国語施策・日本語教育

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議事 国語課長報告

土岐会長

 ただ今から第35回総会を開く。きょうは新しい文部大臣のあいさつがあるが,つごうで少しあとになる。はじめに,吉田甲子太郎委員の死去その他について,国語課長から報告がある。

白石課長

 吉田甲子太郎委員には,さる1月8日死去,同10日通夜,同14日明治大学講堂で文学部葬が行なわれ,土岐会長が弔辞を述べた。
 さきにお送りした総会議事要録の中で,各委員の御発言の箇所に訂正すべき点があったら,国語課のほうへ申し出ていただきたい。
 第33回総会議事録の,はじめにお送りしたものは,筆写の手違いで落とした部分があったので,さっそく訂正したものをお送りしたことを御了承いただきたい。
 また,第34回総会議事録の5ページ下段,岩下委員の御発言「ただ今の御意見とは逆に……」は,「ただ今の成瀬委員の御意見とは逆に……」に,また11ページ下から5行め「実績は実績として認めて」の次に,「正書法の立場から……」を入れる。以上訂正する。

土岐会長

 委員の出席がそろったところで,故吉田委員の霊に黙とうをささげたい。きょうお配りした国語審議会報告書―3―は,この前の第3期の審議会でやったことがまとめてある。これと前の総会の要録などをごらんくださって,今後の審議の手がかりにしていただきたい。
 前回(34回),前々回(33回)では,新しく委員になられたかたがたに自由に話してもらった。きょう出席の新しい委員の中でまだ発言されてないかたがあるが,そのかたがたにお話しいただくかどうかおはかりする。
 (一同賛成。)
 では,横田委員にお願いする。

横 田

 議事録によって,前回までに皆さんが話されたことを承知した。わたくしは,国語についてはまったくしろうとであり,国語問題について専門的なことは知らないが,国語の改善には関心をもっている。こういうことは理屈なしにどんどん改善していくのがよいと思っている。わたしは,昭和7・8年ごろに今のようなかなづかいを使って書物を書いたが,そのころは全然孤立していた。それから10年ぐらいだんだん変わって普通のかなづかいに改めたこともあり,発音式のかなづかいを使ったこともあるが,そういう方向に進めるよう努力したい。今は法律用語についての改善をわたくしが委員長となって各学会と協力してやっており,現在カ行まで進んでいる。自然科学のほうではもうできているものもある。あと4・5年たつと,自然科学のほうとあわせて用語統一ができるのではないかと思う。

土岐会長

次に,山岸委員。

山 岸

 これまで文字言語はわりに扱われているが,音声言語はむずかしいので実効があがっていないようである。一般に国語改善が文字言語のほうを主とし,音声言語のほうがおろそかにされているように感じられる。新聞などに,あることばをかなで書いて,漢字をかっこに入れているのを見るが,まことに愚かなことである。一つの思想を表わすのに二つの記号を用いていることはどうかと思う。用語などわかりやすいことばですむことを,わざわざむずかしいことばを使っている。たとえば「りょうげん(燎 原)の火―投書欄―」のようなものは使わないようにしたい。学者は別として,一般大衆を相手とする新聞などは,だれにもわかるやさしい用語を使ってほしい。純粋な日本語の尊重を推進するように刺激してほしい。不純な日本語に対して,こういうことは言わないほうがよい,こう言うほうがよいというようなことば自体についての指導,また,一般大衆に理解できるように漢字の熟語の整理が必要である。また「ピックアップ」のように外国語を使うことを避けて,「ぬきだす」とするような日本語尊重の意識を大衆に指導することがたいせつである。こうした仕事は道楽むすこのあとしまつで,さきに立って積極的に考えることはむずかしいから,あとで指導していく。
 次に,字音かなづかいのことであるが,字音かなづかいは漢字の読み方を知るためのものであって,字が読めるようになれば消えていくものである。また,前回に,久松委員の発言にもあったが「おお」「おう」の区別には困る。これなどは発音式にするのがいい。「みかづき」「さかづき」などは,国語学的の論拠を重んずるよりも大衆的に考慮したい。
 なお,前に人名用漢字が内閣訓令で出たが,区役所ではこれによってひどく出る。国語政策としては親心でやっていることも,外に出ると圧迫的になる。独善的にならないよう,改善は急激にしないで,大衆がその方向に向いたときに変えるようにしなくてはいけない。
 それからお願いしたいことは,新かなづかい,漢字制限,左横書きについて,明治時代からいろいろ資料や成案がある。これらのものを集めて表に作ってもらえれば参考になると思う。

土岐会長

 大臣が見えているから,ここでごあいさつをしていただく。

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