国語施策・日本語教育

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議事 話しことば部会

土岐会長

 では,次に話しことば部会の報告をお願いする。

颯 田(話しことば部会長)

 話しことば部会は,32年2月第1回の部会を開催して現在までに19回の審議を重ね,話しことばの問題について各方面から検討を加えてきた。まず,話しことばをスピーディなものにする問題について,日本語自体の問題,話すものの態度の問題,技術と訓練との関係等について審議し,また話しことばにおける文語的表現の整理の問題について審議し,これらに関連して人称,敬称のあらわし方,助数詞の整理の問題についても検討を加えた。さらに「外国人学生の感ずる日本語のむずかしさ」について調査し,発音・語い・文法等にわたって問題点について審議を行なった。これらの審議を通して「話しことばのわく」ないし「話しことばの基準」ということが議題となり,これをめぐって書きことばの場合の正書法に対して話しことばの基本的な形,正話法というようなもの,いわば基本話型についての問題が検討された。しかしながら,現在の段階では直ちにそうした基本的なものを作ることは困難なことであり,国語審議会としては,現段階ではまず話し言葉についての現状を分析整理して,標準化の可能性もじゅうぶん考えたうえ,問題点を取り出し,一歩一歩その可能なものから改善を図っていくことが妥当ではないかということになった。そのためにはまず話しことばについての資料を集めて分析し,その改善の方法を考えることが必要なので,その第1着手として方言のいわゆる標準化に関する問題を取り上げることになり,これに関するアンケートを全国に求めることとなった。
 なお,前期の国語審議会で建議した「話しことばの改善について」の具体的処置を推進するために,教員養成の課程の中にその趣旨が考慮されるよう,中央教育審議会会長に対して,昭和32年12月2日部会として次のことを伝えた。
 「現在の話しことばの現状は,このまま放置しておくことができないほどに乱れていますが,それを救うためには,小・中学校の各科の教員に,まず正しく美しい日本語を習得してもらうことが先決だと考えられます。
 ただ今,貴審議会において教員免許法の改正を討議中と聞いていますが,将来の教員の資格として,各科を通じて「現代日本語学」について単位を取得しなければならないように考慮していただきたいと思います。
 その実施方法としては,現代の日本語学とは,話しことばの体系を意味するもので,たとえば必修科目として「現代日本語学」概論(2単位),実習(2単位)をおくことなどが考えられると思います。」
 方言のいわゆる標準化の現状分析は,「あらたまってものを言う場合にも出る方言について」全国的にその方面の研究者,関係団体等に意見を求めたものであって,その詳細は,別紙資料〔総3〕のとおりである。これで見ると標準化としてやさしいものは語い・文法・音韻・アクセントという順になる。しかし,この調査だけで決めることは困難である。語いよりも文法が方言的であり,音声はさらに大きい。また,地域・年齢・教育程度からはその地方での差は,語いが最も大きく,音声が最も小さい。その中に文法が加わるということがいえる。しかし,現在の日本では全国共通のことばが急速に進んでいる。これは教育およびマスコミの影響が大きい。将来教育で的確な方法で行なわれたらもっとよくなるのではないかと考えられる。小・中学校の話し方教育が現在よりあともどりしてはならないと思う。この際話しことばについて,教員養成大学で話しことばの再教育について,またどこの機関に行けば正しい話しことばについて聞くことができるかなどについて,どういう処置をとったらいいだろうか。今までも,ここでやったことを建議したり申し入れしたりしてやったが,あまり効果がなかった。われわれのやったことを,どうか効果あるものにすることを希望するしだいである。

土岐会長

 質問または意見はないか。

高 津

 正しいことば,美しいことばということが出てくるが,何が正しいことば,美しいことばであるか,そこを具体的に示してもらえばいいと思うがどうか。

颯 田

 現段階では,そういうもの,標準的なものがあるとみて,それに準拠して現状を見ていっている。まず,現在行なわれていることばについて比較検討し,その中でいちばんいいものをとる。美しいことばは問題であるが,やはり現在行なわれているものを基準にして考えるということである。

高 津

 ある程度基準がないと取り上げられないだろう。

颯 田

 実際的には,話しことばについてのレコード・テキストなどある程度参考になるものがある。ラジオのアナウンサー用としてアクセント辞典などもあり,これではアクセントの許容範囲を決めている。

土岐会長

 ほかに質問なり意見はないか。〔総3〕の結びの項に上げられている事がらについては,当局でどういう処置をされたかについてあとで局長から説明願うことになっている。

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