国語施策・日本語教育

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次第 その他(自由討論)

志田委員

 今回の諮問事項について具体的に取り上げていくという意見に賛成であるが,その場合,漢字の問題で,他に先行して審議していただきたいことがある。それは,当用漢字別表である。この表には,義務教育の期間に読み書きともにできるように指導する必要のあるもの,という表現があり,そして現在の学習指導要領では,小学校では881字を配当し,中学校では,その他のおもな当用漢字ということになっているが,これでは世間の実情にあわなかったり,当用漢字表との関係がひじょうにぼやけていたりする感じがある。そこで現在,学習指導要領の改定中でもあるので,国語審議会としても,当用漢字表と義務教育との関係を,明確に打ち出しておく必要がある。たとえば義務教育を終えるまでに,いちどは必ず提出する漢字とか,小学校の問題において,いちどは経験させていく漢字の範囲だとかいうようにしていただければと思っている。

古賀副会長

 いま,当用漢字表の問題を優先して取り上げよという意見が出ているが,そのへんのところをもう少し伺いたい。

時実委員

 わたしが,総会を数回開くことが必要であるといったのは,基本的な問題がなかなか決まらないからである。たしかに当用漢字の問題一つを中心に討議していけば,いずれ将来,自然発生的に部会もでき,部会での審議もうまくいくように思われる。ともかく,あとは第9期にまわせばよいというのではなく,この第8期としての,いちおうの終止符を打つ必要がある。こういう重要な国語問題を月1回の2時間半というのはおかしい。来年の予算要求には,一定期間,ホテルに泊まり込みでやれるぐらいに取り計らってもらいたい。公聴会もけっこうであるが,この審議会としての成案をもっていないと,公聴会を開いても意味がない。そのためにも,専門調査員を早急に委嘱して審議していきたい。

平林委員

 戦後の国語問題は,つまり漢字の問題である。わたしは第7期にしか出席していないので,それまでの審議状況は知らないが,漢字を1字入れるとか,かなづかい一つをどうするとか,そういうことをいつまでやっていてもきりがないと思う。まず,ここで国語施策の根本的なことを論議したい。数多くの日本語を一つ一つ変えてみたりしていても,いつのことかわからない。その間に,いまの国語政策,漢字制限政策というものが,国民にどんどん浸透して既成の事実になってしまうおそれがある。それでよいという人もいるけれど,われわれは必ずしも賛成していない。根本をまず審議してあとのことは軽く扱ってもよいのではないか。

岩淵委員

 本日,「国語施策の改善の具体策について検討すべき問題点の説明資料」が提出されているが,先ほどの当用漢字別表の問題や,当用漢字表の性格,その制定の方針などについて共通に理解するという意味で,具体的なこの資料を総会で取り上げて検討してはどうか。お互いにある程度の理解はしていても,じゅうぶんではなかろう。漢字の字種の検討などは部会に任せればよいのではないか。

石割委員

 この6月に第8期国語審議会が発足して、すでに任期の5分の1が過ぎている。いろいろ意見があっても,けっきょくは部会に分かれてやる必要があろう。ただ,部会で審議する方法なり内容なりを,総会であらかじめ検討しておくことがたいせつである。

浦上委員

 当用漢字表を優先的にという議論が出ている。それならそれで今期は当用漢字表にどういう原則をたてるかを,まずこの総会で出していただき,それに基づいて,さっそく部会を設けるようにしてはどうか。新聞界では当用漢字にいちばん苦労をしている。「肢」が当用漢字表にないために「し体不自由児」などと表現するのは,美しい国語の表記に反するという感じがする。特に音訓の改善については,新聞界としても具体的な提案を出すべきではないかと,その予定をしている。

古賀副会長

 当用漢字表を優先的に取り上げるべきだという意見が出されているので,1案として,ともかく当用漢字表部会の参加希望をとり,多ければその部会を設置して発足させる。なおその上に,送りがなやかなづかいもやるべきであるとなれば,また追っかけて他の部会を設けていってもよいのではないか。同時にすべての部会を設ける必要もないと思うが。

大野委員

 当用漢字表の問題を全体として取り上げるのがよいかどうか,送りがなや現代かなづかいの問題も並行してやっていくのがよいかどうか,各委員にはかってもらって,まず,当用漢字表からとなれば,では,どういう順序で進めるかを考えていけばよいのではないか。

古賀副会長

 そういうお尋ねをしてよいか。

小谷委員

 時実委員の出されている意見書の中には,ことばや文字の本質,国語の本質等,そうとう基本的な問題が含まれている。それに,これから作業をしていくうえでの基本的な問題や調査の問題等もひかえているが,そういうものは,この総会の審議からはずしてしまうのか。もし審議するなら,直接に諮問事項に該当しないけれども,その背景として有益な調査,研究のとりまとめなどを,どこかでやる必要があるのではないか。

古賀副会長

 いままでに出た意見のうち,どれを取り上げ,どれを無視するかというようには,まだ考えていない。

西原委員

 審議会の組織として,公の審議のしかたとして,問題を一つだけにしぼってやるというのはおもしろくない。やはり3〜4本の柱をたててやる必要がある。

中田委員

 賛成。大臣の諮問には三つ,四つの事項があるわけで,これを総会でかたっぱしからやっていくのもけっこうであるが,時間的には不可能である。やはり3ないし4部会を設けてやる必要がある。諮問に甲乙をつけるのはひじょうに大きなものを逃がす結果になる。

大野委員

 諮問の3事項全部を取り上げて審議するとすれば,問題の本質から考えて三つともできない。せめて一つだけでも総力をあげてやりたい。そういう意味で,まず当用漢字表からやっては,というのがわたしの意見で,かたっぱしからとはいわない。時実委員のいわれる文字の本質をどうするかなどは,漢字を議論すれば,おのずから論議されてくる。

中田委員

 部会を設けてやるかどうか,その採否をお願いしたい。

古賀副会長

 人数の多い少ないで機械的にかたづけるのはやさしいが,どうも感情的になるおそれがある。きょうのところは,この問題はお預け願って,次回にでも,多少の不満はあっても,皆さんの気持ちがそろうようなところへ会長にさばいていただくようにしたい。

渡辺委員

 当用漢字表を取り上げ,それに総力をあげるというのもけっこうであるが,できれば一部の力をさいて,さきほど小谷委員から発言のあった問題について,規模は小さくても,そういう部会のようなものができないものか。専門家からだけの言語観を論じるのではなく,自然科学のかたも言語観をもっておられるので,それにせっかくこうした各界の人々が集まっておられるのであるから,結論はすぐに得られなくても,そういうことの議論ができるように取り計らってもらいたい。

前田会長

 少し時間をいただいて委員としての感想を述べたい。わたしはおそらく国語問題については,仕事のうえでいちばん関係があると思う。知識のうえでは無知であるけれど。各委員の意見を伺っていて,部分的な協調性は高いと思うけれども,全体をどうまとめていくかという意見については,かなり少ないという印象を受けた。端的にいうと,やはりことばというもの,国語というものは国民とともになければならないということである。これは一部学者のための国語ではなく,国民とともに,そして少なくとも,過去に歴史があるということと同時に将来を見通して考える必要がある。それにわたしどもの将来から考えて,漢字だけが国語の中心ではないという気がする。シナ語と違って,漢字だけですべてがわかるわけではない。かなとの組み合わせにおいて国語がどうあるべきかを考える必要がある。そして,こういう考え方を土台にして,諮問の目的と総会の任務を考え合わせると,やはり諮問に応じていくつかの専門委員会というか,部会を設けること,また,部会相互の運営に関するものが必要ではないかという気がする。こういう部会中心に,そして意見が紛糾した場合に総会に移して,総会の判断を求めるようにする。投票ではないけれど,わずかの差で判断が出し得ない場合には,世論調査なり公聴会なり,それに国立国語研究所などにその理論的見解を聞き,総会で最終決定していくのがいちばん民主的なやり方ではないかと思っている。そうすれば総会を毎月1回開かなければならないということもないような気がする。次回以降は,わたしの主観は述べないけれど,きょうは,一委員として出席したので,自分の考えを述べた。

安達審議会

 資料「国語施策の改善の具体策について検討すべき問題点の説明資料」〔総-1〕について説明したい。これは大臣諮問に対する事務次官説明をさらに具体的な問題点をあげて整理したものである。偶数ページには,これまでの施策に対する訓令・告示の趣旨,総会での見解を示してある,奇数ページには,これら施策に対する批判,意見等を簡潔にして掲げてある。逆にいうと,施策を支持する肯定意見等は,原則としては,のせないこととしている。(以下,説明省略。)

古賀副会長

 次回以降の総会開催予定日を決めておきたい。(相談の結果,いちおう,11月11日(金),12月6日(火)の午後を予定。)きょうは,これで閉会としたい。

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