国語施策・日本語教育

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第1部会 かなづかい・送りがなに関する小委員会の審議経過

 この小委委員は,審議すべき事項として考えられたかなづかい・送りがな・外国の地名人名の書き方などの問題のうち,まず送りがなの問題を取り上げることとした。はじめ数回は,問題の取り上げ方の審議をした。そのさいの各委員の意見を要約すると,だいたい次のようになる。

  1. 読みまちがいを防ぐために送りがなの基準が必要だというが,日本人の優秀性を考えると,そういう心配は,よけいなことである。
  2. 個人が書く場合は自由であっても,正書法的な意味から,国民共通の基準は,やはりほしい。
  3. 現行の「送りがなのつけ方」は,全体として送りすぎている点,例外や許容の多い点,ことに複合名詞の送りがなの送りすぎなどが,問題点であると考えられる。
  4. 戦前は,ある意味で送りがなは安定していたが,戦争中から教育の場で多く送るようになって,公用文や新聞の送りがなと違ってきた。
  5. 戦前は,送りがなが統一されていて問題がなかったという見解には賛成できない。送りがなは,明治時代に誤読・難読を防ぐために活用語尾を送るようにされた。ところが,その習慣が一般に浸透し,やがて同じ漢字で書くときには,違った語でも表記をそろえるために多く送るというようになってきた。
  6. 一般に自分の思っているような読み方で人にも読んでもらおうとすると,どうしても多く送る傾向になる。
  7. 現行の「送りがなのつけ方」は,互いに矛盾する三つの原則が並列しているところに問題点がある。活用語尾を送ることを第1原則とし,誤読・難読のおそれのないさいには送らないことにすれば,例外も減って全体がもっとすっきりする。審議方針についていえば,最終的には,1語1語を表記辞典の形にまとめあげるべきであるが,そのためには,かなりの調査研究が必要である。そこで,われわれとしては,今はその準備をするという意味で,現行の基準に対する批評と,今後の方向についての意見をまとめるという考えで審議すべきであると思う。
  8. 学校教育の立場からいえば,送りがなの基準は,誤読を防ぐことを第1に,また,それぞれの語については,覚えやすいように決めてほしい。
  9. 二とおりの読み方ができないようにするために,最少限度どれだけ送ればよいかを,いちいちの語について考えて決めれば,誤読のおそれもなくなるし送りすぎもなくなる。
  10. 現行の規則では,「行く」「終える」の関係から「行う」「終る」を「行なう」「終わる」として問題となっているが,これなどは,かな書きすることに決めれば,問題は解消する。したがって,音訓表を検討すれば,自動的に送りがなの問題で解決するものも多いのではないか。
  11. たとえば,音節の数をもとにして送るといったような新しい立場で考えれば,実行しやすい案ができると思うがどうか。
  12. 審議の方法としては,これまでの送りがなを集めて,最大公約数的なものを決めたらどうか。
  13. 個々の語の検討にはいる前に,原則的なものを,まず打ち出す必要がある。
  14. 委員が共通の理解を持つために,まず適当な資料の検討から始めるのがよい。

 以上のような意見が出たのち,まず,現行の「送りがなのつけ方」を,ひととおり逐条検討し,ついで〔A2-2〕から〔A2-6〕までの資料を調べ,さらに寺西委員・国語課・国立国語研究所に,それぞれ必要な資料の提出を求め,客観的に問題点の所在およびその形について研究することとなった。そして,昭和40年2月,寺西委員から音節の数を基礎にして送る案〔A2-7〕,国語課から新聞社の送りがなの実施状況の比較資料〔A2-8〕および国立国語研究所から雑誌九十種の送りがなのゆれの調査資料〔A2-9〕の提出を受けて,今後め方針について審議した。
 その結果,特別委員として,部会長のほか,高津・寺西・中田の委員を選んだ。
 特別委員は,昭和40年3月,いちおう提出資料に目を通したのち,まず雑誌の資料〔A2-9〕について問題と思われるものについて検討を始めた。この検討作業の進行中,整理の方法について,次のような意見が提出された。

  1. 読みかたのうち,どの部分までを漢字に受け持たせるかをあらかじめ決めておいて送る方法は,便利でもあるが,一面問題もあるようだ。
  2. 接尾語は,送りがなからはずして,これを一律にかなで書くことにしては,どうか。中には,接尾語かどうかの判定のむずかしいものもあるが,それについては,あらかじめ,どれどれは接尾語であると認めておけばよい。

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