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第63回国語審議会総会(昭和42.3.27)議事要旨

庶務報告
 金田国語課長から,昭和42年度における国語施策関係の予算,4月から7月までの会議開催予定,その他について報告を行った。
協議
(1) 部会の審議経過報告について
 漢字部会長およびかな部会長から,それぞれの部会の審議経過報告を行ない,それを中心に質疑応答や意見の交換をした。そのおもなものは,次のとおりである。
 (ア) 簡易字体の問題と関連して,中国とのつながり,あるいはもっと広く,国際的に漢字文化圏の問題をどう考えるかということが話題になったが,同一の漢字でも,わが国とは異なる発音をもとに考案されている中国の簡体字と,わが国のそれとを関連づけることは適当でないという意見が強かった。
 (イ) 戦後の国語表記が不統一になったように思われるという意見については,戦後,国語政策として,新しい規範ができたために,古い規範で育ったものは,それにじゅうぶん慣れないためであるという意見と,新しい規範そのものに不備があるためであるという意見があったが,いずれにしても,今後の審議では,国民全体に理解され,守られるような規範をつくることに努力していきたいということであった。
 (ウ) 固有名詞に用いる漢字を当用漢字表に入れるかどうかの問題については,基本語いとの関連において考えてほしいという意見,また,実際の使用面を考えて実用に適したものにしてほしいという意見があった。
 (エ) 「範囲」および「基準」ということばの解釈については,人によって,それぞれ,まちまちのところがある。できるだけ,ことばの定義付けを行なって文書にしておく必要があるという意見があった。
 (オ) 国語問題は,賛否両論をつきつめて,多数決で決めるべき性質のものではないが,問題によっては,総会の討議に付して採決していくことも必要ではないかという意見があった。
 (カ) 部会審議は,これまでと同じ問題のくり返しをやっているにすぎないという批判が出たが,もう少し,部会に審議の時間を与え,次回の報告に期待してはということであった。
 (キ) 「送りがなのつけ方」と「現代かなづかい」のいずれの問題を先に審議するかについて,かな部会長から意見を求めたことに対し,筋道を立てて,改めやすい「現代かなづかい」の問題から先に審議すべきであるという意見があり,また実際に社会でより要求度の高いのは「送りがな」の方ではないかと言う意見もあって,結論を得なかった。
(2) 木内委員について
 木内委員から,今後の総会や部会での審議の進展をはかる意味で,次の二つの提案があった。
 (ア) 当用漢字表を「範囲」とするか,「基準」とするかの問題については,さらに各委員が共通基盤に立った理解を得るため,まず,現在の「範囲」となっているものを「基準」に変えた場合にどういう変化が起こり,また,それぞれにはどういう長所・短所があるか,また,これを教育だけに,あるいは法令だけに限定して考えた場合に,どういう問題があるか,などについて,なるべく早く総会で討議することとしたい。
 (イ) 現在の部会とは別に,国語問題の全般的な問題を総合的に検討する小委員会を設け,@ 戦後の国語施策の一つの問題点となっている訓令・告示による公表とその推進方法について再検討し,また,A 漢字とかなをまぜて書くことを正書法とすべきであるという日本語の本来的性格の認識なしに,改善施策に着手したという根本的な問題について検討してほしいこと。
 以上について,そのような基本的な問題を先に検討するのでなしに,当用漢字表の字種についての検討など,もっと具体的な審議を進め,その後に「範囲」とするか「基準」とするかの問題,また,訓令・告示による扱い方の問題も検討すればよいという意見があった。そして第1の提案については,その提案にあるような趣旨をふまえて部会で審議を進め,その結果をできるだけ早く総会において報告することで了承した。また,第2の提案については,木内委員も新たに小委員会を設けないで現在の部会の合同会議でもよいとし,今後その趣旨にそって検討するとして,さしあたり,この問題についての木内私案を会長あてに提出することとした。
(3) なお,かなの問題についても,かな部会で「送りがなのつけ方」にある3か条の方針のうち,「活用語尾を送る」という第1の方針に即してのみ処理した場合,どういうことになるかといったように,問題点をさらに整理してほしいということであった。

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