り上げたのならば助け舟を出そうという形で手を出せばよい。


各部会長の中間報告(略)の続き

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