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4 法令用語の問題 法令用語審議の原則
〔方針〕
- 法令に用いられていることばであっても,純粋な学術語は,この部会の審議からはずす。
- 用語は,なるべく一般に広く通ずるものを採る。
- 用語は,なるべく耳で聞いて意味のわかりやすいものを採る。
- 同音語の使用は,なるべく避ける。
- 同義のものは統一する。
- 簡約にすぎてわかりにくい熟語は作らないようにする。
- 1字で足りることばを2字重ねて熟字として用いることは,なるべく避ける。
- 当用漢字表・同音訓表によって書けないことばは,かなで書くか,それに代わる適当な用語用字を考える。
- 1語を書くのに漢字とかなとの抱き合わせを用いることは,なるべく避ける。
〔基準〕
- 語形・意味・発音は,必ずしも,もとのものにこだわらない。
<例>
スフ(ステープルファイバー) , ワイシャツ(ホワイトシャツ) , フイルム(フィルム) , トロッコ(トラック)
- わかりやすい外来語は,しいて漢語化しないで,そのまま用いる。
<例>
ケーブル(電纜) , ロケット(信号火箭) , ボイラー(汽罐) , ダム(堰堤) , ボートコンパス(短舟用羅針) , マスト仰角(檣頭角) , ドライドック(乾船渠) , タイピスト(印字手)
- 事物の名称と定義とは混同しない。
<例>
赤色円筒形郵便物集配受函→ポスト
挂燈浮標→燈浮標 , 波蝕台地→いその台
閘門→水門 , 分娩→出産
肢体→身体 , 四肢→手足
腸の蠕動→腸の運動 , 逋脱→脱税
- 漢字を2字重ねて作ったむずかしい語を用いて,文の威厳を増そうとする考えは捨てる。
<例>
湧出口→わき出し口・湯口 , 罷免→免職・免ずる
威嚇→おどかし , 治癒が早い→なおりが早い
欺瞞する→だます , 伸長する→伸ばす
陳述する→述べる , 充当する→あてる
希求する→求める
- 当用漢字表・同音訓表の範囲で書けないことばは,次のように言いかえ・書きかえをする。
(かな書きにする例)
末→てんまつ , 如何 →いかん
罠 →わな , 毎に →ごとに
琺瑯質→ほうろう質 , 煙草 →たばこ
(意味の似た同音訓の漢字に改める例)
繋属→係属 , 定繋港→定係港
吃水→喫水 , 雇傭 →雇用
交叉→交差 , 緬羊 →綿羊
訊問→尋問 , 障碍 →障害
洗滌→洗浄 , 碇泊 →停泊
剰す→余す , 彎曲 →湾曲
(同じ意味のやさしいことばに改める例)
曳船→引き船 , 眼瞼 →まぶた
筐匣→箱 , 橋梁 →橋
空気槽→空気タンク , 鎖鑰 →かぎ
牆壁→かきね , 堤塘 →堤
播種→種まき , 剪除する→切り取る
(似た意味の他の漢字に改める例)
溢水→出水 , 押捺・捺印→押印
竣功→落成 , 失踪 →失跡
傷痍→傷病 , 烙印 →焼き印
- 一つの単語を書き表わすのに,漢字とかなとの抱き合わせは,できるだけ避けるが,複合語は複数の単語として考える。
(例1)
あっ旋→あっせん , さん橋→さんばし
ひ首→あいくち
(例2)
洗たく板→せんたく板 , 沈でん池→ちんでん池
けいそう土・あて名・茶がま
なお,
(1) 当用漢字音訓表によって書けるもので,次のようなものは,かなまたは他の漢字を用いて書く。
あまり , かなり , よほど
したがって , かつ
また , ただし , ならびに
次の通り→次のとおり , 何箇月→何か月
附則→付則 , 虞れ→恐れ
(2) どうしても当用漢字表にない字を示す必要があるときには,かなで書いてそのうしろに漢字をかっこに入れて示す。
以上の原則に基いて,〔法1〕〜〔法3〕を逐一審議し,これをまとめて,「法令用語改正例」(案)を作成,「法令用語改善についての建議」(案)として,第20回総会(昭和29.3.15)に提出,可決し同日内閣総理大臣に建議した。