国語施策・日本語教育

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2. 固有名詞の書き方の問題 国内の地名・人名について2

 これらののち,部会は,問題点を詳しく分析し,下記のような点について一つ一つ審議を進めていった。

◇地名とはどういうものをいうのか。また,人名とはどういうものをいうのか。
◇地名・人名をかな書きにしてもよい場としては,どのようなものが考えられるか。

  1. 法令の中
  2. 戸籍・登記などに関する届け・申告書・証明願いの類
  3. 官公庁・会社などの職員の身分・成績などの記録,学籍簿,契約や貯金や資産の元帳,仕訳帳など
  4. 辞令・証明書・契約書・通帳・指令・令状・手形・小切手・支払命令書など
  5. 通達・通知・報告・回答・伺い・書簡などの往復文書
  6. 納入告知書・請求書・受領書など
  7. 封筒の上書き,官公庁会社名のゴム印など
  8. 選挙公報
  9. 出版物・新聞雑誌の奥付け・表紙
  10. 出版物・新聞雑誌の記事の筆者名と記事の中
  11. 国語教科書の中の筆者名と本文の中
  12. 社会科その他の教科書の本文の中

◇地名・人名をかな書きにするときの一般的な方式としては,どのようなものが考えられるか。

  1.  かなで書くときは,かたかなを基準とするのか,ひらがなを基準とするのか。
  2.  ジ・ヂ・ズ・ヅの書き分けは残すのか。
  3.  オウ・オオの書き分けは残すのか。あるいは,長音と見られるものは一般に長音符号を用いて表わすのか。
  4.  わかりやすい漢字またはわかりやすい地名だけは漢字で書き,その他のものだけかな書きにするのか。それとも,どんな字も統一してかな書きにするのか。区別するとしたら,漢字を用いる基準は国語審議会で決めるのか。
  5.  統一してかな書きにしようとしても,漢字の正しい読み方がわからないときは,漢字のままで残すのか,適当な読み方で書くのか。それとも基準的な音に機械的にあてはめて書くのか。

◇地名の書き方の基準としては,どのようなものが考えられるか。

  1.  府県・市町村などの行政または地域単位を表わす文字は,漢字でかくのか。それとも,これのかなにするのか。かなにするとすれば,町村の読み方は統一するのか,しないのか。また,府県名と市町村名との間を離して書くのか,それとも,つなぎの符号を入れるのか。それぞれの人の自由にさせるのか。また,県・市・郡・町・村などの行政単位を表わすことばは,前のことばに続けて書くのか,あるいはつなぎの符号を入れて書くのか。
  2.  山脈・平野・半島・浦・崎・岬・山・岳・峰・峠・港・海・灘などの文字は,漢字で書くのか。漢字でかくとすれば,当用漢字表にない字には,かなをふるのか。かた,たとえば,山をサン・ザン・セン・ゼン・ヤマなどといろいろに読むが,これについては読み方を表示しなくてもよいのか。
  3.  字名の終わりにつく町・通り・新田なども漢字で書くのか。それともかなか。一率でないとしたら,区別の基準をどこにおくか。
  4.  広い地域名を漢字で書き,狭いものをかなで書くというようなことはしないのか。たとえば,「日本国トウキョウ都……」「仙台市フツカマチ」のようにするとしたら,どこまでを漢字にするのか。
  5.  かなで書くとき,長い地名は,途中で切らなくてよいのか。切ったら,間につなぎをいれるのかどうか。
      オキノオオアガリシマ
      カトヤマシンデン
      ミナミシロヤマチョウ
      ギンザニシ8チョウメ

◇人名をかな書きにするときの基準としては,どのようなものが考えられるか。

  1.  姓と名とは続けて書くのか,離して書くのか。それとも,つなぎを入れて書くのか。
  2.  氏・様などの敬称は漢字で書くのか。「さん・くん」などは,「ヤマダさん」「ヤマダくん」などのように,名まえと違うかなで書くのか。敬称を名まえと同じかなで書くときには,つけて書くのか,離して書くのか。それとも,つなぎを入れて書くのか。
  3.  氏名をかなで書いたとき,肩書きはどうするのか。
  4.  やさしい漢字やありふれた姓名だけを漢字で書いて,ほかのもの,あるいは,ほかの部分をかなで書くことはどうか。区別するとすれば,区別の基準はどうするのか。

◇基準を決めたらどうするのか。

  1.  かなで書くとしても,そうすることが望ましいという考えを積極的に打ち出すのか。それとも,単にかなで書くときの基準として示すのか。あるいは,これは一つの案であって,国語審議会はこのようにしたらいいと思うと発表するのか。
  2.  訓令・告示にして官庁の文書や教科書などの実施基準とするのか。あるいは,いちおう決めておくだけで,積極的に世間には流さないようにするのか。
    以上の中で,地名・人名とは何かについては,団体名・会社名・施設名などは除外し,一般に地名・人名と考えられているものだけについて考えることとした。

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