国語施策・日本語教育

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第67回国語審議会総会(昭和42.12.15)議事要旨

庶務報告
 国語課長から第65回総会で承認された「国語施策に関する意見収集について」のその後の経過報告があった。
協議
(1)議事要旨の確認
 前回(第66回)総会の議事要旨を一部修正して確認した。
(2)部会の審議経過報告について
 漢字部会長およびかな部会長が,それぞれ次のような部会審議経過報告を行なった。
 (ア)漢字部会
 「現代雑誌九十種の用語用字」(国立国語研究所編)の中から,当用漢字表にある字で,当用漢字音訓表に認められていない読み方のうち,使用度数15回以上のものが83字ある。部会としては,これまでに,そのうちの23字について具体的な検討を行なった。検討に際しては,音訓表の性格を「範囲」,「基準」のいずれの立場から考えるのかという問題があるが,これについては,いちおうの「わく」を考えるという態度で審議を進めることにした。また,その「わく」は義務教育のためのものか,一般社会のためのものかという問題があるが,一般社会を対象として考えていこうということにした。また,音訓の検討は読む立場と書く立場との両方の立場から検討することとした。その結果,いちおう個々の字について採用の可否を考慮しながら,逐次審議を進めている段階である。
 (イ)かな部会
 かな部会は,資料「送りがなのつけ方に関する語の構造別語例一覧」〔総-15〕によって,送りがなのつけ方に関する語の分類方法の適否について審議を続けてきた。その審議の中で,資料に掲げた個々の語例の送りがなのつけ方についても,いちおうの検討を加えており,現在は,同資料の半ばまで進めたところである。
 その課程で,現行どおり活用語尾以外の部分も送ったほうがよいという考え方と,できるだけ活用語尾に限って送るようにし,送りがなを現行より簡単なものにしたほうがよいという考え方があるが,いずれにしても,一つの原則だけで決めることは実際的でなく,結局は、個々の語についていちいち検討して決める必要があるということであった。
 今後もこの資料について検討を続けていくが,その際,語の分類方法をさらに検討し,その結果,送りがなのつけ方の新しい法則を定め,それに基づく個々の語の具体的な送りがなを固めていくことを目標としている。
 以上の部会審議経過報告に対して,次のような意見があった。
 (ア) 「後(あと)」や「魚(さかな)」ということばが日本語として認められているかぎり,そのことばにどんな文字をあてはめるのかは,そのことばを使う人の自由でなければならない。
 (イ) 「眼」に「め」という訓を新しく認める場合,「目」との使い分けの基準を明確に示さなければ国語表記の混乱を招くことになろう。漢字部会では,そういうことも考慮の上で検討してほしい。
 (ウ) 音訓の検討は,過去の文献も読めるようにしておかなければ,大学生の漢字力が低下するというふうに考えるのか,それとも将来を見通した合理的な表記を目標として考えていくのか,この点を総会で明確にしてほしい。
 (エ) 同音の場合でも,書き分けることには賛成である。しかし,実際には意味の区別が微妙であり,判別しにくい問題がある。やはり,ことばに即した決め方が必要であろう。
 (オ) ある程度,古典的なものが復活してきている現在では,将来を見通した表記といっても,それがはたして合理的といえるかどうか疑問である。問題は,現代の国語の標準的表記をどうすればよいのかということで,やはり現行の当用漢字音訓表などは,現在の言語環境に適合させていく必要がある。
 (カ) 話しことばが日本語としての基本になるという考え方から,文字に書き表わさなければ日本語が成立しないというのでは困ると考えているが,こういう立場は,ある程度合理性をもつものであろう。音訓の検討にあたっては,文字化しなければ完全なものとならないような異字同訓などはできるだけ採用を避けるべきだと考える。
 (キ) 国語施策を考える場合の審議の対象は国民一般であるといっても,具体的にはどの程度の範囲をさすのか,義務教育終了程度の人を対象に考えるのかどうか,この点を総会で明確にしておかないと,今後の審議に混乱をきたすことになろう。
 (ク) 国語施策は,これまでのような制限の方向で考えるべきではなく,理想的な漢字かなまじり表記の基準を示す方向で考えるべきである。それに戦後の一連の国語施策は国民的実験期とでもいうべきもので,逐次,手直ししていく必要のあるものであり,表現を非能率なものにしている音訓の制限などは解除すべきである。将来を見通した合理的な表記もけっこうなことではあるが,実現不可能なことである。
(3)その他
 (ア) 日本文芸家協会から文部大臣および国語審議会会長あてに,第65回総会で木内委員から提案のあった「戦後の国語施策の根本理念を再吟味するための提案」を支持し,これの採択を要望する要望書を提出し,同協会会長である丹羽委員から説明があった。
 (イ) 古賀副会長から,国語審議会の今後の運営についての見通しを,具体的に整理した考え方を述べた。
 (ウ) 前記の提案事項等を整理するため,予定外の総会を来年早々に開いてほしいという意見が出たので,これについて,運営委員会で検討することとした。

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