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議事 法令用語の改善について
千 種(法律公用文部会長)
法律公用文部会では,法律用語の言いかえ・書きかえについて,20回にわたる審議を行い,その結果,「法令用語改正例」を作成した。この審議には,各委員のほか,法律の専門家として法制局のかたがたの御協力を得たが,これは法律用語の性格と決定案の実行上の考慮によるものである。また,法律用語は難解のうえに固有の概念があるため,国語上の文字だけの言いかえでは簡単にいかない場合が多い。もし,この案が御承認を得れば,内閣総理大臣に建議したいと考えている。
(建議案朗読)
(「法令用語改正例」の「科料・過料」「控訴・公訴」「拘留・勾留」等について簡単に説明する。)
池 上
原案に賛成である。ただ,新聞では「湮滅」を「隠滅」としている事実だけを申し上げる。
堀 内
たとえば,「覆」を「転覆」,「破毀」を「破棄」と改めるなら,さらに一歩進んで「くつがえす」「やぶりすてる」としてはどうか。
全体的に,現在の新聞より遅れているように見受けられる。
大 住
法律用語には「証拠」「憑拠」のように,意味が少しずつ違うものが多い。新聞より遅れているとしても,理想的というよりも実行できる案とすることに重点をおいた。
宮沢副会長
法律文はこうでなければならないと決めている既成法律専門家の感覚にとらわれすぎている気がする。一方,実行できる案でなければならず,調整がむずかしい。
千 種
明治以来,術語に特殊の概念を含ませてきているので,簡単に言いかえられない場合がある。
楓 井
「失踪」を「失宗」とするのは,目で見た感じがおかしい。読者は誤字と考える。
千 種
「禁錮」を「禁固」としたのと同じように,同音の字をとった。「宗」には,祭をする家の意味もあり,他に適当なものがないかぎり「失宗」でよいと思う。
堀 内
建議されたものが,法律用語として正式に落ちつくと,さらに改めるのが容易でない。中途半端でなく根本的改革が望ましい。
吉 田
ことばを改めるには,性急では成功しない。実施する便宜を合わせ考えると,個々の字はともかくとして,まずこの程度でよいと総会で認めたい。
楓 井
ただちに実施することに賛成する。効果を重く見たい。
佐 藤
法律・学術用語の言いかえに困っているところであるから,ただちに建議,実行してほしい。
土岐会長
建議とすること,用語改正例をつけることについて御異議はないか。
(一同賛成)
では,御承認を得たとして建議する。