国語施策・日本語教育

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3. 改正刑法の用語・用字の問題 改正刑法準備草案(不定稿)の発表

 昭和35年4月に,法務省から改正刑法準備草案(未定稿)の発表があった。これは,刑法改正準備会が,昭和15年に発表された「改正刑法仮案」をもとにして,3年半の審議研究の末に作成した試案である。
 刑法改正準備会では,この草案についての批判を各方面から求めたうえでさらに検討をくわえようということで公表したものである。
 これに対して,昭和35年6月9日第1部会で,千種委員から,だいたい次のような発言があった。
 「改正刑法準備草案は,従来の漢字口調のものに比べてよくなっているが,まだじゅうぶんとは言えない点もあり,表外の漢字も含まれている。草案が公表されたのは,広く意見を求めるためであるから,国語審議会からも制定者に対して意思表示をすべきであろう。意見をそのまま採用するかどうかは先方の裁量であるし,また,草案が決まっても,さらに法制審議会や国会にもかけられるのであるから,国語審議会としては,注意すべき点について意見を述べるだけでいいと思う。従来に比べてよい点,悪い点などについて具体的に例を拾って添えたい。」
 この提案に対して,部会は小委員会を設けて,方法を研究してみることとした。法務省側からは,この審議について資料の提供を受けたほか,刑事局の高橋勝好参事官・臼井滋男検事・鈴木義男検事の参加協力を得ることができた。
 小委員会は,まず,「改正刑法準備草案」(未定稿)について,現行法との比較研究を行った。そして,最初,国語審議会から,幾つかの例を添えて,法務大臣に適当な建議を行なうことを考えた。しかし,審議の結果,「抽象的な建議を今行なっても,実際的な効果が疑わしい。それよりも,草案の字句表現の検討を詳細に行ない,その結果を参考資料として先方に提供することのほうが,効果が大きい。」と判断された。これは,一つには法務省側の説明によって,準備会が草案の字句表現をわかりやすいものにすることに相当の苦心と努力を払った事情もわかり,かたい言い方や特殊な用語も,それぞれ審議の対象となりながら残されたものが多いという事情を了解することができたからである。
 このようにして,小委員会は,建議の案文を作成することは見合わせ,そのかわりに,法務省担当官の協力を得て,草案の字句や表現の検討をさらに深く行なうことが適当であるという結論に達した。そして,この方針は,第1部会の全体会議を経て,第41回総会(昭和35.7.19)で了承された。そこで,小委員会は,改めて草案の字句表現について慎重かつ詳細に検討審議を進めることとした。
 これらの審議の間に,法務省では,草案についての第3読会が始まった。そして,小委員会の審議の模様が担当官によって逐次先方へ連絡され,「刑法改正準備委員会では,国語審議会の審議結果を相当な敬意を払いながら審議の参考としている。今後も機会のあるごとに,小委員会での話し合いの結果を述べて準備会の参考にするようにしたい。」旨の発言が,第4回小委員会の席上,高橋参事官からなされた。
 このようにして,小委員会は改正刑法準備草案の全体についてひととおりの審議を終わり,第1部会の全体会議の審議にかけたうえで,その研究結論を「法令の用語・用字の改善について」として第42回総会(昭和36.3.17)に報告し,了承された。このことは法務省に連絡された。

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