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国語の改善について(報告)

これから改善をはかる必要のある問題について

T これから改善をはかる必要のある諸問題

 わが国のことばと文字について,これから改善をはかる必要のある問題としては,どのようなものがあるか。広く問題を探るために,(1)話ことばについて,(2)文について(3)語句について,(4)文法・文体について,(5)音声・発音について,(6)文字・表記法について,(7)ローマ字についての諸分野にわたって検討した。
 これらの分野の中で,緊急に解決をする必要があると考えられる具体的なものとしては,次の問題がある。
  1 話ことばの敬語的表現について
  2 漢語の言いかえ・書きかえについて
  3 国語の標準的発音について
  4 わが国の地名・人名の書き表わし方について
 これらについて,早急に解決を必要とするおもな事情を述べると,次のとおりである。


 話しことばの敬語的表現について
  敬語についてのいちおうのよりどころとしては,国語審議会の建議「これからの敬語」(昭和27年)があるが,特に話しことばに関しては,さらになんらかのよりどころがほしという要望がある。


 漢語の言いかえ・書きかえについて
これについては,国語審議会の報告「同音の漢字による書きかえ」(昭和31年)がある。また,公用文・法令用語・学術用語・新聞用語,その他においても,それぞれにむずかしく,わかりにくい語句についての言いかえ・書きかえを決め,実施している。しかし,なお,これらのほかにも,言いかえ・書きかえを考える必要のある語句が少なくない。


 国語の標準的発音について
  この問題は,これまで国語審議会としては,まだ本格的には取り上げていない問題であるが,国語問題の一つとして重要な面をもち,その研究が必要とされている。


 わが国の地名・人名の書き表わし方について
  地名・人名に用いる漢字の問題については,さきに「これまでの国語施策について」で述べたとおりであるが,さらに,固有名詞の書き表わし方の根本方針についての検討が必要である。


 以上の諸問題のうち,「話しことばの敬語的表現について」を第一に取り上げるべき問題と考へる。

U 話しことばの敬語的表現について

 ことばづかいの混乱ということは,いつの時代にも人々の話題になることである。特に,今日では,戦前に社会に出た中年層以上の人と,戦後に育った若い人たちとの間に,ものの見方の相違があり,ことばの使い方や好みの相違がいちじるしいので,この間いろいろの問題が生じている。
 わが国の敬語は,複雑多様であるうえに,わずかな言い方の違いでも,人の感情を刺激することもあるほど微妙な性格をもっているから,常にことばづかいの中心の話題となってきた。
 敬語については,さきに「これからの敬語」があるが,敬語は関係する方面が広く,これらに盛られている事がらだけでは処理できない問題がある。
 一方,戦後の社会では,一般の人々が集会に出て発言することや話し合いをすることが盛んになったこと,また,テレビが家庭へ普及したことなどのために,話しことばが,それも,特に改まった席における話しことばが広く各階層の人にとって,一昔前とは比較にならないほど重要なものになっており,多くの人の関心の的になっている。
 そこで,話しことばに現われる尊敬表現・謙譲表現についてはもちろんのこと,「ですます体」「でございます体」のような文体の問題,敬称・あいさることばの問題,語気・抑揚のような音声の問題など,話しことばの敬語的表現について審議することが必要であると考える。
 この問題を審議するにあたっては,次のような態度・方針によるべきである。

(1)  信頼すべき実態調査の結果をふまえ,専門家の意見を参考とすることが必要である。
(2)  広く世論に耳を傾け,社会一般に納得され支持されるように努めなければならない。
(3)  決定に際しては,正しい形・誤った形というような示し方をせず,慣用されていると認められる形とか,適当と認められる形とかを示すようにする。
(4)  実例を示すことを心がけ,なるべく具体的な場面を設定し,語句の形ではなく文の形としてあげるようにする。
(5)  目先の問題にとらわれず将来の見通しをも加味して,おおまかな方向づけをすることが必要である。

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