国語施策・日本語教育

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議事 懇談

土岐会長

 前回の議事録で訂正するところはないか。

堀 内

 10ページの照井委員の発言は,これではふじゅうぶんだと思う。

照 井

 ローマ字教育が実際に行われるために,つづり方・わかち書きが決まらなければならない。そうしないとローマ字教育は従来と変りなく,ゆきづまりになってしまう。以上のような趣旨のことも申し上げたつもりである。

堀 内

 それから保科委員の話の中で,ローマ字に関する部会はローマ字問題の部会一つだけでいいとあるのは,それはつづり方・わかち書きを統一するための部会ということを言われたようだが。

土岐会長

 保科委員はただ今おられないが,今までの三つの部会を一つにしたほうが審議上つごうがいいという意味にわたくしは了解した。

堀 内

 その理由づけとして,ローマ字のつづり方を統一するということを言われた。

土岐会長

 統一ということばは使わないことにしている。

(ローマ字調査分科審議会委員名簿配布)

土岐会長

 ただ今ローマ字調査分科審議会の委員名簿をお配りしたが,御意見があったら念のため承りたい。
 なお,これから具体的に仕事をしていく途中で,必要があれば,さらに委員を加えることにしたい。
 このまえの総会で,新しい審議会のやり方について御意見を送っていただくようにお願いしたが,その集まった結果を事項別によって分類したのが,お配りした「〔総1〕審議事項についての資料」である。いちいち提出されたかたに説明していただけばいいのだが,分量も多く,時間がかかる。よって事項別に分けた以外の意見だけを御紹介するようにしたい。

服 部

 分類できないというのはどういうのか。

土岐会長

 たとえば,部会の報告について,もっと総会で論議してもらいたいというような意見である。

吉 田

 分類できなかったものだけについて説明していただいたらどうか。

土岐会長

 失礼だがこちらからお名ざししてご説明願おうか。

吉 田

 会長に読んでいただいてはどうか。

土岐会長

 ではわたくしが提出された御意見を読むことにする。
 遠藤委員の御意見。
「部会の報告について,総会でもっとじゅうぶん論議を尽してもらいたい。地方にいる委員として,部会に出て意見がじゅうぶん述べられないので,総会での意見を尊重するようにせられたい。」
 以上について遠藤委員からつけ加えることはないか。

遠 藤

 一言申し添えさせていただく。従来の総会は,単に部会の結果の報告を受けるという程度だったと思う。地方の者は上京する裏づけがないので,部会でじゅうぶん審議したくても出席できない。だから総会の席でじゅうぶん審議できるようにしていただきたい。これから中央の委員だけではなく地方の委員も出席すれば,審議が多少変っていくのではないか。

土岐会長

 今までも遠藤委員の心配されるようなことはなかったと思う。しかし,総会を尊重する意味で,遠藤委員の言われたことはじゅうぶん考慮されるべきだと思う。

田 口

 部会の報告を全体にまわせばいい。数行にまとめられた部会の報告は毎回受け取っているが,細かいのがほしい。

土岐会長

 それは実際上むずかしい。部会で決まったことを総会で審議するということにしたい。

吉 田

 田口委員の言われたことはもっともだが,それだけの労力とその効果との重さが問題だろう。その点,事務当局で適当にやってもらい,総会の席で,今までより部会長から部会の報告を詳しくやってもらう程度にしておいてはどうか。

土岐会長

 わたくしも,だいたい今までどおりでいいと思う。
 大住委員の御意見は,
「対称としての敬語をそのまま他称に用いているのを改めるように意見を発表すること」
とあるが,敬語の資料のとき御説明願うことにしたい。

大 住

 了解した。

土岐会長

 次は江尻委員の御意見だが,
「国語改善の基本的準則と目的を達するまでの予定計画をたて,計画的に前進させるように図ること。基本的準則(たとえば,やさしく美しくすること,表現力を正確にすること等)に合致するかどうかは,実態調査・実験などを行って科学的に決め,この資料を尊重して方針を決定すること。」
 以上のことはすでに国語白書の中で述べられていると思うが。

江 尻

 けっこうである。

土岐会長

 次は千葉委員の御意見であるが,
「ローマ字調査分科審議会の委員構成に新聞・報道関係の委員をもうらすること。
 分科審議会の前委員を全部入れること。
 日本式・訓令式は一本にすること。
 訓令式と標準式とを支持する委員を同数にすること。
 必要に応じて専門委員会を設けること。
 公聴会を開き審議の公正をはかること。
 分科審議会で審議すべき具体的事項は上の分科審議会委員選定後,その委員会を開いて決定すること。」
 以上である。多くの新聞・報道関係のかたがはいることはけっこうだが,審議会の委員が分科審議会の委員を兼ねることをなるべく避けたので,もうらすることはできない。分科審議会の前委員は全部はいっている。
 2式を一本にすることは分科審議会で審議していただけばいい。
 3式の代表を同数にしろということは今まですでに実施されている。その他のことは分科会で決めていただこう。

 次は竹田委員の御意見である。
「国語・国字問題については時間的・空間的に再審議,再検討し,最も公正妥当なるものとなす必要なきや。」
というのである。竹田委員から補足することはないか。

竹 田

 漢字の問題は字音の問題にからんでくる。漢字すなわち国語の問題は必然的に書きことばの問題となるので,広く扱っていただきたい。現代かなづかいにおいて,字音かなづかいは旧来のままであるので,その点を考えていただきたい。

土岐会長

 では次は大塚委員から,
「国語全般にわたって,例として,話しことばの調整,ことばをつくる方針(への示唆)。国語審議会の運営についての意見として,連絡にあたる委員をつくること,または連絡事務官をつくること。部会の中に原案をつくる委員をつくり,その原案によって部会で審議する。」という御意見が出ているが,従来もだいたいそうなっている。

 次は佐野委員の御意見。
「従来の各部会において未完結の事項もあり,さらに研究を進むべきものもあると存ずる。」

佐 野

 つけ加えることはない。

土岐会長

 次は田口委員から,
「国語をよくすることは,国として最もたいせつな任務であることを建議すること。」

田 口

 国語と道路の問題は国民全体に関係のあることであるが,国語のほうはおろそかにされがちである。審議会の委員は責任をもって大事なことを審議しているのだから,そういう点に留意して,国民全般の注意を喚起してもらいたいということを申し上げたいのだ。それは今すぐというのではないが,いずれは建議してもらいたい。

土岐会長

 それは国語審議会が自分の使命を改めて建議するようなことでもある。

吉 田

 もっとしっかりデモンストレーションをすることは必要だ。

土岐会長

 次は北浜委員の御意見,
「国語審議会の活動に対する地方教職員その他の意見を取り入れることについて。」

北 浜

 地方の自主的にやっている人の意見を反映させたいし,反対に国語審議会で決めたことがさらに直接反映していくというふうにして,積極的に協力してもらうようにしていきたい。

原課長

 国語課の事業の一つとして,毎年国語教育研究協議会を5〜6回開いている。国語審議会の委員を講師にお願いし,国語審議会の事業を地方の人に知らせ,また地方の人の声を国語審議会の審議に反映させるということと同時に,国語審議会で決められたことを地方に普及徹底させていくという二つの意味で,そういう仕事を行っている。

土岐会長

 その点さらに北浜委員のほうの組織を通して実行していけばいい。
 次は,沢登委員の意見。
「早く学術用語を一定してもらいたい。ことに中等教育までの文法においては,一日も早く一定すべきである。」
 これは部会にまわしていいか。

沢 登

 いい。

土岐会長

 ではそういうことにして,次は服部委員の御意見。
「映画は言語について民衆に影響するところが多い。特に外国映画にスーパーインポーズされる文章の用字・かなづかいについて協力を求めることを考慮されたい。」何かつけ加えることはないか。

服 部

 要するに,映画方面の協力を得たいということだが,部会にまわしていい。

土岐会長

 次は小林委員の御意見。
「民主主義の原則を堅持しなければならない。その目標において,またその運営のしかたについても。それから,その目標は,進歩的でなければならない。進歩的とは,表現・通達の民主化を意味する。つまりより多くの人々に理解されること。それから,これまでの審議会の決定事項に対して批判してもよい。しかし,民主主義を堅持しなければならない。その目標とその運営のしかたに反してはならない。」以上である。

小 林

 一言補足させてもらいたい。世間では当用漢字表・現代かなづかいがくずれることを心配している。今までのものを批判するのはいいが,逆行しないようにしたい。

土岐会長

 以上で事項分け以外のものは終った。八つの事項を合わせて,各部会で審議していくという具体的問題になる。
 ちょっと補足するが,まえの部会では,かなづかいと表記に関してはふれなかった。左横書きの問題は公用文では出ているが,一般的な意味ではまだ出ていない。標準語の問題とあるのは,前回話しことばと敬語とを一つにしたほうがいいという意見があったので,一つにまとめたのである。また,まえの部会では学術用語についてもふれていない。

吉 田

 ただ漢字の問題というと,抽象的でわかりにくい。

千 種

 全般にわたって内容をもっと詳しく補足していただきたい。

土岐会長

 大ざっぱに分けたのは,部会ができてからそこで細かく具体的にやってもらうつもりだった。

吉 田

 八つの問題によって,まず部会を作るためには,もっと具体的なことがわからなくてはならない。

千 種

 全委員が部会にはいるので,問題になっている点を大まかにわかっていなければならない。

土岐会長

 ここにあげてあるのは,決めなければならない問題を書き上げてあるのだ。

吉 田

 今までのお話でだいたいわかったが,漢字の問題だけはもう少し分けてもらいたい。
 部会についての原案はないか。

土岐会長

 出せといわれれば,ある。

緒 方

 そのまえに一言申し上げたい。部会はなるべく大きいほうがいい。部会の中に小委員会を設け,専門的にやるという形式ではどうか。それから今までの部会のように平行的にやらないで,はじから問題ごとにまとめていくようにしていってはどうか。

松 坂

 まえの部会の取り決めにかかわらなくてもいいが,漢字の問題はまえの会の経過だけは一応承知しておいてもらいたい。

小 林

 部会の運営についてお伺いしたい。他の部会への出席はできるか。

土岐会長

 できる。

小 林

 発言権はどうか。

土岐会長

 原則としては,オブザーバーである。

原課長

 それならば,むしろ部会員として加わっていただいたらどうか。

小 林

 国立国語研究所でデータを出すということだし,国語課でやった児童の読み書きの能力を調査したものもあるようだが,そういうものの知識をわれわれに与えてほしい。

前 田

 固有名詞の部会はぜひ設けてほしい。もし漢字の部会で固有名詞を取り扱うようにすれば,あとまわしにされる。

松 坂

 賛成。

緒 方

 学術用語は必ずしも漢字の問題だけではないから,漢字の部会に入れないほうがいい。

服 部

 緒方委員の意見に賛成。たしかに学術用語は漢字の問題だけでなく,かな・ローマ字の問題もある。独立させたほうがいい。

土岐会長

 学術用語は学術奨励審議会の学術用語分科審議会もあるので,それに応じて審議していく形になる。

服 部

 現状はそうだが,さきゆきの問題として考えると,独立させたほうがいい。

有 光

 学術用語は常に使っている人たちの間で決めていくというのが第1の段階であり,現在,学術用語分科審議会でやっている。
 学術用語は,国語審議会だけでやっていくのがいいか,学術用語分科審議会だけでやっていくほうがいいかというと,ともにやっていったほうがいいが,学術用語分科審議会では,国語審議会の線でやっていくほうがいいという考えでもある。

土岐会長

 国語審議会としては,学術用語全般について関心を持っているが,その一つ一つを取り上げると,学術用語分科審議会とぶつかるのではないか。

緒 方

 学術用語を取り上げるのに,漢字の問題として取り上げるのではなく,学術用語の中の漢字の問題として取り上げられたい。

大 塚

 わたくしが関係している学術用語の部会では,むしろ当用漢字表は問題にしていない。当用漢字表には従うことにし,外国語を取り入れる場合の考え方が問題になっている。それは他の学術用語部会でもありうることだと思う。たとえばVを「バ」で表わすと国語審議会で決めれば,他の会ではそれを問題にしなくてもいい。

土岐会長

 学術用語は,漢字ではなく表記の面で取り上げるようにすればどうか。

佐 野

 学術用語は各般にわたって広範である。国語審議会で学術用語を取り上げたら,やりきれないと思う。学術用語分科審議会に対してアドヴァイスすることはできる。そして学術用語の漢字の問題だけを,国語審議会はアドヴァイスするようにしてはどうか。
 固有名詞についても同じくたいへんなことだ。しかしほうってはおけない。だからすぐ着手していただきたい。小さいことではなく,大きく方針だけでも取り決めてもらいたい。

松 坂

 固有名詞についても,独立に部会を持つべきであると思う。一つには衆議院に対する策のためにも持つべきであると思う。

服 部

 学術用語分科審議会のほうは,ことばの専門家ではないので,国語審議会全体として学術用語を見守っていくということではどうか。

緒 方

 国語審議会に,学術用語分科審議会との窓口のようなものがほしい。

吉 田

 表記の部会で学術用語を扱ってはどうか。

小 林

 表記といわれたが,それは表記の中に収まる問題ではなく,表現の問題ではないか。

土岐会長

 言語学的に言えばそういうことになるかもしれないが,表現の問題というと広くなり,国語審議会全体の問題となる。

小 林

 国語教育との関係における言語政策を考えていただきたい。

土岐会長

 今までは社会生活の面が多く取り上げられていたようであるが,これからは同時に教育の面について同じく考えていくことにしたい。

有 光

 固有名詞に関して独立の部会があるのなら,学術用語に関しても,漢字と表記と両方面にわたるので,独立させてはどうか。国語の簡易化は,固有名詞・学術用語両面にもわたっているから,両方の基本的なことを決めればいい。

服 部

 国語審議会と学術用語分科審議会との摩擦は起らない。国語審議会で最高方針を決めれば,学術用語分科審議会ではそれに従う。

颯 田

 二つのものをくくった形にすれば,学術用語分科審議会との摩擦も防げる。
 音楽用語もはいる大きなものを考えてもらいたい。

小 林

 部会の名まえとして,学術用語は学問的なものであるから,スポーツ用語等も入れた「術語」ということばではどうか。

土岐会長

 「術語」として一つの部会をおくことにしよう。

池 上

 当用漢字表を補正するための,国立国語研究所に頼んだデータはいつごろできあがるのか。

西尾所長

 従来,語い調査をやっていたが,昨年漢字部会からの要請があったので,漢字の問題も中間報告的に扱っている。完全なものを,いつまでに,ということは申し上げにくい。

池 上

 少しずつ出るわけか。

西尾所長

 そうである。

小 林

 話しことばについて納得できない。

土岐会長

 話しことば部会は,標準語という方向に行く。

小 林

 話しことばだけを扱うと,「である」というようなスタイルははみ出す。

土岐会長

 表記の問題を広く表現の問題まで拡(ひろ)げて考えればよかろう。

保 科

 話しことばと書きことばは,それぞれ書く場合と話す場合とは違う。対話体でも絶対に使わないことばがある。

土岐会長

 では標準語の部会という名にしてはどうか。

小 林

 政策的なことはわからないが,そうしたほうがいいのではないか。

遠 藤

 わたくしもそう思う。

土岐会長

 では部会は一応,漢字・表記・標準語・公用文・術語・固有名詞の6部会にしてはどうか。

颯 田

 標準語の部会とすると,今われわれが話している内容と,看板が解釈されたものとは違ってしまうのではないか。

小 林

 標準語とすれば,話しことばも書きことばも含みうる。

(表記ということばも一応了承)

(5分間休憩)

土岐会長

 では規則によって各部会に属する委員を指名させていただく。


漢字部会
池上,江尻,緒方,楓井,亀井,倉石,佐藤,沢登,下村,竹田,時枝,殿木,中島,服部,原,保科,松坂,丸野,吉川


表記部会
池上,江尻,遠藤,楓井,金田一,倉石,佐藤,時枝,殿木,波多野,保科,松坂,丸野


標準語部会
麻生,安藤,折口,甲斐,河竹,北浜,金田一,颯田,渋沢,田口,照井,中村,舟橋,保科


公用文部会
大住,千種,前田,松坂


術語部会
有光,大塚,緒方,楓井,金田一,倉石,小林,颯田,佐野,田口,都留,時枝,殿木、中村、服部


固有名詞部会
池上,江尻,佐藤,佐野,千種,時枝,原,前田,松坂,丸野


 以上のようにお願いする。

渋 沢

 術語の中にかぶき関係の人はいないのか。

土岐会長

 さしあたっては学術用語の問題に限っていきたい。

照 井

 ローマ字のほうから籍を抜いて,勉強にもなるので標準語の部会にまわりたい。

土岐会長

 では両方にはいっていただくことにしよう。

堀 内

 ローマ字調査分科審議会で将来わかち書きと標準語との関連を考えてもらいたい。

土岐会長

 ローマ字調査分科審議会は7日に開くことにする。10日・18日・30日と会場がとってあるが,日取りは国語課のほうにまかせ,7月中に各部会を開いて部会長を決めていただくことにしよう。

松 坂

 多少雑談的で申しわけないが,さきほど北浜委員の御発言もあり,国語課長から御説明があったが,現場の痛切な声を生かすように考慮していただきたい。

小 林

 部会に関係なく,随時意見を申し述べさせていただきたい。

土岐会長

 けっこうである。
 ではほかに御発言がなければ,本日はこれまでにして閉会とする。

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