国語施策・日本語教育

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第1部会 かなづかい・送りがなに関する小委員会の審議経過2

 その後,話しあいを進めた結果,これまでの審議からみて,最も問題の多いのは,活用語から転じた名詞の送りがなであるから,まず名詞の送りがなについて重点的に考えてみようということになった。そして,〔A2-9〕の中の問題語430例を体系的に整理した〔特1〕のうち,単独名詞の送りがなに焦点をしぼって検討を始めた。ついで,その検討結果を〔A2-8〕の新聞の送りがなとつき合わせ,また,その他関連して問題となるものを加え,問題語約170例の一覧表〔特6〕を作って,さらに吟味を加えた。この審議の間に,特に問題となったと思われる考え方をあげれば,次のとおりである。

1  送りがなの概念について
送りがなの概念について,これまでおよそ次のような違った考え方がある。
ア 漢文のすてがな
 例 歳リテ酒ナク
イ 漢字の読みを助けるもの
 例 先ずる 坊ちゃん 一
ウ 漢字とかなとを用いて書く場合の語の正書法
 例 黄ばむ 近 一 積極的
 昭和33年の正書法部会では,最初「単語を漢字とかなとでまぜ書きする際の正書法」を決めるという考えで審議を進めたが,成案はけっきょく「送りがなのつけ方」という名になった。このように,「送りがな」という名は,一般にわかりがよくて便利であるために白然使われることになるが,定義づけようとすると,なかなかむずかしい。そのため,やはりこのさい「送りがな」という呼び方は,むしろ避けたほうがよいのではないか。
2  音訓表との関連性について
 現行の「送りがなのつけ方」は,音訓表を基礎にして考えられているはずであるが,そのことが明記されていない。そのために,送りがなの実際例を考えるさいに迷う場合がある。それで,この点を,はっきりさせる必要があるのではないか。
3  規則の立て方について
 現行の「送りがなのつけ方」は,規則として見るとき,不備や矛盾が多い。したがって,今後単独名詞以外の審議に進むさいには,この点についての検討も行ない,規則としてのあいまいさが残らないようにする必要がある。以上のようにして,単独名詞についてだけ審議し,いちおう〔A2-10〕のような案をまとめ,部会長から,その審議の経過を7月の小委員会に報告した。

 以上のようにして,単独名詞についてだけ審議し,いちおう〔A2-10〕のような案をまとめ,部会長から,その審議の経過を7月の小委員会に報告した。


 以上両小委員会の審議の経過ならびに結果が,部会に報告されたので,〔A-5〜A-8〕部会では,これらについてさらに審議を重ねた。
 当用漢字表の再検討については,表の性格をどう考えるか一日常使用する漢字の「範囲」とするか,「基準」とするかをめぐって,根本的な意見がかわされた。ついで,小委員会で保留になっていた4字についてその出し入れを審議決定し出し入れ全体としては,いちおう,

(1)  当用漢字表から削ってもよいと思われる字としては,
丙 嗣 朕 璽 迭 嚇 拷 罷 脹 迅 頒 錬 謁 虞 劾 濫 逓 遵 寡 畝 芋 且 煩 恭 但 悦 爵 堪 箇 丹 附
(31字)
(2)  当用漢字表に加えてもよいと思われる字としては,
僕 誰 杉  唄 旦 仙 堀 汁 肌 亭 泥 涯 尚 釣 皿 偵 悠 甚 洞 垣 蛇 傘 拐 曹 棟 朴 枕 槽 泡 厄 宵 挑 漠  斉 淫 喝 姦 矯 渓 洪 溝 肢 酌 塾 賂
(47字)  灯(←燈)(字体変更1字)

などが考えられるということになった。ただし,字種の選定については,さらに資料を加えて審議する必要があるかないか,憲法関係の字を削ってもさしつかえないかどうか,固有名詞関係の字として,都道府県名に使われる字ぐらいは表のなかに入れたほうがよいか,あるいは別わくに取り扱ったほうがよいか等の問題が残された。なお,当用漢字表の再検討については,音訓表ならびに字体表の再検討とも関係するところがあるので,今それらの審議をしたうえで,総合的に最終的な結論を出すことが望ましいと考えた。続いて,「まえがき」の修正の問題を取り上げ,藤堂委員の修正案〔A-10〕について審議した。動植物名をかな書きにすることの是非その他について論議がかわされたが,けっきょく「まえがき」については,いちおう次のような了解に達した。

  1.  この表は法令・公用文書・新聞・雑誌および一般社会で,普通に使用される漢字の基準を示したもので,今日の国民生活のうえでは,この程度の漢字で用を足すことをめやすとして選んだ。
  2.  この表以外の漢字を使用する場合には,読みがなをつけることが望ましい。

 しかし,このような「まえがき」では,漢字の無制眼な使用を助長するようになりはしないかという意見も出た。〔A-14〕
 送りがなのつけ方の再検討については,中田委員の提案〔A-9・A-13〕を中心に多少の発言があるにとどまった。〔A-14〕
 以上の当用漢字表の再検討と送りがなのつけ方の再検討の審議経過を取りまとめて,部会長から第57回総会(昭和40.12.9)に報告することとなった。

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