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4 法令用語の問題 法令用語審議の原則

〔方針〕

  1.  法令に用いられていることばであっても,純粋な学術語は,この部会の審議からはずす。
  2.  用語は,なるべく一般に広く通ずるものを採る。
  3.  用語は,なるべく耳で聞いて意味のわかりやすいものを採る。
  4.  同音語の使用は,なるべく避ける。
  5.  同義のものは統一する。
  6.  簡約にすぎてわかりにくい熟語は作らないようにする。
  7.  1字で足りることばを2字重ねて熟字として用いることは,なるべく避ける。
  8.  当用漢字表・同音訓表によって書けないことばは,かなで書くか,それに代わる適当な用語用字を考える。
  9.  1語を書くのに漢字とかなとの抱き合わせを用いることは,なるべく避ける。

〔基準〕

  1.  語形・意味・発音は,必ずしも,もとのものにこだわらない。
    <例>
    スフ(ステープルファイバー) , ワイシャツ(ホワイトシャツ) , フイルム(フィルム) , トロッコ(トラック)

  2.  わかりやすい外来語は,しいて漢語化しないで,そのまま用いる。
    <例>
    ケーブル(電纜) , ロケット(信号火箭) , ボイラー(汽罐) , ダム(堰堤) , ボートコンパス(短舟用羅針) , マスト仰角(檣頭角) , ドライドック(乾船渠) , タイピスト(印字手)

  3.  事物の名称と定義とは混同しない。
    <例>
    赤色円筒形郵便物集配受函→ポスト
    挂燈浮標→燈浮標 , 波蝕台地→いその台
    閘門→水門 , 分娩→出産
    肢体→身体 , 四肢→手足
    腸の蠕動→腸の運動 , 逋脱→脱税

  4.  漢字を2字重ねて作ったむずかしい語を用いて,文の威厳を増そうとする考えは捨てる。
    <例>
    湧出口→わき出し口・湯口 , 罷免→免職・免ずる
    威嚇→おどかし , 治癒が早い→なおりが早い
    欺瞞する→だます , 伸長する→伸ばす
    陳述する→述べる , 充当する→あてる
    希求する→求める
  1.  当用漢字表・同音訓表の範囲で書けないことばは,次のように言いかえ・書きかえをする。
    (かな書きにする例)
    てん末→てんまつ , 如何 →いかん
    罠 →わな , 毎に →ごとに
    琺瑯質→ほうろう質 , 煙草 →たばこ

    (意味の似た同音訓の漢字に改める例)
    繋属→係属 , 定繋港→定係港
    吃水→喫水 , 雇傭 →雇用
    交叉→交差 , 緬羊 →綿羊
    訊問→尋問 , 障碍 →障害
    洗滌→洗浄 , 碇泊 →停泊
    剰す→余す , 彎曲 →湾曲

    (同じ意味のやさしいことばに改める例)
    曳船→引き船 , 眼瞼 →まぶた
    筐匣→箱 , 橋梁 →橋
    空気槽→空気タンク , 鎖鑰 →かぎ
    牆壁→かきね , 堤塘 →堤
    播種→種まき , 剪除する→切り取る

    (似た意味の他の漢字に改める例)
    溢水→出水 , 押捺・捺印→押印
    竣功→落成 , 失踪 →失跡
    傷痍→傷病 , 烙印 →焼き印

  2.  一つの単語を書き表わすのに,漢字とかなとの抱き合わせは,できるだけ避けるが,複合語は複数の単語として考える。
    (例1)
    あっ旋→あっせん , さん橋→さんばし
    ひ首→あいくち
    (例2)
    洗たく板→せんたく板 , 沈でん池→ちんでん池
    けいそう土・あて名・茶がま

    なお,

    (1) 当用漢字音訓表によって書けるもので,次のようなものは,かなまたは他の漢字を用いて書く。
    あまり , かなり , よほど
    したがって , かつ
    また , ただし , ならびに
    次の通り→次のとおり , 何箇月→何か月
    附則→付則 , 虞れ→恐れ

    (2) どうしても当用漢字表にない字を示す必要があるときには,かなで書いてそのうしろに漢字をかっこに入れて示す。

 以上の原則に基いて,〔法1〕〜〔法3〕を逐一審議し,これをまとめて,「法令用語改正例」(案)を作成,「法令用語改善についての建議」(案)として,第20回総会(昭和29.3.15)に提出,可決し同日内閣総理大臣に建議した。

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