国語施策・日本語教育

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2 外来語表記の問題(審議)

 表記部会は,昭和27年7月成立し,まず外来語表記の原則を審議することを決めたが,たまたま学術用語分科審議会から国語審議会に対し,学術用語の表記法に関する質問があったので,3回にわたりこれを審議し,さらに同年10月から12月まで,術語部会と合同審議し,12月18日成案を国語審議会の総会に提出,決定をみた。(「6術語の問題」参照)
 その後,表記部会は,引き続き術語部会と合同で,外来語表記の一般方針を審議した。審議の過程においては,外来語を表記するのに原語の発音に即した表記を採るべきか,あるいは,国語に外国語を取り入れた際に起る国語化した発音をもとにした平易な表記を採るべきか,の根本態度について,しばしば議論がくり返された。
 原語の発音に即すべきものとする説の論拠は,
「ことばは,その内容を的確に理解し,また,これをもって社会にその用を便ずるために教育されるべきであり,外来語に関しても,外国語の教育と関連をもたせた教育が必要である。しかるに,明治以来漢字音をかなで教育してきたため,日本語の音韻は少なくされており,外来語の発音としては,くずれた発音が国民の間に行われている。いま,外来語を原語の発音に近づけるということは,日本人の発音として努力することができる最大限をつくることになる。」というところにある。
 これに対して,
「原語にも,英語・ドイツ語・フランス語などいろいろあって,その字に対する発音がそれぞれ異なっているから,それらに忠実に外来語を書き表わすということは不可能である。したがって,原語の発音に即した表記を採っても,原語でもなく,また日本語でもないものを新しく日本語に加えることになるだけである。また,国語の厳密な発音指導が行われていない現在,原語の音に基く教育を義務教育過程にまで施すことは,理想論というべきである。国語政策は,国民のすべてが協力することができるものを決めるべきであり,その見地から,言葉における慣用,その国民的傾向は尊重されなければならない。」という意見が多数であった。なお,
「これからの国語を考えるとき,ある種の外国語音を,しだいに国語に取り入れる用意をしておいてもよいのではないか。」という意見も出た。
 けっきょく,多数意見に基いて,

(1) その表記が,国民一般に行われやすいことをたてまえとする。
(2) その表記の社会における慣用の,濃い薄いを合わせ考える。
(3) 表記が二様にわたり,まだ固定しない語が多いため,それらの語については一々について審議する。

という方針で,新聞・辞書・放送関係等各方面の資料から,社会一般に通用している度合の高いと思われる語を選び,具体的に審議を進め,19項にわたる原則を得た。
 しかし,外来語は,その伝来の経路が多様であり,また,その歴史も語によって異なるので,その書き表わし方の原則は,これらに対処することができるよう,配慮されなければならない。したがって,表記が二様にわたる語については,原語の発音としてわれわれが聞き取る音を基準とし,これが国語音に近づいて平易になったものを採ることを原則としたが,慣用の固定したもの,または,原語の発音に近く書く慣用の久しく行われているものは,これに従った。多くの原則に例外があるのは,このためである。なお,一々の語の書き表し方に,この原則をどの程度に適用するかについては,別に,表記上迷いやすい語について「外来語用例集」を設けて,そこに具体的に示すことにした。
 部会は,この案を文部大臣に建議することを決定し,第20回総会(昭和29.3.15)に提出したが,総会の審議の結果,報告にとどめるべきであると次のように決定した。

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