国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第4期国語審議会 > 第37回総会 > 議事

議事 正書法部会報告

土岐会長

 では,正書法部会の報告をお願いする。

原(正書法部会長)

 32年1月21日第35回総会で正書法部会が設置され,23人の委員(氏名略)が決まった。同2月に第1回部会を開き,以後引き続き27回(うち1回小委員会)にわたって部会を開いた。まず,国語表記一般について何を取り上げたらよいかということについて討議した結果,現在国語表記で送りがながまちまちで困っている。この現状から見て,送りがなについてのよりどころを決めることは社会のためでもあり,また当用漢字が制定されたそのあとしまつの責任の一端を果たすことにもなるという考えから,けっきょく送りがなの問題について審議することに決まった。部会は,毎回委員がたの出席もきわめてよく,熱心に審議していただいた結果,本日お手もとにごらんに入れたような成果をえることができたことを心から感謝するしだいである。また,国立国語研究所からは,同所員による送りがなについての調査研究の結果についての説明など協力を得た。国語表記に漢字を用いているかぎりつごうがいい半面,誤読・難読を避けるためにつけたこれまでの送りがなはなんといっても便宜的で安定していない。近ごろになって,単に誤読・難読ばかりでなく,動詞の自動・他動をはっきりさせる。また,漢字の読み方を一定するという考え方もある。現在,送りがながさまざまに行なわれているのは,このような考え方からではないかと思う。したがって,送りがなを決めることはむずかしいが,正書法を考えようという立場から,現状に即して,漢字,かたかな,ひらがなを使いわけそれぞれ長所を発揮させていくには,現在のように送りがながまちまちでは困る。これをなんとかしてよりどころとなるものを作ることは現段階で最も効果的なことではないかと考え,あえてこの困難な仕事にぶつかっていったのである。これは,当用漢字・現代かなづかいを用いて現代口語文を書く場合の送りがなのよりどころとなるものを作ろうということであって,他に意図はない。しかし,それに付随する問題がある。これもひっくるめて考えるのがいいが,そこまでは及ばなかった。そこでまず,当用漢字表内の漢字を使って書く場合の書き方を示す程度のものであることを申し上げておく。審議にあたって,現実の傾向に沿って現実に各方面で実行しやすいものになるようにとこいねがって,資料〔総1〕送りがなのつけ方(案)のまえがき2にあげてあるような三つのことがおのずから考えられたのである。(1)活用語およびこれを含む語は,その活用語の語尾を送る。(2)なるべく誤読・難読のおそれのないようにする。(3)慣用の固定しているものは,それに従う。(1)の単独の活用語の語尾を送る方法は,従来広く行なわれていることである。(2)は,送りがな本来の趣意であり,これが問題の性質上たいせつなことであるが,読むがわ,書くがわの年齢,学力などの要素を個々に考えると,手がつけられなくなる。そこでここでは全体を見渡して取り扱った。(3)は,主として送りがなをつけない慣用についていっている。これは主として名詞,特に複合名詞について考えられることである。活用語から転じたものは,(1)によってその活用語の語尾を送ることになるが,現状に即するということで,国語表記の現実からこういうことにした。それで原則からいうと,通則19と20との性格は相反するものであるといえる。複合名詞の場合は,送らない慣用の固定しているものといっても個人差でいろいろ幅があるし,現実にゆれのあるものもあり,どちらを例外としても半々ぐらいになって同じ結果をみた。それで,これについてはなお検討し調整する機会のあることを期待していることを建議案の終わりにうたってある。なお,方針の(1)〜(3)を結ぶ形として〔総1〕の通則17,19のただし書きの「……のように送りがなを省いてもよい。」と示したのがそのあらわれである。審議にあたり実際の操作としては,明治以来の送りがな法の条項を整理検討し,語例は現状に照らし合わせて代表的な語を一語一語について検討していった。なお,固有名詞についてはふれないこととした。また,専門用語・職場用語などについては,日常普通に使われているものは取り上げた。通則は便宜上品詞別に配列してある。また,別冊〔参考資料〕「送りがなのつけ方」用例集は,「送りがなのつけ方」(案)によって書けばこうなるということを参考のために示したものである。われわれとしては正書法を打ち立てることに早く近づくようになることを願い,送りがなについては現段階におけるあらゆる場合を考えてこういうものを作った。これは正書法に近づく第一歩をふみ出したものと思う。以上申し述べたことを了解くださって,資料〔総1〕〔総2〕の審議にあわせて議決くださることをお願いする。

トップページへ

ページトップへ