国語施策・日本語教育

HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第8期国語審議会 > 第65回総会 > 次第

次第 庶務報告/部会の審議経過報告について

古賀副会長

 会長が欠席なので,わたしが議長の職務を代行する。最初に庶務報告をする。

金田課長

 さる,7月21日付けで蒲生文化局長が文部省を退職し,後任に安達文化局長(前文化局審議官),内山文化局審議官(前社会教育局社会教育課長)がそれぞれ就任したので紹介する

安達文化局長

 蒲生前文化局長の退職に伴い,後任にわたしが文化局長の職を引き継ぐことになった。わたしは前職の文化局審議官当時から委員各位のご意見を拝聴してきたが,その間熱心に審議が進められてきたことに対し感謝しているしだいである。今後はこのうえともよろしくお願いしたい。

内山文化局審議官

 わたしは,このたび文化局審議官を拝命したが,以前,国語課長もつとめたことがあって,現在の国語審議会委員の何名かのかたがたにもご指導いただいたことがあった。今回,ふたたびこの国語審議会を担当することになったが,じゅうぶん努力していきたいと考えている。よろしくご指導願いたい。

古賀副会長

 協議にはいる。まず前回(第64回)総会の議事要旨の確認を願いたい。(国語課長「第64回国語審議会総会議事要旨」を朗読,確認。)

古賀副会長

 引き続いて部会の審議経過報告をお願いする。なお,これまでは,部会の審議経過報告について,その報告の要旨を刷り物にして配布し,説明してきたが,その報告書を作成するために審議時間を費やすことは,部会運営上,非能率的であり,また今回は,両部会とも,審議が一段落したということでもないので,両部会長から,口頭で審議経過の中間的報告を申しあげることにしたのでご了承願いたい。まず,漢字部会から報告をお願いする。

岩淵漢字部会長

 漢字部会は,前回の総会以後部会を3回,小委員会を1回それぞれ開いた。部会委員の中には,漢字の字種の選定を行なってから,音訓の問題を考えるべきであるという意見の人もあったが,部会としては,まず当用漢字音訓表の問題から検討を始めることにした。しかし,字種の問題は放置しておくのではなく,部会審議と並行して小委員会で検討してみることにした。さて,音訓の問題を審議するについて,最初に現行の当用漢字音訓表制定当時の選定の方針等を,資料「現行の当用漢字音訓表について検討すべき問題点の一例」〔総−11〕によって検討した。その結果,今後具体的に音訓の検討を始めるにしても,あらかじめ漢字の音訓に対する基本的な考え方について考えてみる必要があるということを了承した。その中で特に意見が分かれたのは,異字同訓と,同字異訓の整理の問題である。つまり,同じことばを漢字で書き分ける(みる………見る,る,る,る)とか,一つの字をいろいろに読む(戦………たたかう,いくさおののく,そよぐ)のは不便であるから,できるだけ整理する方向で考えるべきであるという意見と,漢字を使う以上は,その表意性を生かして考えるべきであるという意見とである。しかし,この問題は簡単に結論を得るわけにはいかないので,いずれ音訓に対する基本的考え方を明らかにする必要があるにせよ,とりあえず,資料「当用漢字の音訓使用度数に関する資料」〔総−12〕により,個々の字について,認められていない音訓を一つ一つ吟味することとして,この資料の検討にはいった。
 次に,漢字の字種の問題については,別に小委員会を開き,そこで漢字表の構成を考えてみた。(「別紙1」参照。)

別紙1
漢字表の構成について
    (現 行) (部会での検討案)
(1) 義務教育期間 当用漢字表 881字 1,200〜1,500〜2,500
(2) 一般用 当用漢字表 1,850字 1,800(600)〜2,000(500)
(3) その他 その他 3,000〜X (1,200)
 
現行当用漢字表では,専門語,固有名詞は別に考えるとある。 ただし,人名用漢字92字
  固有名詞

参考資料

雑誌90種(昭和31年,1年分,サンプリング調査)【国立国語研究所 調べ】
  4万語(そのつち人名,地名等約1万語足らず)(延べ43万語)
  漢字 3,328字(延べ28万字)
  1,000字―90.5% 1,500字―96.4% 2,000字―99.0%
姓(採集ずみ)約45,000種 漢字2,231字(うち当用漢字1,220字)【野村広氏調べ】
地名(吉田東伍 大日本地名辞書)41,000種 漢字2,243字(うち当用漢字1,114字)【林 大氏調べ】

 まず義務教育の期間中に読み書きを教える漢字の字数としては,1,200字程度または1,500字程度といった案が出た。一般用の漢字の字数としては,1,800字,2,000字,2,500字といった案が出ているが,この中に専門用語や固有名詞も含めて考えるのかどうか,まだ,いろいろと問題がある。その他としては,固有名詞等に用いる漢字までもすべて含めて字数を3,000字程度にし,それ以外の漢字の使用を制限するという考え方もある。しかし,いずれにしてもこの問題は小委員会で話題にしただけで,部会ではまだ審議されていない。今後部会としては,いちおう当用漢字音訓表の問題を検討して,その結果をできるだけ早く総会に提出できるよう審議を進めるいっぽう,当用漢字表を「基準」にするにしろ,あるいは「範囲」にするにしろ,ともかく字数のわくは必要と考えているので,そのわく組みをどうするか,これらのことについてもう少し小委員会で検討していきたいと考えている。

古賀副会長

 次いで,かな部会の審議経過報告をお願いする。

久松かな部会長

 かな部会は,前回の総会以後3回部会を開いた。かな部会は漢字部会と違って具体的な問題を検討しているので,いまとりまとめて報告する段階にない、。以前総会でも意見が出たが,送りがなのつけ方を検討するにあたって「活用語の語尾を送る。」という原則だけで送りがなを付けた場合,どうなるかという事実を見きわめるため,通則の語例との対照表を作成して比較したが、さらに「活用語およびこれを含む語はその活用語の語尾を送る。」という解釈も加えて対照させたのが,資料「活用語尾に限定した送りがなについて」〔総−13〕である。これによると,動詞の活用形またはそれに準ずるものを含む動詞(通則2)と,活用語と関連のある名詞(通則17,19)に,特に問題があることが明確になった。部会としては,今後さらに多くの語例について考察し,どの原則をとるのが適切であるかを審議するとともに,現行の通則の問題点も検討していきたいと思う。また,活用語でないために,資料〔総−13〕から除いた語,すなわち,上記の活用語に関係のない名詞,副詞,代名詞および接尾語を伴っているともみられる活用語については,別途検討する予定である。

古賀副会長

 以上の両部会長からの審議経過報告について,質問なり意見なりがあれれば承りたい。なお,部会委員の中から補足して説明することがあれば発言願いたい。

大野委員

 かな部会では,送りがなの問題から先に審議されているようであるが,わたしは現代かなづかいの問題を先に審議し,その考えを固めていく過程で送りがなの問題も扱っていくほうが,全体の表記法の組み立てがしっかりすると考えている。送りがなの問題だけを先にどうこうしようとすると,ときにその扱い方のうえで,くいちがいをきたす点が出てくることをおそれる。このことは前回の総会でも申したことである。どういういきさつでこうなったのか知らないが,あらためてこの点を慎重に考えてほしい。

木内委員

 両部会で,それぞれの問題点を明らかにしてみるという作業は有用なことである。そういう意味では,ただいまの大野委員の発言の趣旨も考慮して,現代かなづかいの問題点も早く明らかにしてみてほしい。送りがなの問題がすんでからというのでは時がたちすぎる。どうしろという結論的なことではなく,どこに問題があるのかだけでも早く明らかにしてほしいということである。

平林委員

 漢字部会長の報告に,字数を何字程度にするといういろいろな案の報告があったが,わたしは,部会でも申しあげたように,字数は限定するべきではない,と考えている。少なくとも,先に何字程度と字数を決めて審議するやり方はおかしいのではないかというのがわたしの意見である。

横田委員

 部会の審議経過報告は,口頭ではなく,やはり書いたものにしていただかないと理解しにくい。次回は印刷物にしてほしい。

柴田委員

 かな部会長の報告の中に「転成語」というようなことばが出てきたが,内閣告示の「送りがなのつけ方」では「活用語から転じた」ということばで表わされている。これは同じ意味だと思うけれども,考え方としては,このように,その語のいちばん古いところにさかのぼって,そこから変化があれば,すべてこれを転成したものというように考えるのは適当でないと思う。たとえば,「帯(おび)」ということばは,「帯(お)ぶ」ということばから転成した語と考えるなどは,現代語の書き表わし方を考えようとする送りがなの問題にとって必要のないことであう。

安達局長

 先ほど大野委員から,かな部会がどうして送りがなの問題から先に審議したのかという意見があったが,簡単にその経過を報告すると,かな部会では,現代かなづかいと送りがなの問題のどちらを先に審議するかについて,いちおう検討した結果,問題に軽重をつけるわけではないが,社会的要求の緊急性ということからいえば,送りがなの問題ではないかという意見が,特に新聞関係の委員が出て,それにより,この問題を先に検討することとしたのである。

大野委員

 わたしとしては,現代かなづかいの問題といっしょに,たえず両方をにらみ合わせながら改善案を立ててほしいと考えている。

古賀副会長

 今後かな部では,この問題をも含めてよく検討してもらいたい。ほかに,部会の審議経過報告に関してのご発言はないか。なければ引き続いて木内提案の問題に移る。

トップページへ

ページトップへ