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法令の用語・用字の改善について(部会報告)

法令の用語・用字の改善について(報告)


国語審議会第1部会

 これは,「改正刑法準備草案」の字句表現について検討審議して得たところのいちおうの結論である。


A 現行刑法と比較して改善されている例には,下記のようなものがある。

[( )内は条の番号]

本法→この法律(1〜6,その他)
首魁→首謀者(129)
橋梁ヲ壅塞シテ→橋を閉鎖して(210)
とく職ノ罪→職務に関する罪(各則4章)
隘水→出水(各則13章)
證憑ヲ湮滅シ→証拠を隠滅し(182)
汽罐→ボイラー(198)
瓦斯→ガス(201)
阿片煙→アヘン煙(223〜227)
禁錮→禁固(2,100,その他)
てん覆→転覆(213)
猥褻→わいせつ(261,262,303,その他)
日本国内ニ於テ→日本国内において(1)
日本国外ニ在ル→日本国外にある(1)
若シクハ→もしくは(2,152,その他)
因リ,因ル,依ル→よって,より,よる(12,53,その他)
看做ス→みなす(347)
罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス→罪を犯したすべての者に適用する(1)
罪本重カル可クシテ犯ストキ知ラサル者ハ其重キニ従テ処断スルコトヲ得ス→重い罪となるべき事実があるのに,犯すときその重い事実を知らなかったものは,その重い罪によって処断することはできない。(19)
犯罪ノ情状憫諒ス可キモノハ→刑の下限が情状に照らして重すぎると認められるときは(55)
刑ヲ加重又ハ減軽スル場合ト雖モ仍ホ→刑を加重し,又は減軽する場合でも,なお(55)
附和随行シタル者ハ→その他暴動に参加し,又はこれに関与した者は(129)
人ノ飲料ニ供スル浄水ヲ汚穢シ因テ之ヲ用フルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ→飲料水を汚して使用することができないようにした者は(216)
御璽,国璽又ハ御名→日本国の押印又は天皇の署名(251)
偶然ノ輸贏ニ関シ財物ヲ以テ博戯又ハ賭事ヲ為シタル者ハ→賭博をした者は(265)
人ヲ欺罔シテ財物ヲ騙取シタル者ハ→人を欺いて,財物を交付させた者は(354)
贓物ノ運搬,寄蔵,故買又ハ牙保ヲ為シタル者ハ→盗品その他財産に対する罪によって得た物を運搬し,保管し,有償もしくは無償で取得し,又はその処分の周旋をしたものは(366)


B なお改善が望ましいと思われる部分としては,下記のものがある。


隠匿(196)→隠す
隠避(178,307)→逃げさせ,かくれさせ
各本条(22,54)→それぞれの条
加功(30)→荷担
監護(317)→監督保護
偽計(163,316)→偽りの計画
吸食(226,227)
教唆(27,132,139,269)→そそのかす
虚構(329)→偽り作る
居住(95)→住む
減軽(50,53,54,55,57)→軽減
抗拒(8,311)→抵抗
強取(343)
公訴(99〜102)→公の訴え
交付(354)→渡す
事由(53,77,82,86,91)→理由
収受(307)→受け取る
首服(50)→自首
順守(82,94,95,96)→守る
除去(142,201,238)→取り除く
侵奪(339)→侵し奪う
折算(58)→換算
窃取(337)→盗み取る
蔵匿(178,181,307)→かくまう
組成(73,77)
損壊(172,その他)→損傷
代当(121)→代替
多衆(189,191,278,321)→多数
知情行使(232)
知慮(355)→思慮分別,知識経験
摘示(327)→(事実を)あげて
犯情(33)→犯罪の事情
頒布(262)→配布
不能(21,72,73,75)→できない
法例(総則1章)→適用範囲,適用関係
本章(228,その他)→この章
略取(4,301,302,307,310)
領得(259)
陵辱(259)→はずかしめる
漏示(149,334)→もらす
一月(35),十五年(35),二十年(37)→一ヶ月,十五か年,二十か年
(以下は,当用漢字表にはずれている漢字を用いたもの。)
斡旋(153,154,155)→あっせん
或る(26,63,69,164)→ある
改悛(88)→改心,悔悟
姦淫(311〜317)→かんいん,性交(幼年者に対する性交)
姦淫の罪(各則32章)→かんいんの罪,性に関する犯罪
毀損(327,329,332)→損傷,傷つけた
とう(335)→祈り
恐喝(356,357)→きょうかつ
矯正(47)→改善更生
勾引(171)→拘引
強姦(346)→ごうかん,強制性交
勾留(58,89,171)→拘置,拘禁
雇傭(317)→雇用
酌量(55)→情状をくむ
酌量減軽(55,57)→情状軽減
焼毀(192,193,194,197)→焼く
騒擾(189,190)→騒乱
賭博(265,266)→とばく
誣告(各則9章,184)→虚偽申告
幇助(28,132,139,269)→補助,助けた,助けて罪を犯させる
誘拐(301〜305,307,308,310)→ゆうかい
宥恕(51)→ゆるす
賄賂(150〜157)→わいろ
(以下は,音訓表にない使い方。)
超え(13,14,42,45,47,60,65)→こえ
背いて(148,362,363)→そむいて
疾病(274)→病気
(以下は,当用漢字にあっても,かなで書くもの。)
且つ(56)→かつ
但し(5,その他)→ただし
但書(98,114,119)→ただし書
又は(50,その他)→または
(以下は,本文に関するもの。)
おいて(1,その他)→で,の中で,に,には,について,が
おける(47)→の
……は,これを罰しない(12,23)→……は,罰しない
場合に限り,これを罰する(29)→場合に限り,罰する
これを殺した者は(269)→その人を殺した者は
その性質上,結果を発生することのおよそ不能なものであったときは(23)→とうていそのような結果を生ずることができないようなものであったときは
科料のみにあたる罪(29)→科料だけにあたる罪
多額を合算した額以下において処断する(56)→合算した額以下で処断する
没収に代えて(73)→没収する代わりに
善行を保持すること(95)→行ないをよくすること
次の期間を経過することによって完成する(100)→次の期間を経過すれば完成する
執行の免除を得たものが(108)→執行を免除された者が
人が現在する(192)→現に人のいる
自己の所有に属する(193)→自分の所有している
行使の目的をもって(229,238)→使う目的で
二人以上で暴行をし,人を損害した場合において,傷害の軽重を知ることができず,又は,その傷害を生ぜしめた者を知ることができないときは(279)→二人以上で暴行をして人を傷害した場合に,加えた傷害の軽重がわからないとき,または実際に傷害した者がわからないときは
前項の罪を犯し,死の結果を生ぜしめたときは,殺意の有無を区別し(285)→前項の罪を犯し,その結果相手が死んだときは,殺意があったかどうかによって
その事実の真否にかかわらず(327)→その事実が真実であると否とにかかわらず

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