国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第8期国語審議会 > 第64回総会 > 議事要旨

第64回国語審議会総会(昭和42.5.29)議事要旨

庶務報告
 金田国語課長から本日の配布資料の説明を行った。
協議
(1) 議事要旨の確認
 前回(第63回)総会の議事要旨の確認を行った。
(2) 部会の審議経過報告について
 漢字部会長およびかな部会長から,それぞれの部会の審議経過報告を行なった。それに対するおもな意見は,次のとおりである。
 (ア) 「送りがなのつけ方」のまえがきにある3か条の方針のうち,第1の方針,つまり「活用語およびこれを含む語は,その活用語の語尾を送る。」という規定の適用のしかたによっては,送りがなはできるだけ送るという方向で考えることも可能ではないか。
 (イ) 「送りがなのつけ方」は,当用漢字音訓表によるということが大前提となっている。この認識を欠くと,誤りを犯すことになるので,この点を明確にして今後の部会審議を進めてほしい。
 (ウ) 「送りがなのつけ方」のまえがきにもある3か条が並列しているところに問題がある。これは前期でもしばしば指摘したところである。したがって,方針としては活用語尾を送るという原則に,「ただし,誤読,難読のないかぎり,なるべくいままでの慣習にしたがって送らない。」というように,ただし書き程度の規定をつけて,一語一語を検討整理していけば,現行の「送りがなのつけ方」のぐあいの悪い点が,よほど改められるのではないか。
 (エ) 送りがなの問題を論じる際に、よく誤読,難読ということがいわれるが,国語の表記は漢字かなまじり文をもって正則とするという基本的態度に立って考えれば,漢字を使う以上,その漢字の意味,読み方は,教育で当然身につけさせていかなければならない。単に,正しく読ませようとして,送りがなを多くするのは,漢字を使用する便利さを削りとってしまうものではないか。
 (オ) 当用漢字音訓表を早急に再検討し,現行のものより,もっとゆるやかなものにしてほしい。
 (カ) 義務教育では,現行の当用漢字表を「範囲」として,これ以上のものの使用を制限することはできない。したがって義務教育では習得させる必要のある漢字を決め,これを「基準」として規定していくのが実情に即した方法ではないか。
(3) 木内提案について
 木内委員から,前回の総会での取り決めにしたがって,前田会長あてに提出した意見書の内容について説明があった。その中で,現在の両部会の審議と並行して,別途検討してほしい問題点として,次の7項目の指摘があった。
 (ア) 国語表記の簡素化を訓令・告示という手段で達成しようとしたことは誤りであったのではないか。
 (イ) 漢字制限は教育の場では「いちおうの基準」として是認できるけれども,他の分野にまで拡大するのはおかしいのではないか。
 (ウ) 戦後の国語施策は,どういう見方,考え方に立って行なわれたものか。その哲学に誤りがあったと思われるが,現在,再吟味する必要があるのではないか。
 (エ) 戦後の国語施策に対する見方,考え方の中には,@漢字はむずかしいもの,A漢字は不便なもの,B漢字が少なくなれば,児童・生徒の学習負担が軽くなり,他教科の教育に役だつ,C一つの漢字に多くの読み方があるのは不合理である,D表意文字は不合理であり、表音文字は合理的である,といった見方,考え方があったのではないかと思われるが,これは大部分まちがっているのではないか。
 (オ) 戦後の国語施策の推進者は,そもそも日本が漢字かなまじり文を正書法とするにいたった歴史的事実に対してもつべき理解をもっていなかったのではないか。そして日本語がローマ字表記になれば,それにこしたことはないというように考えていたのではないか。
 (カ) 最近,アメリカの言語学者の間では,日本の漢字かなまじり文という表記法こそ,最高の能率をもつものであるという考え方があるけれど,これは研究に価するのではないか。
 (キ) 漢字の教え方の研究がふじゅうぶんである。これを開拓すれば新生面が展開されるのではないか。
 以上の問題については,漢字・かな両部会の合同会議を開催して,そこで具体的に木内委員から説明を聞くこととした。その時期については,事務当局で検討することとし,これを了承した。

トップページへ

ページトップへ