国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第8期国語審議会 > 第65回総会 > 戦後の国語施策の根本理念を再吟味するための提案

戦後の国語施策の根本理念を再吟味するための提案

〔(注)原文は縦書き,用字・用語は原文のまま〕

木内委員提案

1 戦後の国語施策の根本理念を再吟味するための提案

 戦後の国語施策は,その実施の経過等に鑑み,その根本理念を再吟味する必要ありと考えられるについては,取り敢えず左記6項目につき審議を行うこととしたい。

  (一) 国語表記を簡素化したいという理想は一応認めるものとして,その理想を訓令・告示という手段で実現しようとしたことは,簡素化達成のためにも誤りであったのではないか。
(二) 漢字を制限するということは,義務教育の場においてならば,「一応の基準」として是認してよいと思われるが,それを他の分野に拡大することは,その方法如何に拘らず,おかしいのではないか。
(三) 戦後の国語施策は,どういう「見方」「考え方」に立って行われたか,その見方,考え方に根本的な誤りがあったのではないか,
その「見方」「考え方」のなかには,(1)漢字はむずかしいもの,不便なもの,(2)漢字を教えることを少なくすれば,小中学校の児童生徒の頭はそれだけ楽になり,従って他のことを教える餘裕が出来る,(3)一つの字に多くの読み方があるのは不合理である,(4)表意文字は不合理であり,世界の大勢は表音文字に統一されつつある,とするようなものがあったと思われるが,特にそれらの「見方」「考え方」は,端的に間違っていたと認むべきではないだろうか。
(四) 戦後の国語施策の推進者達は,日本という国において漢字カナまじりを表記法とするに至った歴史的事実に対して,持つべき理解を欠いていたのではないか。そして,日本語がローマ字表記になれば,それに越したことはない,ぐらいに考えていたのではないか。
(五) 最近アメリカ等の言語学者の間に,漢字カナまじりという現在の日本語の表記法は,能率的にみて最高である,という意見が出はじめている由であるが,研究に値するのではないか。
(六) 「漢字の教え方の研究」は全くのところ不充分である。この分野を開拓すれば,その方面からも新しい方途・方策が生まれ,見方・考え方としても新生面が開拓されるのではないか。

(以上)

トップページへ

ページトップへ