国語施策・日本語教育

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次第 自由討議

池田副会長

 このへんでいちおう,公開するかどうかについての討議を打ち切り,次の題目である自由討議に移りたい。最初に説明したとおり,第7期の審議を進めるにあたって,第6期の報告を土台にし,具体的に前向きに審議を進めたいと思うが,その線で発言願いたい。

市原委員

 前向きとはどういうことか。

池田副会長

 まったくふりだしにもどって審議しなおすということをしないでという意味である。

中田委員

 第6期の委員として,二三意見を述べる。第6期に吉田委員から「国語は漢字仮名交りを以て,その表記の正則とすることを声明せよ。」という趣旨の提案があり,世上,それが黙殺されたかに伝えられているが,これは事実に反する。提案を取り上げて検討した結果,従来とも国語審議会は漢字かなまじり文を審議の対象としてきたこと,文字の表音化を企図したことがなかったことなどから,ことさらに声明を出す必要がないというのが多数意見であった。なお,第6期の報告書には提案者の意見が反映されていると思う。
 第2部会で,これまでの施策について検討してきたが,たとえば,当用漢字表のまえがき,使用上の注意事項中には,前期の方向書に述べられてないことで,なお,検討を要する必要のある問題もあるように思われる。たとえば,副詞をなるべくかな書きにするということは,さらに検討してみたいことであり,第6期の報告を土台としつつも,その報告の線から一歩も出てはいけないということではないと思う。

池田(弥)委員

 国語審議会の審議の限界,役目などをはっきりさせてほしい。この点が明確でないために,訓令告示などで強制力をもって実施した場合の責任までも,国語審議会が負わされるきらいがある。審議し建議した責任の限界を国民に明らかにするとともに,実施に際しては,一般の世論を聞いたうえで余裕をもって実施に移る態度が必要であろう。

遠藤委員

 この審議会が表記法審議会であることは不満である。国語を,国民の話していることばもぜひ取り上げてほしい。東京の標準音では区別がつかなくなったといわれている発音でも,関西ではまだはっきり残っているものも少なくない。たとえば「オ」と「ヲ」との発音などである。このように全国的にみて,まだなくならない発音については,そのどちらが美しいかを考慮し,それを表記法にも関連させて,かなづかいを決めていきたい。

金田一委員

 話しことばや発音を重視するという趣旨には賛成である。このことは,前期の報告の中にもふれていることである。なお,第1回の総会で市原委員の発言の中に,戦後の国語政策を実施した結果,青少年は,古典や漱石,おう外などの作品が読めなくなったといわれたが,これにはもっと他に理由があると思う。作品の出た当時と現在とでは,ことばも社会情勢も,ものごとの名も大きくかわっていることが,これらの作品が読まれなくなった大きな原因ではないか。

天城局長

 従来の審議会は,いろいろの点で,いわば文部省から独立した機関のような性格をもっていた。それが第5期の終わりに推薦委員の選出の問題などを契機として、政令が改められ,文部大臣が責任をもつことをはっきりさせたのである。ただ,国語問題という性格からして,実施については慎重に行ないたいと考えており審議の途中でも関係のある教育課程審議会などにはかるとか,なんらかの形であらかじめ世論を聞くというのも一つの方法であろうと考えている。

西尾委員

 審議会の責任の範囲を明らかにするというのはぜひ必要なことである。そうでなかったために,本来負うべきでない責任まで負わされていることもある。将来,こうしたことを避ける意味からも,決定した案を実施に移す前に,世論を聞くという手続きが必要であろう。また,経過の発表などに際しては,審議会の責任ある立場の人から,問題の所在や内容の解説などを,より懇切に説明する必要があるであろう。
 公開,非公開については,浦上委員の提案に賛成する。ただ,そのほかに公正詳細な記録を作成し,官報などでなくていいから,公表することを考えてほしい。

古賀委員

 従来のやり方だと審議の結果や結論が出た場合,それから不賛成や反対を唱えても,もはやまにあわないということがあるので,今後はその点についてじゅうぶんな配慮をしたい。前期の報告でもふれておいたところであるが,専門家の学者の立場からは誤りでなくとも,一般大衆に歓迎されないような内容をもった決定については,いっそう慎重を期すべきであり,決めかねる場合は,多数意見小数意見として併記し,世論に問うのもいいのではないか。
 また,内容の審議とは別に,少数の人が協議して実施についての軌道を作り,具体化の際の取り扱いなども研究しておき,それを,さらに内容の審議に反映させることも必要であろう。

千種委員

 審議会の権限と政府の権限との間に,世上,誤解があるようであり,審議会が自分の責任でもないことについてまで,種々批判されていることも事実であるが,審議会が結論を出す態度としては,その結論が採択され,そのまま政府で実施してもさしつかえないような,りっぱな内容のものを出すべく努力すべきであろう。広い視野から,実施後の社会的影響もじゅうぶん考慮して決定する必要があるし,政府も同様の考えで実施に臨んでほしい。

池田副会長

 次回も引き続き自由討議を行なうこととし,きょうはこれで閉会とする。

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