国語施策・日本語教育

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次第 かな部会の審議経過について

古賀副会長

 次いで,かな部会の報告をお願いする。

久松かな部会長

 かな部会は,前回の総会以後,3回の部会を開いた。なお,この審議には,前回ご承認いただいたように金田一委員に部会委員として加わっていただいている。
 前回の総会で報告したとおり,送りがなについては,「活用語の活用語尾を送る。」という原則では処理しきれない語例が,いろいろあるということが明らかになったので,品詞別に構成されている現行の通則から離れて,構造別・問題別による語例の分類をし,個々の語についての検討にはいった。
 これは,前回総会で資料「送りがなのつけ方に関する語の構造別語例一覧」〔総−15〕としてお配りしたものである。
 この資料の審議にはいるまえに,まず,送りがなとは何かなどの基本的な問題点を明らかにしておく必要があるのではないかという提案があり,それらについての検討を行なった。しかし,その結論を得ることは容易ではないので,〔総−15〕に即して,ひととおり個々の語にあたってみることにして,具体的な個々の語例の審議にはいった。
 審議の過程で出たおもな意見はおよそ次のとおりである。以下,参考までに,資料〔総−15〕のページ数をあげて説明する。

@  資料3ページにある「積む・積もる」「振る・振るう」「押す・押える」などの語を,それぞれ関係づける必要があるかどうか。同じ漢字を使うからといって,語意識の違うものをすべて関係づけ,並べて考えることには問題がある。
A  資料5ページにある語については,「動かす」「働かす」「励ます」のように,従来から活用語尾以外も送る習慣があった語と,告示が出てから従来よりも多く送るようになった語,たとえば,「終わる」「聞こえる」「果たす」などの語とは区別して考えたほうがよくはないか。
B 「当たる」「曲がる」「尽くす」のように,漢字の受け持つ音節が1音節となったために抵抗を感じるようなものは,特に取り上げて審議する必要がある。
C  資料7ページにある「表わす・著わす・現われる」などは,「表す・著す・現れる」とすべきだという意見と,「表(ヒョウ)す」と,「表わす」だけは書き分けるべきだという意見があった。
D  資料7ページにある,「行なう」の「な」,「断わる」の「わ」を省くと,「おこなって」「ことわって」のときに,「行って」「断って」と書くことになり,「いって」「たって」と誤読するおそれはあるが,実際には,たいていの場合,文脈のうえから判断がつき、誤読の恐れはないと思われる。
E  「ことなる」は,語源的にいえば,文語の形容動詞の「ナリ活用」であると考えられるから,現行どおり,「異なる」と「な」から送ってよいのではないか。
F  「おびやかす」は,文語の「おびゆ」と関係づければ,「脅やかす」のように「や」から送ってもよい。「脅かす」のように「かす」から送ると「おびやかす・おどかす」と二とおりに読まれ,「脅す」のように「す」だけを送った場合は,「おびやかす・おどかす・おどす」と三とおりの読み方ができることになる。なお,「おびえる」は,普通は「怯」をあてて書いている。
G  「むらがる」と「あかるい」については,それぞれ「群れる」「明ける」との関係を考えて,「群らがる」「明かるい」と書くか,「群(むら)」「明(あか)」をまとまりのあるものと考えて,現行どおり「群がる」「明るい」と書くかについて検討を重ねたが,問題が多いので,さらに審議する必要がある。
H  「清らか」「安らか」のように「らか」がつくものは,「から」から送ることにすれば,「あきらか」は「明らか」と書くことにしてもよいが,「明く,明ける」と関係づけると,「明きらか」とすべきだということになる。
I  次の「すくない」の語幹は,「すくな」であるから,「い」を送るだけでよいのではないかという意見に対して,告示が出るまえから,「少ない」と「な」から送ることが,一般に,かなり行なわれていたという指摘があった。同様に,「おおきい」「ちいさい」も活用語尾を送るという原則からいえば「大い」「小い」でよいが,従来から,一般に広く「大きい」「小さい」と書いているという指摘があった。すなわち,社会での習慣を尊重すれば,「すくない」は「な」から送り,「おおきい」「ちいさい」はそれぞれ,「き」「さ」から送ることになる。

 以上,部会の審議は,今日までのところ,資料〔総-15〕の7ページの半ばまでしか進んでいないので,個々の語についての具体的な送りがなの試案を出すところまでにはいたっていない。今後も,この資料について,このような方法による検討を続けるが,同時に,討議資料として提出した資料〔総-15〕の語の分類方法についても,なお検討を要するところが多々あり,たとえば,次のような種々の意見が出ている。

@ 〔総-15〕3ページの,「(1)他の語の活用語尾またはそれに準ずるものを含むもの」については,次のように分けて考える必要がある。
ア 活用語尾として現われる形を含むもの
活用語尾として現われる形を含むもの
イ 活用語尾に準ずるものを含むもの
活用語尾に準ずるものを含むもの
A 資料5ページの,「(3)自他の対応関係にあると思われるもの」については,さらに次のように分けて考える必要がある。
ア 漢字の受け持つ音節が2音節になるもの
漢字の受け持つ音節が2音節になるもの
イ 漢字の受け持つ音節が1音節になるもの
漢字の受け持つ音節が1音節になるもの
ウ 必ずしも自他の対応とは言いがたいもの
必ずしも自他の対応とは言いがたいもの
B 資料7ページの,「(5)ア現行の通則で活用語尾の前の音節から送っているもの」については,次のように分けて考える必要がある。
ア 送りがなによって読み方を区別するもの
送りがなによって読み方を区別するもの
イ アにつられて送るもの
アにつられて送るもの
ウ ナリ活用の形容動詞から転じたと考えられるもの
ナリ活用の形容動詞から転じたと考えられるもの
  注:「異にする」との関連も考えられる。
エ 接尾語のついたものと考えられるもの
     注: 接尾語と考えれば,「群−がる」となり,「群れる」との関連を考えれば「群らがる」となる。

 このように今後は,語の分類方法についても検討を加えながら審議を続け,そのうえで,このような個々の語の送りがなのつけ方を考えることになる。その場合,戦前に行なわれていた送りがな,戦後になって行なわれるようになった送りがなや,現在各新聞社で行なっている送りがな等も,判断の資料として利用し,各委員から具体案を提出していただき,部会としての成案を固めていく予定である。
 なお,今後はさらに多くの語例について,いちいちあたっていくことになっているが、これを法則化するときは,なるべく単純で,しかもわかりやすいものにまとめたいと考えている。
 また,こうした通則とは別に一語一語の送りがなのつけ方を示さない限り,どうしても問題が残るのではないかという意見もある。その他,語によっては,多く送るものと少なく送るものとの二とおりの送りがなを認め,そのいずれを用いるかについては,各分野・各個人の裁量に任せたらどうかという意見もある。
 今後,このような点も考え合わせながら,送りがなのつけ方について審議していく予定である。

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