国語施策・日本語教育

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前田会長

 そのことについては,この総会にさきだって開いた運営委員会でも話題にしたが,わたしとしては,今期の任期中に,なんらかの結論が出せるものなら出すべきだという考えをまずもっている。ただ,現在の審議の進行過程からいって出せるかどうか問題があろう。文部当局としては,もし任期中に答申が得られない場合には,次期に引き継いで検討をお願いしたいということであるが,会長個人としては,できるだけ審議を活発に行なって,結論の出せるように,みなさんに協力していただきたいと考えているので,よろしくお願いしておきたい。
 次いで,おはかりしたい問題が一つある。それは第63回総会以後問題になっている木内提案についてである。これについては第65回総会で,木内提案に対し,各委員の中で意見のあるかたは書面で提出するということになっていたが,意見が寄せられたのは,ただ1通だけであった。これでは,木内提案に対して賛成であるということなのかどうか判断がつかない。そこでこの木内提案について,国語審議会の総会・部会としてではなく,非公式な懇談会として木内委員と数名のかたとで話し合ってはどうかと考えるしだいである。みなさんの意見を伺いたい。

柴田委員

 木内提案については,第65回総会議事要旨にもあるように,すでに漢字・かなの合同会議という懇談の形式で,かなり突っ込んだ話し合いが行なわれた。わたくしも発言し,森戸委員その他からも,かなり木内提案に対立する意見の開陳があった。だから,少なくともわたしとしては,そのときに時間をかけて意見を述べたのであるから,もう書面を提出する必要もないと考えて出さなかったのである。今後,また懇談会といわれるなら,先の合同会議に出席した人は除いたかたがたで構成しないと同じことのくり返しになる。それに,木内委員が合同会議に出された意見と第65回総会に出された意見との間には,なんらの進歩発展もみられない。時間の節約ということから考えても,再び同じような懇談の場を設けるのはむだであると思う。

前田会長

 わたしの述べた懇談の意味は,先の合同会議の懇談とは性質の違うものである。それに合同会議で,木内提案そのものを否定したというなら,あらためて取り上げる必要もないかもしれないが,どうも否定されたわけでもなさそうである。

柴田委員

 合同会議は,肯定するとか否定するとかいうのではなく,懇談会であった。いわば,これまでに意見を述べ合う機会ももったし,また書面で意見を出す機会もあったわけである。それなのに再度この問題をめぐって,懇談会を開こうというのは,なにか,この木内提案を過度に重要視して取り扱おうとしているような感じがする。わたくしは,国語審議会をはなれて,そういう集まりをされるのならよいけれど,国語審議会として取り上げられるのはむだなことであると考える。

中田委員

 わたくしは柴田委員の意見に反対する。今期の国語審議会は,文部大臣から諮問が出されたものだから,ひたすら諮問に答えればよいとも考えられるけれども,国語審議会としては,国語政策の根本的事項についても審議してよいと思う。今期はどうも,び縫策にかかずらわっているようで,過去の事実の欠点を是正するという狭い範囲に審議が限られすぎている。緊急の国語問題は,このほかにもいろいろある。外来語のはん濫,幼稚園児から英語教育を施すという風潮など,これらに対して,われわれはもっと意見を戦わせて,国語審議会としての意見を,もっと世間に発表すべきではないかと考える。こういうことから,わたしは,先に新しい国語白書の作成を呼びかけたが,黙殺されてしまった。私の意見は,木内委員の意見と具体的には違っているけれども,国語政策に刺激を与えるという大きな点では一致する面があり,賛成するものである。

柴田委員

 もしも中田委員のような考え方であるなら,新しい部会を設けて審議すべきであると思う。会長のおっしゃるように,任期中に結論を出そうとするなら,その線に沿って諮問事項だけを審議すべきで,しかも同じ問題のくり返しをすることは時間のむだではないかというのである。

前田会長

 柴田委員の解釈には誤解があるようだ。わたしは,木内提案についてあらためて合同部会とか,小委員会などを開こうとはいっていない。国語審議会の会議とは関係なく,特別な場でと申しあげているのである。参加したくないかたは,参加しなくてもよいのである。

柴田委員

 個人としては,大いに参加したいと考えているが,国語審議会として特別な委員会などをもつことはむだであると述べているのである。

前田会長

 国語審議会が討論の形式で審議をしたら何年たっても結論は出ないという気がする。国語の混乱といっても,どの程度の混乱なら害はないのか,そういうことを常に考えていかなければならないと思う。そういう点では,木内提案を取り上げることも必要ではないか,という印象を受ける。漢字・かなの両部会では,これまでの方針に従って,今後も審議を続けられていくであろうが、そのほかに,可能なら木内提案についての話し合いということを中心にする有志の集まりの場があってもよいではないかと考えるのである。みなさんがたが不賛成であるなら,わたしと木内委員のふたりだけで話し合ってもよいと考えているくらいである。みなさんにも協力を得たいと考え,ご意見を伺ったしだいである。

森戸委員

 会長のご意見に賛成する。というのは,たしかに木内提案については,すでに合同会議でも話し合って,わたしも意見を述べたが,今度は,それをもう一度くり返した懇談会を開くというのではなく,会長が,会長個人として少数の有志の人々からなる懇談会を開きたいということであるからである。正式な国語審議会の会合というのではなく,会長が個人として少数の人の意見を聞きたいということなら,それでけっこうだと思うわけである。

大和委員

 木内提案だけを取り上げて懇談会を開こうとすると,なぜそれだけを重要視するのかという意見が出るのも,もっともなことである。そこで,今期のはじめに各委員から提出した意見書,つまり資料「国語審議会の運営その他について」〔総−3−1〕をも木内提案を並行して懇談会で取り上げ,話し合ってはどうかと思う。おそらく木内委員も,今期のはじめに各委員から出した意見書が出しっぱなしの形で発展していかないのを,もどかしく感じて木内提案をだされたことと思う。広い形で懇談会を開くなら,わたしも積極的に参加して意見を述べたい。

前田会長

 懇談会を開くについては,会場の設備その他について,文部当局に迷惑をかける気はない。全員に参加してくれという気もないが,ただ,この際,参加してみようというかたがあれば,わたしに意思表示をしていただきたい。

中田委員

 懇談会では,木内提案以外についても話し合ってよいのか。

前田会長

 けっこうである。

森戸委員

 国語審議会会長としての公式の会合ではないと承知してよいか。

前田会長

 わたくしが責任をもつ会合である。わたし個人の参考にしたいと考えている。

柴田委員

 わたくしには誤解があった。国語審議会としての懇談会と受け取ったので反対した。しかし,有志の人々のために会長が個人的に一席設けてくださるということであるなら,けっこうなことである。

前田会長

 どうも互いに行き違いがあったようである。それでは,懇談会については,みなさんの賛同を得られたようであるから,10月16日(月)に予定しておきたい。

安達文化局長

 先ほど,柴田委員から審議の見通しについて質問があったが,事務当局としても,会長からお答えのあったとおりに考えている。つまり,任期中に諮問のすべてについて答申をいただこうとは考えていない。まとまるところから答申いただければけっこうである。ただ,できれば,第8期として,なにかまとまったものをいただければとも考えているので,来年の5月末までの任期内に,どの程度の審議が進むものか,やはり見通しをつけて審議していただくのが能率的ではないかと思う。
 次に,教育課程審議会との関連であるが,教育課程審議会では,当用漢字表や同別表,現代かなづかい等については,現行のものを基準にして審議しており,別段,国語審議会の審議の状況を見通して予定を立てているわけではないということである。だから,国語審議会としては,独自の日程で審議を進めていただきけっこうである。なお,先般,小学校教育課程の改善の答申にさきだって,初等教育教育課程分科審議会から中間発表があったが,このとき,漢字学習について,漢字の読み書きの能力を高めるために,低学年から現行より多くの漢字を学習させるよう処置するという趣旨の発表があったが,これは,現行の当用漢字別表や当用漢字表の範囲内での話である。当用漢字別表の漢字をふやすとかいうように誤解されている向きもあるが,誤解のないように願いたい。あくまで現行の当用漢字表や同別表を前提に教育課程審議会では審議しているのである。

前田会長

 最後に,かな部会に金田一委員もはいっていただこうと思うのでご了承願いたい。(了承。)では,本日はこれで閉会とする。

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