国語施策・日本語教育

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漢字部会 概況 第1回〜12回

<第1回〜第4回>

 当用漢字全般についての具体的な審議にはいる前に,部会委員全体が,問題点について共通の理解を得るために,資料「検討すべき問題点の説明資料」〔総-1〕をひととおり検討した。特に問題になったことは,当用漢字表については,(1)表の性格を「範囲」とするか「基準」とするか,(2)表の適用範囲(分野)をどう定めるか,(3)固有名詞,専門用語に使う漢字を表の中に入れるかどうか,などであった。また,当用漢字音訓表については,音訓の制限を合理的に緩和して,必要なものを加える方向で検討すべきであるという意見が多く,字体表については,簡易字体について検討する必要があるという意見があった。また,個々の具体的事項の審議とともに,国語問題に関する基本的な考え方を明らかにする必要がある,という意見もあった。部会はこれらについての意見をとりまとめ,その経過とともに第63回総会に報告した。

<第5回〜第9回>

 当用漢字表の性格を「範囲」または「基準」とした場合のそれぞれの長短・得失について比較検討を行なった。「範囲」・「基準」の解釈については,いちおう次のように定めた。
「範囲」
 当用漢字表が日常使用する漢字の「範囲」を示しているということは,ここに掲げられていない漢字で書き表すことばは,別のことばに言いかえるか,かなまたは当用漢字表内の漢字で書きかえるという趣旨である。
「基準」
 当用漢字表が日常使用する漢字の「基準」を示すというようにすることは,なるべくここに掲げられている漢字でまかなうことを意味するものであり,これ以外の漢字は、どの字でも使用を禁止するものではないがなるべく用いないようにしたいという趣旨である。
 「範囲」・「基準」に関連した当用漢字表の性格等の考え方については,
(1)当用漢字表の性格は,従来の沿革や社会的影響を考慮して,現行どおり「範囲」とするのがよい,(2)当用漢字表の性格を「基準」として,現在制限的「範囲」としていることによって生ずる諸問題を解決したい,という意見があり,これらの場合において,その具体的な措置として,(ア)現行どおり「範囲」として字数をふやすか,または「基準」に変えて字数をふやす,(イ)適用する分野を現行どおりとするか,または義務教育だけもしくは義務教育,法令・公用文だけに限るとする,(ウ)法令・公用文だけを「範囲」とし,新聞・雑誌および一般社会についてはこれを「基準」とする,(エ)適用する分野に応じ,または漢字の基本度に応じて二つないし三つの異なった字種のわくを設ける,(オ)当用漢字表を「いちおうの基準」と考えて制限的な色彩をなくして漢字の使用をなるべく自由にする,などのことが考えられた。また,適用する分野については,まず,「範囲」・「基準」のいずれにしても,当用漢字表の審議の目標は一般社会を対象とするものであることを確認し,このことを前提として具体的に適用する分野をどう考えるかについて話し合った。そして,法令・公用文は,これが国民全体に理解される必要があるので当然適用分野と考え,かつ「範囲」として制限することには,ほとんど異論がなかったが,教育を含めて新聞・雑誌その他の分野についての適用のしかたをどうするかについては,なお,以後の審議にまつことになった。部会はこれらについての意見をとりまとめ,その経過とともに第64回総会に報告した。

<第10回〜第12回>

 部会審議の進め方を話し合った結果,社会一般で早急な解決が望まれている音訓表の改定から検討を始めることとし,漢字表の構成・字数・字種の問題については,別に小委員会を設けて考えることとした。そして,資料「現行の当用漢字音訓表について検討すべき問題点の一例」〔漢-1〕によって,異字同訓の整理,同字異訓の整理,かな書きにすべき語に用いる訓の整理,古訓・解釈訓の整理,熟字訓の整理など,現行の当用漢字音訓表の制定当時の選定方針を検討し,また,資料「当用漢字の音訓使用度数に関する資料」〔漢-6〕をも吟味しながら,音訓に対する基本的な考え方について話し合った。そのうちで特に意見が分かれたのは,異字同訓と同字異訓の整理の問題であり,同じことばを異なった漢字で書き分けたり,一つの字をいろいろに読んだりするのは不便であるから,できるだけ整理する方向で考えるべきであるという意見と,漢字を使う以上はその表意性を生かすことを考えるべきであるという意見とがあった。また,この間,小委員会を1回開き,漢字表の構成について話し合ったが,義務教育の期間中に読み書きを教える漢字の字数としては,1,200字程度,または1,500字程度といった案が出され,一般用の字数としては,1,800字,2,000字,2,500字といった案が出された。また,固有名詞に用いる漢字まですべて含めて,字数を3,000字程度とし,それ以外の漢字の使用を制限するという案も出された。これらの経過は第65回総会に報告した。また,この間,かな部会との合同会議を開き,木内委員の提案(「戦後の国語施策の根本理念を再吟味するための提案」)を聞いて懇談した。

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