国語施策・日本語教育

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第3部会 設置、概要

 第3部会は,第47回総会(昭和37.4.16)で設置され,ことばと文字について,これから改善をはかる必要のある問題,および国語の施策の実施方法について検討審議することを任務とした。
 最初に,第3部会の審議の手順・内容等に関連して自由に意見の交換をした結果,第3部会の任務は大きく分けて,(1)ことばと文字について,これから改善をはかる必要のある問題について検討審議すること,(2)国語の施策の実施方法について検討審議することの二つであるが,この際は,いちおう(1)のことばと文字について,これから改善をはかる必要のある問題について検討審議することとした。
 そこで,わが国のことばと文字こついてこれから改善をはかる必要のある問題としては,どのようなものがあるかを探るために,各委員の発言を整理して,(1)語句,(2)話しことば,(3)文法・文体,(4)音声・発音,(5)文字,(6)文,(7)ローマ字の7分野にわたって,(ア)漢語の言いかえ・書きかえ,(イ)同音異義語の整理,(ウ)語形の「ゆれ」について,(エ)新語・流行語(外来語,または外国語ふうのことばを含む。)の使用について,(オ)敬語について,(カ)翻訳調を日本語(文)脈の中に採り入れることについて,(キ)ガ行鼻濁音について,(ク)簡易字体(略字体)の採用について,(ケ)部首の整理,(コ)くとう点の種類と使い方,(サ)ローマ字文のわかち書きのしかた,ほか13項目,計24項目の問題を選び出して掲げた「第3部会予定議題一覧」を資料として,第4回部会(昭和37.9.14)で総括的に検討を加えた。
 ついで,第5回部会(昭和37.10.19)から,第7回部会(昭和38.1.18)にいたるまで,上記の24項目の問題の中で,緊急に解決をはかる必要があると考えられる具体的な問題としてはどのようなものがあるかを検討した結果,部会としては,次の四つをそれに該当するものと認めた。

  1. 話しことばの敬語的表現について
  2. 漢字の言いかえ・書きかえについて
  3. 国語の標準的発音について
  4. わが国の地名・人名の書き表わし方について

 第3部会が,この四つの問題を緊急に解決をはかる必要があると認めた理由などについて述べれば,次のようである。

話しことばの敬語的表現について

 敬語についてのいちおうのよりどころとしては,昭和27年に国語審議会が建議した「これからの敬語」があるが,それが建議された当時の社会的事情と,今日の事情とを比べてみると,社会一般における日常生活の変遷に伴って,一昔前には,改まった席や公の場での発言や話し合いに経験が乏しく,また実際にほとんどその必要もなかったような人々の間でも,話しことば――それも,特に改まった席や公の場での話しことばが身近なものとなり,重要な役割を占めるようになってきている。
 それに応じて,話しことばにおける敬語の問題が,一般に多くの人々の関心の的になってきているにもかかわらず,さきの「これからの敬語」に盛られている事がらだけでは処理しきれない面もあり,この点からいって,話しことばに現われる敬語的表現,すなわち尊敬表現・謙譲表現について,また文体・敬称・あいさつ語,および語気や抑揚のような方面の事がらなどをも含めて審議することが必要である。

漢語の言いかえ・書きかえについて

 当用漢字表,当用漢字音訓表などの制定・実施以来,公用文,法令用語,学術用語,新聞用語,その他各方面では,従来からの漢字の使い方を改め,当用漢字表にない漢字を使って書き表わされることば,音訓表に掲げられていないよみをすることばについては,他の適当なことばに言いかえたり,他の漢字を使って書き表わしたり,かな書きにしたり,また当用漢字表にある漢字で書き表わされることば,音訓表に掲げられたよみによることばでも,むずかしいことば,わかりにくいことば,特殊なことばなどは,なるべく,やさしいことば,わかりやすいことば,日常のことばにかえ,また一定の方針に基づいて,かな書きにしたりすることを決め,実施している。
 また,これに関しては,国語審議会の報告「同音の漢字による書きかえ」(昭和31.7.5)があり,それに掲げられた書きかえは,社会一般においてある程度用いられているが,当用漢字の使用を円滑にするためには,さらにより多くのことばについて,言いかえ・書きかえを考えることが必要である。

国語の標準的発音について

 これは,各音節の標準的な発音の問題のほか,ガ行鼻濁音の問題(たとえば,助詞「が」の発音),二重母音か長母音かの問題(たとえば「大きい」「衛生」などの発音),同じく形容詞「ございます」「存じます」のついた形の発音(たとえば,「弱うございます」は「ヨオーゴザイマス」か,「ヨウォーゴザイマス」か)など,いろいろの問題を含んでいるものであり,国語問題の一つとして重要な面をもっているものであるが,国語審議会としては,まだ本格的には取り扱っていない問題で,これに関する調査研究が必要である。

わが国の地名・人名の書き表わし方について

 当用漢字表の「まえがき」には,「固有名詞については,法規上その他に関係するところが大きいで,別に考えることとした。」とあるが,その後,人名に用いられる漢字については,「人名用漢字別表」(昭和26.5.25,内閣訓令・同告示)が制定され,戸籍法の施行規則によって,新しく生まれたこどもの名まえに使う文字は,当用漢字表,人名用漢字別表に掲げられている漢字,およびかたかな,ひらがな(変体がなを除く。)の範囲内に限られるとなっている。しかし,姓について,また現存者および歴史上の人物の姓名については何の制限,処置も行なわれていない。
 地名に用いられる漢字に関係あるものとしては,国語審議会の建議「町村の合併によって新しくつけられる地名の書き表わし方」(昭和28.10.8)がある。
 なお,「公用文作成の要領」(昭和26年)では,地名・人名をかな書きにしてもさしつかえない場合のことにふれている。
 しかしながら,さらに地名・人名など固有名詞の書き表わし方の根本方針について,検討することが必要である。


 だいたい以上のとおりであるが,第3部会としては,上記の四つの問題のうち,「話しことばの敬語的表現について」をまず第一に取り上げるべき重要な問題であると考えた。〔C6〜C10〕
 そこで,この問題については,やや深く掘り下げて検討審議を加えることとし,第8部会(昭和38.2.15)においては,各委員から提出された敬語に関する諸資料に基づいて,話しことばの敬語的表現についてどのような点に,どのような問題があるか,また,前述の「これからの敬語」との関連,およびこの問題を審議するにあたって採るべき態度,方針などについて慎重に審議を進め,第12回部会(昭和38.6.21)までに,これらの点について,最終報告にあるように,部会としての見解をまとめた。
 この間,第11回部会(昭和38.5.24)には,参考人として,神崎米三郎氏(株式会社高島屋東京支店人事部長)の出席を得て,新社員に対する敬語の訓練に関して具体的な話を聞き,審議上の参考とした。
 第13回部会(昭和38.7.19)において,総会に対する最終報告のまとめについて大綱を定め,方向づけをし,具体的には小委員会を設けて報告原案を作成することとした。ついで,第14回部会(昭和38.10.1)において,小委員会が作成した報告「これから改善をはかる必要のある問題について(案)」について審議し,字句,表現も一部修正の上決定し,さらに運営委員会・部会長合同会において他部会の報告との調整を経て,第51回総会(昭和38.10.11)に提出した。
 なお,第49回総会(昭和37.12.13)では審議経過の報告,第50回総会(昭和38.5.2)では中間報告を行なった。

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