国語施策・日本語教育

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議事 各部会長の中間報告

原(漢字部会長)

 漢字部会は18回開き,まえの総会で中間発表してから11回開いている。2月26日の部会で話合いの結果,意見の一致したところは,
  1.  当用漢字表の根本精神はあくまで堅く守っていくことを再確認し,
  2.  今までの経験にかんがみ,その精神をあくまで守るために不便と思われる点を補正していく。
  3.  その際,ある一つの意見や予想によって審議していくということはしない。
  4.  審議は多くの材料を集めることが不可能のため,実際的に集まった材料から始めること。
  5.  外部には当用漢字表の補正が誤り伝えられている。当用漢字表がくずれるとか,なくなるとかいう感じを与えないこと。したがって,事がはっきり決まるまでは,外部にあれこれと申し上げない。

という5か条を決め,新聞協会提供の「当用漢字補正に関する新聞社の意見の集計」を材料とした。それについて,朝日の池上,東京の楓井,毎日の丸野各委員から,それぞれ自社に関係のある説明があった。これは,新聞社の要求というよりも,社会各方面の実情の反映したものという見解によったもので,本格的な資料が容易に得られない現状では,便宜的であるがやむを得ないものと考えている。その結果を中間報告として申し上げると,

  1.  憲法に使われている字のうち,国民常用でない漢字は,相当の考慮を加えて取捨する。このことは,こと憲法に関するもので誤解を生みやすい。これは憲法を国民に普及させねばならないという精神によるもので,決して憲法を軽んずるものではない。
  2.  当用漢字表から削りたい字59字から,削ってもいいとだいたい意見の一致しそうなもの41字,現状のままが18字ぐらい。
  3.  加えたい字191字から,加えたいというのに異議のなかった字2字,保留46字,加えなくてもよかろうというもの143字。

これを見とおすと,大きな出入りはなく,1850字ぐらいに落ち着くと思う。今後は保留の字について審議し,他の方面からの御意見も伺って検討したい。亀井委員を通じて伺った文芸家協会の意見のあらましは,(1)当用漢字表制定の趣旨に反対ではない。(2)新聞社の要求があったからといって動くのはいけない,といったものである。

有 光

 当用漢字表制定の趣旨に変更はないのか。学術用語・固有名詞について考慮しているか。

 趣旨に変更はない。学術用語・固有名詞の漢字には部会として触れていない。

桑 原

 学術用語分科審議会で,学術用語について検討している。学術用語は別だといっても,増減を考えるときはこれと連絡して考えてほしい。たとえば,「昆虫」の「昆」など学会では相当異論もあり困っている。総数は1849字ぐらいにしてほしい。現在のより1字でも少ないほうがいいと思う。

 わたくしの今の報告の中で申し上げた。

保 科(表記部会長)

 昨年の12月の総会後の経過について申し述べる。前回において申し上げたように,表記部会は術語部会と合同で審議を進め,本年の1月から7月までに8回の合同部会を開いた。話し合った結果,


  1.  国語の音韻体系にない外国語の音韻を書き表わす際,「ヴァ」というような従来どおりの方法以外に良い方法がないか。
  2.  外来語の表記を原語の発音に近づけるか,国語の表記の慣習に近づけるか。
  3.  表記を決める際,外来語が,使用する人の層によって違ってくるが,一般民衆と一致しないものをどう取り扱ったらよいか。

などの問題があり研究中である。国語音に即して,将来の表記法を決め,特殊な慣習で使われるものはなるべく避けようと考えている。表記の原則を20か条ほど決めたが,外来語・外国語の関係とその区別がむずかしい場合もあり,一般原則で押し切れないために,外来語と思われるものを広く集めて,一つ一つ検討したいと思う。

金田一(標準語部会長)

 部会は9月までに13回開いた。前回に報告した方針に従い,具体的な問題にはいっている。標準語の発音はどうあるべきかの問題を協議した結果,格別変わったこともなく,音声学者の定説になっているような,現代東京で行われている一般的な発音を標準的な発音とみなし,今日の学説を再確認した。それから文法のうち大きな問題である動詞の活用について,用例に基きそれを認めるか認めないかを審議している。
 28年度の末には,少しでも多くの用例について審議した結果をまとめることができるようにしたいと思っている。

千 種(法律公用文部会長)

 法律公用文部会は今までに14回開き,そのうち3回は固有名詞部会と合同で,「町村の合併によって新しくつけられる地名の書き表わし方について」の建議案について共同審議した。この部会では,法律用語の書きかえ・言いかえ,官庁公用文の書式,用語の統一,公用文の横書きの促進,公用文の書き方についての共同の懇談会を開いた。法律文や公用文を簡単にしたいのだが,法律文自身を決めるのが先決問題であるから,その後法律文について審議している。
 部会のあり方については,まえの総会でだいたいの方針は決まっているので,その基本線にのっとって研究している。内閣および衆参両院の法制局のかたがたにも専門調査員として加わってもらっている。内閣法制局提出の資料を材料として,法律の用字・用語の研究を行っている。


  1.  同音で意味の違うものを避ける。(公訴と控訴,勾留と拘留など)
  2.  むずかしいことばをやさしくする。(言いかえを含む)
  3.  できるだけかなと漢字の抱き合せをなくす。

これらの案はできているし,この方針はよくわかっているが,具体的に技術的な面にはいってみると,なかなか困難である。できれば法務大臣に建議したいと思っている。

下 村(固有名詞部会長)

 固有名詞部会は法律公用文部会と合同で審議した。地名・人名などの漢字の煩わしい読み方をどう整理するか,人名についてどう処理するのか。漢字は一方で当用漢字ができて整理されていく。むずかしい字はほうっておいても使われなくなる。略字は使われ,よく使われる字ほど乱読されてくる。日常読み違いなどが起り,また幾様にも読めるために,かえって不便が起ってくる。名まえのごときも,生れたときに注意を与える。町村の合併に伴って新たな名称が生れなければならないから,地名は読みやすくまちがいのない文字にするよう,この機会に留意してほしい。この趣旨の要望を,審議会として関係方面に建議すべきであると考えたのである。

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