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ローマ字のわかち書きの問題 審議会報告2



 そこで,いろいろの助詞について,できるだけ多くの実例と,その実際の使用例を集めたものを資料として審議を進めていきましたが,その結果,おもな点は,次のとおりであります。

  1. たとえば,
      多少年齢よりはおくれているんだ。
    という例文における「よりは」,すなわち,「より」という格助詞と,「は」という副助詞とが重なったものは,yoriwa と一続きにかいたほうがよい。なお,「よりは」と同じく,格助詞と副助詞とが重なった「よりも」も同様に,yorimo と一続きに書いたほうがよい。あるいは,「よりは」と「よりも」とは,ともに格助詞と副助詞とが重なったものであり,似てはいるが,両者の間には多少の違った点がある。それであるから,「よりは」は,yori wa と分けて書き,「よりも」は,yorimo と一続きに書くというふうに,両者を書き分けることによって形のうえからも,はっきり区別しておくほうがよい。

という意見と,

  1. 「より」と「は」とが重なった「よりは」も,「より」と「も」とが重なった「よりも」も,ともに一つのまとまりであると認めることはさしつかえないが,この問題とは別に,「より」という助詞,「は」という助詞,「も」という助詞が,それぞれ別に,単独に存在しているのであるから,表記の面では,「よりは」「よりも」をともに yori wa,yori mo と分けて書くことにしてもよいのではないか。

という意見が述べられました。
 以上の二つの考え方については,どちらがより妥当であるかは,にわかに決めがたいのであります。同様に,たとえば,
 ・わたくしにでもできる。
 ・手にさえとらない。
 ・きょうでさえおそいのに……。
などの例文における,「にでも」「にさえ」「でさえ」などの部分は,いずれも「に」「で」という格助詞と,「でも」「さえ」という副助詞がかさなったものでありますから,「よりは」「よりも」と同じくnidemo,nisae,desaeと一続きに書くと決めてもつごうが悪いということにはならないわけでありますが,一般には,ni demo,ni sae と分けて書いているのであります。
 以上をまとめてみますと,格助詞と副助詞とが重なった場合に,

  1. 一続きに書いてもさしつかえないと認められるもの。
     よりは よりも からは
  2. 一続きに書かないほうがよいと認められるもの。
     にさえ でさえ にでも をしも にすら になり

などがあります。以上についてだけで見れば,格助詞と副助詞とが重なった場合に,格助詞が2音節で,副助詞が1音節の場合には,一続きに書いてもよく,格助詞が1音節で,副助詞が2音節の場合は,分けて書いたほうがよいと思われたのでありますが,同じく2音節の格助詞と1音節の副助詞とが重なった「よりか」(よりかも)は審議の過程において,一続きにではなく,yori ka と分けて書くべきだとされ,また,後に述べる助詞と助詞のあらゆる可能な組み合わせの表の審議においても,
  からか(どこからか現われた。)
は,2音節の格助詞と1音節の副助詞とが重なったものであるにもかかわらず,一続きでなく,kara ka と書くと,いちおう決められましたようなわけで,助詞と助詞とが重なった場合に,一続きに書くか,分けて書くかを,助詞の種類と音節数によって決めることはむずかしいと思われるのであります。

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