国語施策・日本語教育

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〔漢字部会審議経過について〕

 漢字部会は,従来の審議経過と前回の総会の付託に基づき,当用漢字表の性格を,「範囲」または「基準」とした場合のそれぞれの長短・得失についての比較検討を行ない,まず,「範囲」と「基準」についての共通の理解を得,次いで,当用漢字表を「範囲」とすることの問題点,またこれを,「基準」とした場合の問題点について,それぞれ具体的な事項を審議検討中である。以下は,これまでの審議の過程において明らかにした諸点である。

 「範囲」・「基準」の解釈について
  「範囲」・「基準」を次のようにいちおう解釈することにしたい。
 「範囲」
 当用漢字表が日常使用する漢字の「範囲」を示しているということは,ここに掲げられている漢字以外のものは使用しないということで,ここに掲げられていない漢字で書き表わすことばは,別のことばに言いかえるか,かなまたは当用漢字表内の漢字で書きかえるという趣旨である。
 「基準」
 当用漢字表が日常使用する漢字の「基準」を示すというようにすることは,なるべくここに掲げられている漢字でまかなうことを,意味するものであり,これ以外の漢字は,どの字でも使用を禁止するものではないがなるべく用いないようにしたいという趣旨である。
「範囲」・「基準」に関連した当用漢字表の性格等の考え方について
 このことについて,おもな意見は次のとおりである
 当用漢字表の性格は,従来の沿革や社会的影響を考慮して、現行どおり「範囲」とするのがよいという考え方があり,また当用漢字表の性格を「基準」として,現在制限的「範囲」としていることによって生ずる諸問題を解決しようとする考え方がある。これらの場合において,その具体的な措置として,(ア)現行どおり「範囲」として字数をふやすか,または「基準」に変えて字数をふやす,(イ)適用する分野を現行どおりとするか,または義務教育だけもしくは義務教育,法令・公用文だけに限るとする,(ウ)法令・公用文だけを「範囲」とし,新聞・雑誌および一般社会についてはこれを「基準」とする。(エ)適用する分野に応じ,または漢字の基本度に応じて二つないし三つの異なった字種のわくを設ける,(オ)当用漢字表を「いちおうの基準」と考えて制限的な色彩をなくして漢字の使用をなるべく自由にする,などのことが考えられる。
 適用する分野について
 当用漢字表を「範囲」とするか「基準」とするかについて検討する場合は,具体的にこの表を適用する分野との関連において考える必要があるので,とくにこの問題について検討した。
 まず,「範囲」・「基準」のいずれにしても,当用漢字表の審議の目標は一般社会を対象とするものであることを確認した。
 このことを前提として具体的に適用する分野をどう考えるかについては,まず法令・公用文は,これが国民全体に理解される必要があるので,当然適用分野と考え,かつ「範囲」として制限することにはほとんど異論がなかった。この場合,とくに,義務教育の期間中に必修させる漢字と法令・公用文に用いる漢字とを一致させるべきであるという考え方に対し,このことはきわめて困難であるということが指摘された。なお,教育を含めて新聞・雑誌その他の分野についての適用のしかたをどうするかについては,今後審議することにした。
 その他
   固有名詞については,その扱い方に関して種々意見が出たが,なお検討中であり,また,社会一般において早急な解決が望まれている当用漢字音訓表については,できるだけ早い機会にその検討に着手することとしたい。

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