国語施策・日本語教育

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次第 庶務報告/協議

古賀副会長

 前田会長が外遊中なので議長を代行する。まず,庶務報告がある。

蒲生文化部長

 7月1日付けで追加発令になった大島康正委員と,新任の金田智成国語課長を紹介する。

古賀副会長

 本日は,前回の申し合わせによって,文部記者会所属の報道関係者に傍聴を許可した。なお,今期から毎回議事要旨を作成し,それぞれ次回の会議で確認してはということで,お手もとに配布してある。これとは別に,のちほど詳細な議事要録を作成し,別途送付するが,その内容等に訂正の必要があるときは申し出てもらいたい。まず,議事要旨を朗読する。
(金田国語課長「第58回国語審議会総会議事要旨」を朗読。)

木内委員

 議事要旨もけっこうであるが,議事要録については少なくとも次回の会合前の1,2週間前に送付していただきたい。

安達審議官

 補足するが,今回配布した議事要旨は,前回の会議全体としてどういうことがあったかということを見やすくし,次の会合の基礎にするために新たに作成することとしたものである。委員の発言のニュアンス等は不問にし,要点のみを整理したが,発言内容についての詳細なものは議事要録による。

古賀副会長

 議事要録について,特別,意見がなければ了承されたものとしたい。次に,諮問に対する答申の時期について文化局長から説明がある。

蒲生文化局長

 これまでは各期の任期の終わりに,なんらかの報告なり結論なりを出していたけれども,今期からは任期内でも,諮問に対する答申がまとまりしだい出していただき,そして任期内に結論の出ないものは,次期で継続して審議されることになると考える。

小谷委員

 そうすると,国語審議会令第1条では建議することも認められているが,今期は答申だけで,建議することはできないのか。

蒲生文化局長

 直接諾問事項に関係しなくても,その関連に応じて建議する必要があれば建議していただいてけっこうである。

古賀副会長

 引き続いて自由討論にはいるが,審議会の運営方法や審議方法等について自由にご発言願いたい。

中田委員

 具体的な審議にはいるまえに,この総会で了承を得ておきたいことがある。事務次官説明にある「一貫した論議」というのは,第8期以後のことと思うが,これまでの文部当局の説明からは,以前の審議会の審議の成果と一貫してというようにもとれると思われる。そこで,この総会では,第6期,第7期審議会における反省期の方向に立っての第8期国語審議会があると解するのか,それとも,これとは無関係に,戦後の国語施策を全部ご破算にしても根本的に審議していくものと解すべきなのか,この点をみなさんに確かめておきたい。

蒲生文化局長

 戦後の国語施策は,その後の実施状況からみて,必ずしも今日の社会の実情に即しているとは考えられないので,再検討をお願いしたいわけであるが,その際,従来,この審議会で審議されたことがらも,また,従来の施策のあり方も当然,今後の審議の参考として考慮していただけるものと思っている。いうまでもないことであるが,文部省としては,戦後の国語施策を全部ひっくり返すなどのようなことは考えていない。

村上委員

 第6期の報告は,かなり基本的な方針を打ち出している。そして第7期では,この報告の趣旨を尊重して審議を進めた。それが今度の諮問では,この第8期になると,すべてご破算にしてというような印象を受け,前期との関係が不明確であるように思う。

長岡委員

 国語はあるべき姿にすべきで,過去の審議会で築き上げられた功績は当然尊重しなければならない。

古賀副会長

 今日の時点からみれば,従来のものを部分的には修正する必要もあろうが,根こそぎひっくり返すというようなことは,けっしてみなさんも考えておられないだろう。前期までのことも考慮したうえで,さらにどういう問題に中心を置くかというのが,今期の態度ではないかと思う。

横田委員

 それでよいのではないか。ここで過去を取り上げて議論をしていたのでは紛糾するだけである。もちろん,これからの再検討の中には過去のいきさつも当然含まれてくるであろうが。

平林委員

 第7期までは新しい問題をやってきたが,今期はそれらの国語施策を再検討しようとしているのである。少なくともこのことを,はっきりさせてから出発していく必要がある。その場合,いままで考えてきたことが,すべてまちがいであると否定してかかるということはよくないが,しかし時代は違っていても誤りは誤りとして,はっきりさせていかなければならない。

西尾委員

 第6期,第7期と今期との関係が問題になっているが,第6期では,いままでの国語政策には行き過ぎがあるということから,その手直しが必要であるとして,具体的な問題を列記し,これはじゅうぶんな調査の上で決定する必要があると結論を出している。こういうことからいって,今期の諮問事項も具体的につきつめてみると,第6期のものとなんら変わった点がないという気持ちが,6,7期の委員にはするのである。それと6,7期では,審議会の外に,これまでの国語施策を根本からひっくり返さなければならないという議論があったが,今期の文部大臣もそういう考えではないかという心配があって,先ほどの中田委員・村上委員の発言となったように思われる。しかし,これまでの文部当局や各委員の発言からもわかるように,いままでの施策を具体的に検討するのは,現在の時点から考え当然のことであり,また,前期までの委員も安心してこんどの諮問事項を具体的に検討してよいと思われる。

熊沢委員

 国語施策の再検討にあたっては,特に,教育面において実施されている施策が,すでに相当年月を経ているという現状をよく考慮してほしい。根本的にどうしてもそうせざるをえないという以外,みだりにいじるようなことがあっては,教育にあたる者もこどもも動揺して迷惑することになる。

大野委員

 すでに教育で定着しているものを変更するのは,こどもに迷惑ということであるが,現在行なわれている教育の現状が正しいものなら,われわれは,ここであらためて審議する必要もない。あらためてここで審議が要請されるのは,戦後の国語施策に誤りがあったからにほかならない。

熊沢委員

 大野委員のいわれるとおりであるが,しかし,いちがいに頭から悪かったときめつけるのもどうかと思われる。戦後に施策に賛成しておられるかたがたもある。

大和委員

 大臣あいさつに「広い立場から国語の諸施策の改善の方途を……」とあるが,ここでいう改善とは根本的改善をいうのか,部分的改善をいうのか明確でないが,かりに,根本的改善は困るとか,6,7期をふまえてとかなると,自由な発言がしにくくなるという懸念がある。必ずしも6,7期の報告をないがしろにするというのではないが,どうしても改善する必要がある場合に,それを封じては審議会の意味がなくなってしまう。

森戸委員

 いちばんの問題は,この国語審議会が会期ごとに,新しいものとして発足するのか,あるいは継続性をもつものかということであるが,わたしはこういう会は,会期が変わるごとに無前提で出発するのではなく,前の審議会の基礎のうえに立って出発するものと了解している。次に,大臣のあいさつにある「広い立場から国語の諸施策の改善の方途を……」というのは,国語施策全体の改善のことなのか,それとも当用漢字や現代かなづかいを前提にしながら,その中であらためて改善していくことなのか,さらに広い立場から改革を論じる場合,これまでのものを廃止して根本的に改革するということなのか,いままでのものを考えながら扱っていくことなのか,その辺の意味するところをお聞きしたい

蒲生文化局長

 文部大臣の諮問機関として国語審議会が成立している以上,前期との関連も考えながら,第8期以後の審議をしていただくのが当然と考えるし,また,第7期の報告書なども,そういう意味から配布したものである。次に,こんどの諮問は当用漢字表などの具体的な再検討を望んでいるわけであるが,その場合,漢字制限をまったく撤廃するなどとは考えていない。

西原委員

 今期の審議会の性格が,前期までのとはがらりと変わっているように思える。今期では,前期の審議も参照することがあるけれど,態度としては手直しというのではなく,出直しという立場にたって考えたい。任期の2年はすぐ終わるから,ある意味では部会と総会を並行して開かなければならないこともあるが,部会でかなり調査,研究してから総会にかけるというようにしないと,総会だけでやっていると,どうも左右対立して,それも対立だけなく後ろに向かってものをいっているようなことが起こる。それに部会にはあまり出席しないで,総会でいきなり動議を出されるかたもあるが,こういうことは改めなければならない。

近藤委員

 小学校の校長として一言したい。われわれは戦後に行なわれた国語政策に基づいて,毎日指導しているわけであるが,やはりいくつかの問題点がある。たとえば当用漢字にしても,読むということと書くということとの問題,それに送りがなや現代かなづかいでも,なぜ,例外が多いのか,こどもにはわからない。こういうことから一般には,もっと広い立場の政策的な面も討議する必要があろうが,われわれとしては,こんどの諮問にそった答申が早急に出されることを望んでいる。

小谷委員

 国語の問題は重要かつ複雑で,将来に関係する問題でもあると思うが,できることなら今後の審議の判断のために,調査や研究の結果を,じゅうぶんに利用できるようにしていただきたい。今後の日本としては国際的な環境ということから,外国語との交渉ということもいやおうなしに考えなければならないし,またいっぽうでは,国語の伝統や将来の日本文化がどうなるかという問題もひかえている。現在世界の中で漢字を使っている国は少ないが,今後,われわれが漢字を使っていくということが,世界文明の中でどういう進展をなすものであり,また,教育の方面で漢字というものの効用がじゅうぶんに意義のあるものかどうか,そういうことをわれわれは直感的な意見としてもつものである。これまでも単に批判的な意見だけでなく,研究の結果による客観的な資料を参考にして問題の処理,判断が行なわれてきたと思うけれども,われわれにもそういう資料がほしい。もしなければ,そういう研究をはじめることも必要なことではないかと思う。次に,わたしは自然科学の分野からということで委員に選ばれたかと思うが,自然科学方面の委員としての任務を果たすためには委員としての意見だけでよいのか,あるいは,そういう方面でどういうような要求があるかというようなことを調査しておく必要でもあるのか。また,そういうことは審議会でやっているのか,個人としてやるのか。なお,われわれの分野では常に外国の固有名詞の問題につきあたるが,この問題は国語審議会の外にあると考えるのか,中にはいると考えるのか。

古賀副会長

 問題が3点あったと思うが,最初の資料のことについては委員である国立国語研究所長からご説明願うことにしたい。

岩淵委員

 国立国語研究所では,昭和24年以来,いろいろな調査,研究を進めている。ただ小谷委員が問題にされたようなことについて,直接役にたつような資料があるかどうかは問題であるが,ある程度の日本語の実態調査,ことに外来語ということでは,新聞,雑誌における外来語の占める割合,種類といったことを調査したこともある。ただこのような資料は,ことばの性格上,その当時における実情がこうであるという程度にすぎないということを,あらかじめご了承いただきたい。わたしどもでは昭和24年に日本語の語い調査をはじめたが,調査方法や人手,予算などに問題があって思うようにはいかなかった。しかし,その間,わりあい大きくまとまったものに「現代雑誌90種の用字用語」調査があるが,これなどは前期でも参考資料に供されている。現在では実験的に中学生を対象として,どの程度の漢字を学習できるかという分析調査も進めているが,このことについては小学生を対象にやったこともある。そのほか,共通語についてはことし実行しようとしているが,表記法についてもある程度のこと,たとえば,大学生がどの程度の知識や意見をもっているかということも調べてみようと考えている。なお,2,3年前に長岡市でことばの表記に関して,実際どの程度の知識を有し,実行しているかということを調査したこともあるが,こんどは一般国民が,どのように文章を書き表しているかという実態をつかんでみたいと,来年の予算要求を出している。それと,ことしからは,電子計算機を使って一挙に大量の語い調査を開始したが,いまは,まだ思うようには進んでいない。それからよく学校の先生がたでいろいろな調査をやっておられるが,これなどにもずいぶん役に立つ資料があるように思う。

古賀副会長

 次いで,小谷委員のいわれた2番目の問題,つまり,ここでは個人の意見を求められているのか,あるいは自分の属している分野としての意見を求められているのかということであるが,これは委員の委嘱状況からみても,当然,それぞれの属する各分野における意見を反映した意見を求められていると了解してよいのではないかと思われる。最後に,外国との交渉が,今日ではますます多くなっているので,その関係を無視すべきではないという意見については,どの程度,われわれがここで考慮していくかは,これからのみなさんの考え方しだいである。

植松委員

 資料がほしいという意見にはまったく同感である。国立国語研究所の研究の成果も,もう少し詳しく知りたいし,膨大な資料は,要点をまとめて配布していただきたい。わたしは他の審議会にも関係しているが,資料がないと議論ができない。なお,資料については岩淵委員の述べられた調査資料も重要とは思うけれども,それ以上に,たとえば,漢字を制限する,しないということは,はたしてどちらが国民の生活や児童の教育上にふさわしいのか,あるいは近藤委員のいわれたように,原理のはっきりしないかなづかいを強制されたのでは,こどもの頭も悪くなると思うが,はたしてどうかといったような研究もやってほしい。わたしはこういう問題を応用心理学会などで取り上げて研究するのもよいと思っているが,心理学会では関心のある人が少ない。また,戦後の国語施策がじゅうぶん効果が上がっているかどうかには疑問があるにしても,少なくともこれまでに上がったという成果をはかってみる必要もある。わたしはこれまでの国語審議会のものを無視せよとはだれもいっていないと思う。ただ,こんどの諮問事項はおおらかな事項であるから,その範囲ではわくをはめないで手直しをすべきところは直し,悪いところはこだわらずに使いやすいようにしていくということがだいじで,このような見地から,先ほどいわれた手直しよりも出直しということに賛成するものである。

安達審議官

 資料については,国立国語研究所とも協力して用意していきたい。また,みなさんがたからも,こういう資料がないかというような要望や意見を出していただければけっこうである。

渡辺委員

 国立国語研究所では電子計算機で調査が進められているとのこと,その結果に期待したい。文部省では,これまでいろいろな国語政策を行なってこられたが,アフタケアーという意味で,まだやることが相当にあるのではないかと思う。たとえば,一部知名人に対するアンケート調査といっただけではない,もっと大がかりな世論調査もする必要がある。そしてそういう資料に基づいて今期の結論を得たとなれば,これまでの審議会とは質の変わった結果が得られるのではないか。抽象的に議論をしていても結論の根拠がないのではいけない。

古賀副会長

 たとえば世論調査をやるにしても,どういう方法で調査をするのか,また,その結果をどう解釈するのかにはいろんな問題があると思うが,ちょうどいまは予算要求の時期でもあるので,文部省でもそういう経費を見込んでいただき,また,みなさんにもご協力いただけたらと思う。

阿部委員

 こんどの審議会は出直すとしても,かなり専門的知識が必要になる。これまでは国語審議会で決定した国語施策を,そのまま教育界に流すという形になっているのが多く,そこに問題があった。そこで,これをこの際,教育だけの次元に引きもどして専門部会等で検討するという方法は考えられないものか。

木内委員

 時間も少ないので一つ提案しておきたい。こんどの諮問理由に,「実施の経験等にかんがみ,種々検討を要する問題があると考えられるので……」とあるように,審議の主題はなにが問題かということである。そこでわたしもはっきりとした問題意識を,もっているが,次回には各委員とも社会や教育面などで,どこに問題があり,そのためにどういう変化が起こったか,あるいはそれに関連して,これまでいったい国語問題はどういうふうに取り扱われてきたのかなど,その辺の問題と思われるところを文書にして提出するようにしてはどうかと思う。審議会は答申だけでなく,建議することもできるので,必ずしも諮問者の胸中の思うままになることもなかろうから,広く問題がどこにあり,なぜ起こるのかということを短い作文にして,次回の総会前に提出し,総会には印刷して配布してもらえるようにできないものか。

時実委員

 前期では運営委員会のほか部会も設けられていたらしいが,今期も科学的な研究をふまえた専門委員会とでもいったものを設置してはどうか。なお,前期の運営委員会は,どういう性格をもつものなのか。木内委員の問題提供はよいことであり,また,総会は意見の対立があっても,たびたび会合を重ねて話し合うことがたいせつである。

熊沢委員

 木内委員の提案はけっこうなことである。問題点を提出すると同時に,どういう委員会を設けるかなど,その構成についても意見を出してもらってはどうか。

古賀副会長

 みなさんから問題点や運営のしかたなどについて,次回までに文書で簡略な意見を寄せていただくことはよいことと思うけれども,一面,迷惑に思われるかたもあろうが,ご了承いただければ,そのように処置したい。なお,質問のあった前期の運営委員会とは,一口にいって事務的なことを処理していた会で,つまり,部会の進行状況をみて,この辺で総会をやってはどうかというようなことを話し合っていた。

長岡委員

 文部省に国語課があり,国立国語研究所もあることなのだから,そこから問題を提供してもらって,熱心に協議すればよいのではないか。

横田委員

 先ほどの提案,すなわち,委員は自分の意見を提出せよというのは,強制でなく自由にしていただきたい。答案を審査されたのではかなわない。

古賀副会長

 たしかに,提出するかどうかは自由であるが,いちおう文部省から意見提出について,別途に依頼連絡するようにしていただきたい。

安達審議官

 事務当局としても,各委員から国語施策についての意見や資料に対する要望などを提出していただければ,それらをとりまとめ,さらに,従来からの国語施策の問題点を整理したもの,ならびに資料の一覧表等を準備して,次回に提出できるようにしておきたい。

成田委員

 教育課程の改定を審議している教育課程審議会とも,今後の運営について連絡をとれるように文部省にお願いしておきたい。

古賀副会長

 本日はこれで閉会としたい。今後の運営の方針,つまり総会の開催回数や,総会と部会を並行してやるかどうかの問題など,具体的なことについては次回で決めたい。

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