国語施策・日本語教育

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次第 佐々木茂索委員の霊に対する黙とう/庶務報告/協議

古賀副会長

 会長がおみえになるまで議長を代行する。最初に12月1日に死去された佐々木茂索委員の霊に黙とうをささげたい。(黙とう)。次いで事務当局から庶務報告がある。

金田課長

 まず,自民党の国語問題に関する小委員会から,文部大臣あてに要望書が提出されているので,その写しをご参考のためにお配りしておく。次に,前回の総会でお尋ねのあった漢字の習得情況については,昭和23年と30年に実施した「日本人の読み書き能力」および「国民の読み書き能力」それに,明治35年東京高等師範学校の尋常科4年生を対象にした「漢字の読み書き調査」から戦後の「学力調査」にいたるまで,いろいろあるが,その概要をまとめたものを,おって印刷物にしてお送りしたい。また,教育課程審議会の審議については,先般ご説明した以上のことは,また申しあげるほどの段階にいたっていない。ただ,小学校の学力指導要領は,昭和44年度に,中学校のは,同45年に改訂される予定であり,それに伴う教科書は,小学校は昭和46年度,中学校は同47年度から使用される予定とのことである。なお,前回の総会で発足した二つの部会の合同会議を12月12日(月)に,運営委員会を12月15日(木)にそれぞれ開く予定である。

古賀副会長

 前回(第61回)総会の議事要旨の確認をお願いしたい。(金田国語課長が朗読。)

大野委員

「2 運営についての協議」の(1)項に「新国語問題要領」の作成うんぬんとあるが,責任をもってこういう提案が出された場合には,その提案者名を明記しておく必要があると思う。

中田委員

 「新国語問題要領」の作成については,今後の審議の過程でその必要が生じれば,そのおりに作成してもよいという趣旨で会長はまとめられたと思うが。

古賀副会長

 大野,中田両委員の指摘されたことがらに,みなさんが異存がなければ,事務当局とも相談のうえ,そのように適切な表現に改めることとする。

木内委員

 議事要旨の「備考」欄に「(2)部会の運営方法について」とあるが,前回の総会後の部会委員打ち合わせ会で,なにかとりきめでもあったのか。

安達審議官

 部会の所属について希望を伺っただけで,別段の取り決めはなかった。

古賀副会長

「備考」欄の「(2)部会の運営方法について」の項は不必要であるから削除しておきたい。他に意見がなければ,一部修正ということで議事要旨の確認を終わる。次に,部会の発足に伴って,各部会にどういう問題を検討していただくか,あるいは審議の方針について総会としての注文をまとめていかなければならない。これについては従来からいろいろ問題が出ているので,まず,そういう問題点を頭に入れたうえで協議願ったほうが便利かとも思われる。ついては「検討すべき問題点の説明資料」〔総−1〕をあらためて参考の意味で説明願ったらどうか。

木内委員

 それもけっこうであるが,そうなるとはじめから問題の題目にはいってしまい,かえって時間もかかり,やり直しをしなければならないことも出てくるのではないか。それより,その前に当用漢字表等の訓令,告示の前文を吟味するほうが,いちばんてっとりばやく大局的な問題にはいれると思うがどうか。

古賀副会長

 もしみなさんがこの提案に異存がなければ,そういうふうに進めてもよいか。

細川委員

 きょうは,部会にどういう仕事をさずけるか,その具体的なことについて意見を述べよといわれるのか,その立場,方針について述べよといわれるのか。それともただ,ばくぜんとした抽象論,根本論から議論して部会の足場を作れといわれるのか。また,部会とはなれて国語問題を論じよといわれるのか。その点を明確にしていただきたい。あまり抽象論を論じるのでは意味がないと思う。

前田会長

 (出席)。遅れて申しわけない。これまですでに4回にわたって,いちおう基本的な見解については,各委員から意見を出していただいている。その結果として,二つの部会と運営委員会が設置された。そこで,きょうは,部会の審議にゆだねるべき事項について「検討すべき問題点の説明資料」を中心に協議願ってはどうかと思うわけである。しかし,いま,それに対して木内委員から,より具体的な提案が出された。会長としては,木内委員の提案にも当然ふれるべき筋合いのものであると思うが,ただ,取り上げ方としては,「検討すべき問題点の説明資料」を検討することによって,木内提案にも自然にふれてくるのではないかと考える。異論がなければそうしたい。

木内委員

 けっこうである。

安達審議官

 いま,木内委員から提案のあった点については,「検討すべき問題点の説明資料」にも具体的に掲げてあるので,いちおうこれを説明させていただく。(説明)。

木内委員

 ただ,この資料にあるような「1,850字を決めた根拠があいまいである。」か,どうかとか,「国民生活に必要な漢字」とは,いったいどういうことかなどが議論になるとたいへんな議論になり,末節だけにとらわれることになる。わたしはそれよりも戦後の国語施策なるものの立っている前提というか,そういうものが訓令・告示の前文にあると思うので,その前文を審議することによって,われわれはなんのために,なにをやろうとしているのかが理解できると考え,意見を申した。どうか末節に落ちないようにやってもらいたい。

佐藤委員

 漢字部会において特に問題にしてほしいのは,漢字と語いとの関係である。いままでの当用漢字表の考え方は,ことばと切り離さないまでも,漢字そのものだけを優先的に考えすぎたきらいがあったと思う。音訓の整理にしても,ことばと必然的に関連してくる。語いを調査するのは困難であるけれど,また望ましい結果が出るかどうか疑問ではあるけれど,漢字を,それによって書き表されることばとの関連において吟味するようにしてほしい。

前田会長

 いまの木内,佐藤両委員の考え方も含めて,わたしとしてはこの際,国語施策の根拠をいちおう再確認し,また,負担にならない程度の研究をそれに加え,かつ,国語審議会というたてまえ上,漢字そのもの,かなそのものというような考えでなく,やはり国語という見地に立って,ことばと漢字との関係,したがってこれと関連する漢字の音訓,かな部会との関係等をじゅうぶんに配慮しながら,先ほど申した「検討すべき問題点の説明資料」を,いちおう部会審議の進行のめやすとして,これから審議されるよう各部会に要望したい。もし,その方向で異論がなければ,その方向で部会の審議開始をお願いする。

細川委員

 わたしはどうも会長のいわれることが抽象的で理解できない。解釈が人によって違うであろうから,もう少し具体的に示してほしい。わたしは漢字,かなそのものは必ずしも末節ではないと思うが,それを末節といわれるなら,末節からやってもよいと思う。

遠藤委員

 佐藤委員が重要なことを発言された。佐藤委員の発言をふえんすると,当用漢字表の訓令と違った考えになってくることになる。いままでは,漢字が単語であるのだという考え方を置き忘れて,漢字はただ音を書き表すものだという考え方が訓令・告示の前文のどこかにある。今後はこの考えを捨ててもらって,漢字は意味をもった語であるのだということを,まず確認したうえで検討してほしい。そうすれば,当用漢字表の内閣訓令第7号の前文を否定することになるのではないかと思う。

佐藤委員

 遠藤委員のおっしゃることと,わたしのいおうとしていることとは多少違う。わたしは漢字を限定するまえに,日本人が日常使用することばにどんなものを使っているか,それをまず吟味し,そのうち,どの語を漢字で書き表わし,あるいはかなで書き表わすのか,まず,漢字を選んで読み方を決めるのではなく,先に,ことばを決めて,その中で,どの程度漢字を使うのかという順序でやってほしいといっているのである。その点誤解のないようにお願いしたい。

長岡委員

 すでに部会が成立したのであるから,部会で国語のあるべき姿を慎重に審議し,その原案をこの総会に提出して,各界のかたがたの意見を仰げばよい。まずは部会で具体的な研究をしていくのが,目下の急務ではないのか。

細川委員

 漢字をことばとの関連において考えるのは当然のことであるから,長岡委員のいわれるように,まず部会で審議していただきたい。訓令などはすでに過去の遺物である。訓令,告示の文章を練っても,それから結論が出るものではない。ともかく前期に出した報告書が妥当なものかどうか,どの漢字を残し,どれを加えるか,出し入れをしてみて,けっきょくどれくらいにするかを決める。わたしは,必要なら何字でもよいと考えている。やっているうちに,おのずから結論が出てくると思うので,部会でどんどん具体的な問題にはいってもらいたい。部会でもてあますことがあれば,それを総会にかけて,またこの席上で議論していけばよい。

植松委員

 たしかに細川委員のいわれるように過去の遺物らしいものに取り組んでも意味がないとも思われるし,また,すでに二つの部会が設置されているので,この総会で各委員から,あまり細かい問題にならない程度に,注文をつけられるならつけていただいたほうが効果的だと思う。

浦上委員

 わたしは漢字部会に所属しているが,この総会で漢字部会に課すべき原則をおおざっぱなことでもよいから決めておく必要があると思う。いま,訓令の前文が問題になったが,漢字は制限しないほうがよいというのか,あるいは総会としては,ある程度の漢字制限は必要だとするのか。制限するにしても1,850字の字数をどの程度にするのか、そのへんの具体的なめやすを部会審議の前提として決めておかないと同じ議論のくり返しになる。当用漢字表の精神そのものの検討をも部会に命ずるというならそれでもよいけれど。

阿部委員

 本日,みなさんに配布した「当用漢字表等の取り扱い方に関する試案その他」は,先日提出した意見書の補正である。要は,当用漢字表を教育の次元で整理しなおすことができないかという趣旨で書いたもので、少し朗読させていただく。(朗読,説明。)

中田委員

 かな部会においては,送りがなと現代かなづかいの二つを平等に審議してほしい。漢字部会においては,固有名詞は当用漢字表の別わくとして考えていきたい。なお,阿部委員の考え方は,教育と社会を分離してはという考えのようであったが,これには反対である。それから「範囲」,「基準」の問題については,わたしはあくまでも当用漢字表を「範囲」として考え,その手直し程度にとどめたい。音訓を全く解除することにも反対である。この考えはわたし個人というよりも第6期,第7期はもとより「国語問題要領」でも,そううたわれているのもので,今期のはじめにも,そういう方向でやろうと確認されているものであるから,これに反対する意見はすべて無効の発言である。それに佐藤委員のいわれた語いの問題であるが,たとえば「あいさつ」ということばは,われわれの日常生活に欠くことのできないことばであるにしても,それを書き表わすための「挨拶」という漢字を無条件に当用漢字表に入れるかどうかは別問題として考えたい。ことばがあっても漢字で書かなくてもよいものがあると考えるところに見識が出てくるものと思う。

長岡委員

 漢字部会に注文したい。日本の純粋のことばとシナのことばの間には厳然たる区別をおいて,漢語で発表しなければならないことばは,ことごとく漢字でもって表現するというのはどうか。現在,「しゃく熱」「ばい煙」「駐とん」などと,まぜ書きが多く見受けられるが,これはよくない。われわれは漢字教育で少し生徒に対して神経過敏ではありはしないか。次に,かな部会に対しては,かなというものが発音を示すものであるなら,「現代かなづかい」にある助詞「は」「へ」「を」の書き方は,「わ」「え」「お」としなければならない。それを,「は」「へ」「を」と書くのはなにゆえか。

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