国語施策・日本語教育

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古賀副会長

 ただいまの文化局長の審議経過報告も考慮に入れながら,さきほどの諮問事項の内容についてご意見・ご質疑はないか。

細川委員

 国語問題は,文部大臣のあいさつにもあったように,非常に長い間混乱を重ねてきた。このことは委員にも責任があろうが,文部当局にも責任があったと思う。これまでの諮問についてみても,一種の無責任諮問であった。こんどは文部大臣の英断によって漢字かなまじり文という基本的立場がはっきりと打ち出され,具体的な諮問がなされたことは非常な進歩であって,あらためて敬意を表したい。国語は国民全体のものであって,一部の者の趣味,道楽で無責任にいじってはならないものである。わたしどもの基本的態度としても,ひとつ,国語が国民の便利になるように,すなわち,法律や政治,経済,芸術などの各分野で仕事をするそれぞれの立場の人々に不便をかけないように焦点を合わせて,おおらかな気持ちで審議していくことがたいせつであると思う。今日は非常に気持ちのよい思いをしたしだいである。

柴田委員

 大臣のあいさつの中の「国語の表記は漢字かなまじり文によることを前提とし,……」の「国語の表記」というのは,国語のあらゆる表記ということなのか,一般の表記ということなのか,それとも当座の表記ということなのか。

文部大臣

 ここに述べた「国語の表記」というのは「日常の」というか,一般的な意味にとってもらってよい。

大野委員

「日常の」というのは「正式の」という意味なのか。

柴田委員

 たとえば「電文」は「国語の表記」に入るのか,「NHK」は日本語をローマ字で書いた例であるが,これはどうか。その他「ウルトラC」とか「オバQ」などもあるが,これも一つの表記である。これらを間違った国語というなら別問題であるが,こういうものはここでいう「国語の表記」の中に含まないのだと解釈してよいかという確かめの質問である。

文部大臣

 お話のような趣旨である。

大野委員

 大臣にお聞きしたい。正式な日本語の正式な表記は漢字とかなであると了解してよいか。正式のというのは,たとえば,政府がものを発表するとかの場合である。

文部大臣

 特別なものは別であるが,通常の国語の表記は漢字かなまじり文であるということである。

大野委員

 通常という場合には,自分でかってなメモをとっているものまでも含まれるが,そういうのもではなくて,正式に文章を書くときには漢字かなまじり文によるということ,つまり,いままでは漢字ばかりで書かれたときもあったし,ローマ字がまざっていたこともあったが,正式には漢字かなまじり文で書くということになるのかということである。

安達審議官

 補足するが,ここで「国語の表記」というのは,正式・公式・非公式とかいうことではなしに,かなタイプによる表記のような特殊な例外を除いた通常一般のという意味に受けとっていただきたい。

金田一委員

 大臣あいさつに「今後のご審議にあたりましては,……」とあるが,「今後の審議」というのはもちろん第8期のと了解してよいか。

文部大臣

 第8期以降のことである。

金田一委員

 同じく,あいさつの中に「国語の諸施策の改善の方途を……」とあるが,その前に「国語施策の改善の具体策について……」として「諸施策」とは述べておられない。「施策」と「諸施策」では,かなり重要な違いがあるように思われるが,ここでは新しい問題について取り上げることは,におわしておられないのか。

安達審議官

 ここでは,広く国語の改善の諸施策ということよりも,当用漢字表,現代かなづかい,送りがなのつけ方などの,これまでの具体的な国語施策の改善について再検討をお願いするわけで,それに関連する事項も諮問の中にはいっている。

中田委員

 諮問事項の内容のうち「検討すべき問題点」として「(1)当用漢字表(別表含む。)の取り扱い方……」とあるが,この「取り扱い方」という意味がよく理解できない。また,送りがなのつけ方については,その方針と内容について検討する必要があるとしておきながら,現代かなづかいでは,その内容上の問題点についてだけ検討する必要があるとして,方針ということばがないが,どういう理由か。

安達審議官

「当用漢字の取り扱い方」といのは事務次官の説明にもあったように,従来,当用漢字表を,「漢字の範囲」を定めたものと考えるか,「一応の基準」と考えるかというようなことが問題となっている。また,当用漢字表の適用範囲,固有名詞や専門用語等につかう表外字の取り扱い方,それに当用漢字表と学校教育との関連などが問題となっていたが,今後,それらの取り扱い方をどう考えていくかということ,つまり,当用漢字表の性格といった意味である。次に,送りがなについては,まだ実施の経験も浅いが,批判や問題点も多いので,その内容を検討するとともに,方針についても検討し,現代かなづかいについては,根本問題もさることながら,まず,その内容上の問題点を中心に,検討願いたいというわけである。

木内委員

 国語審議会の議事の非公開は,もう少し何か改良なりくふうなりをしてもよいのではないか。速記や録音したものを発表できるようにするなど。

安達審議官

 完全とまではいかないが,いちおうの記録はとってある。しかし,こういう審議会は,個々の委員の発言もさることながら,会全体としての話の内容を的確に,はあくしておくこともたいせつと考え,できるだけのことはしているつもりである。

木内委員

 膨大な速記録もよしあしで困るが,ともかく,じょうずにやってもらいたい。国民とともに考えるというのは,やりようしだいである。

古賀副会長

 前期には,総会は報道関係者に対して公開していた。この問題については,のちほど審議したい。

木内委員

 文化局長の審議経過報告の資料を,のちほどでもよいからいただきたい。諮問の趣旨は,過去の経験等にかんがみ,全般的な再検討のようであるが,ついては,審議のやり方をどうするか,とかくこういう総会は1〜2度で,あとは,部会にはいってしまうことが多いが,その部会へのはいり方が問題となる。諮問が全般的再検討とある以上,どういう部会を,どういうようにもっていくかで決定的なものとなるので,この問題についてじゅうぶん審議してほしい。

古賀副会長

 どういう部会を設けるかということについては,いずれ問題になることであるが,そのときは,みなさんとじゅうぶん相談のうえで決めていきたい。

植松委員

 希望としては,あくまで総会を中心に,総会の委託によって部会が設けられ,審議を進めていただくのがよいと思う。

大野委員

 先ほど木内委員から,膨大な速記録も困るという発言もあったが,わたしの考えでは,これまで国語審議会で国語問題が審議され,いろいろな施策が実施されてきたにもかかわらず,批判や注文が出ているということは,これは,いかなる案が出ても起こりがちのこととは思うけれども,たとえば,当用漢字表で1,850字という数を限って,これを範囲とする場合,どうしてもこの字がはいり,あるいは,はいらなかったのかということを国民の納得するようにしてあったならば,かりに字数を3,000字にふやし,3,000番めの字がはいり,3,001番めの字がなぜはいらなかったのかということを国民の前に明らかにできるような準備があったならば,批判もそう起こりえなかったのではないかと思うのである。そういう意味で,委員の発言や報告の内容は微細な点まで記録して,国民の前に公にされるべきであろうと思う。そのために,もっと予算措置が必要なら予算増加に務めてほしい。今後の審議の展開によっては,基礎調査の必要性も生じてくるであろうが,すべて予算に関連してくるので,この点,大臣に努力していただくよう強くお願いしておきたい。

古賀副会長

 速記をそのまま記述して印刷するにしても,細かな点で聞き違いがあったり,また,話しことばをそのまま文字に表した場合には,かなり冗長になって読みにくくなりがちである。それで,むしろ要録のほうがいいと思われることもある。ただ要録の場合には,その人としては,その発言中の重要な部分が抜けていたり,軽く扱われていたりすることもあろうから,その点,発言された方に確認していただくようにしていきたい。また,事務当局もよく考慮してやってもらいたい。次に,予算の問題であるが,この点について文部省ではどの程度具体的な心がまえをもっておられるか,お聞きしたい。

福田事務次官

 審議の過程で調査を要するものが出てきたら,規定の予算でまかなえるものはまかない,そうでない場合には,新しい予算措置の必要性も生じてくるが,ことがらによっては国立国語研究所もあることなので,そういう面で具体的な調査も可能であろうかと思われる。ともかく事がらに応じてやっていきたい。

森戸委員

 少し希望や感想を申し述べたい。わたしは,国語問題についてはしろうとであるが,感じたことが二つある。一つは,わたしが文部大臣をしていたとき,ローマ字化の問題が相当にやかましく,ことにアメリカ進駐軍から強く主張された。わたしは日本の国語のような伝統を重んじているところに,このような急激な変化はよくないと考えて強く反対したものである。もう一つは,昨年メキシコに行って感じたことである。メキシコには日本語学校が7校ある。その先生がたの話では,われわれは自分のこどもにも,メキシコ人であるけれども,やはり日本の文化を知ってもらいたいという気持ちから,日本語学校を設けて教育をしているが,ヨーロッパなどからきたこどもは2年ぐらいで,いろいろのものを読めるようになるのに,日本のこどもは6年かかっても新聞も読めないということである。次の世代にも日本文化が理解できるようにしてやってほしいというこの話には,わたしは非常な感銘を受けたものである。次に,こんどの諮問はこれまでの国語施策を根本的に検討し直すのか,それともいちおうこれまでの当用漢字表や現代かなづかい,その他の諸施策そのものの方向は認めておいて,ただ,その具体的な面において検討し直すのかという問題があるが,わたしは後者に理解している。それと,こうした国語施策についてのアンケート調査を国立国語研究所などの公正なところで,一般国民を対象にぜひやっていただきたいということである。最後に,これまでの論議では,いつも字をよく知っている教養豊かなかたがたの議論が多かったが,今後は,これから成長する人々のことも考えて,次の世代の人々のために国語問題をどう考えていけばよいかということについても,日本の教育をあずかる文部省が調査審議されるよう希望しておきたい。

古賀副会長

 ここにおられる委員のかたがたは、すべて各方面の権威者ばかりであるが,そうかといって,ここで決められたものが,そのまま取り上げられるとなると,やはり世間一般では抵抗を感じるであろう。というのは,わたしのような国語についてはしろうとが混ざって決めたものが,それほど権威のあるものかという疑問さえ感じることになる。そこで文部省としても,常に世間との接触を保ち,たえず国民の関心をひき起こすようにし,また,その意見を聞くというように働きかける必要がある。それに森戸委員の指摘されたように,若い世代の人々に対する教育との関連なども,きわめてたいせつな点である。おそらく,まだまだみなさんがたにはいろいろご意見がおありのことと思うので,次回にも引き続いてご意見を承りたいと思うが,さしあたり,このたびの文部大臣の諮問に応じるということについては異論はないか。(異議なし。)
 では,最後に相談しておきたいのは,次回の開催期日と公開,非公開の問題である。次回の開催期日については,7月の予定で会長のつごうも伺って決めるということでご了承願いたい。公開の問題については,まず,参考までに前期の方法をご説明願うこととする。

安達審議官

 前期とっていた態度は,(1)会長は特別な場合を除いて,総会にかぎり報道の任務にあたる者に傍聴を許すことができる。(2)報道の任務にあたる者の範囲は文部記者会に加盟している報道機関に所属のものとする。(3)撮影,録画,録音等による取材は記事の始まる直前まで許可することができる。(4)会議の資料を傍聴者に配布するかどうかについては,会長がそのつど決める,という内容であった。

大野委員

 公開していないということで与える心理的影響は大きい。ことばの論議であるから,特に激しい論戦になっても,別段,実弾を打ち合うわけでもないのでさしさわりがないと思う。以前には公開していたものを,なぜ,非公開にしたかというと,傍聴者がしめし合わせて議場を混乱させたことがあったからということのようであるが,そういうことは,まれなことであり,また,意味のないことであるから,議論の内容を国民に知らせることのできるようにしておきたい。

横田委員

 傍聴の必要性があると思えば,文部省の記者クラブにもそれが反映して、世間にも知らされるわけであるから前回同様でよい。

木内委員

 一般に公表して弊害でもあるのか。なければ公開にしてもさしつかえあるまい。

相川委員

 一般に公開となると相当多数やってくることも考えなければならない。横田委員の提案に賛成する。

古賀副委員長

 いま,二つの意見が出ているが,他に二,三名のかたに賛否をお聞きしたい。

熊沢委員

 前期どおりでよい。

安達審議官

 他の審議会では一般に,じゅうぶんな審議をするために,公開しないのが普通であるが,国語審議会では前期の阿部会長の発言で,先ほど述べた条件で公開となった。

細川委員

 いちおう前期どおりやって,熱心な傍聴者が現われたときには,また考えればよいのではないか。

古賀副会長

 細川委員の意見のように,さしあたり前期どおりやっていくということでご賛成願えるか。(賛成,拍手。)
 では,本日はこれで閉会とし,次回の期日は会長と相談のうえ決めることにしたい。

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