国語施策・日本語教育

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第68回国語審議会総会(昭和43.3.18)議事要旨

庶務報告
 国語課長から配布資料の説明および「国語施策に関する意見収集について」のその後の経過報告があった。
協議
(1)議事要旨の確認
 前回(第67回)総会の議事要旨を一部修正して確認した。
(2)第67回総会における要望等の取り扱いについて
 前回の総会で出たいろいろな意見や要望等について審議するため,予定外に臨時の総会を開いてはどうかということが運営委員会に付託されていたが,運営委員会では,臨時に総会を開くことはしないで,予定の第68回総会で,この問題を取り扱うことに決定したという会長の報告があった。
 なお,この問題に関連して,これまでたびたび総会で出た当用漢字表の性格や義務教育との関連についての問題点等を整理するため,新たに小委員会を設けてはどうかということを前田会長が提案し,総会はこれを了承した。なお,小委員会に属する委員の人選は会長,副会長に一任することとなった。
 以下は,小委員会設置に関連して出たおもな質疑応答や意見である。
 ア 5月末までという任期との関連をどう考えるかという質問に対して,文化局長から,小委員会は任期とは関係なく,次期にも存続していくものと理解したいという回答があった。
 イ 審議が次期に継続するということで,小委員会の審議が延びることのないよう審議の能率化をはかって,できれば今期の任期中になんらかの報告をまとめたいという意見があった。
 ウ 小委員会で,現行の内閣訓令・内閣告示は廃止せよとか,現行のものに代わる新しい施策を決定,答申した場合,文部省として,この取り扱いをどうするか,その考えを伺いたいという質問に対して,文化局長から,国語審議会の答申は尊重すべきことはもちろんであるが,その取り扱いをどうするかは,政府自体としても従来のいきさつをも考え合わせて慎重に検討すべき性質のものであるという趣旨の回答があった。
 エ この点については,さらに直接文部大臣から,考えを聞く機会を設けてほしいという希望があった。
 オ 小委員会では,国語審議会の審議の進め方についても検討すること,また,取り扱う問題が広範囲にわたる場合には必ずしも結論を出す必要はなく,その問題点のとりまとめだけでもじゅうぶんであること,そしてこれらの審議は,短期間で可能であるという意見があった。
 カ 小委員会では,以前,前田会長の発案で開いた懇談会での話題も取り扱ってほしい,また,戦後の国語改革に再検討を加えることによって,今日の町名改正や大学生の学力に悪影響を及ぼしている点があれば率直に改め,新しい施策を出し直すことも考慮してほしいという意見があった。
(2)部会の審議経過報告について
 ア 漢字部会
 「現代雑誌九十種の用語用字」の中から,当用漢字表にある字で当用漢字音訓表に認められていない読み方の漢字621字(音訓総数844個)について第1読会の検討を終了した。その結果は「漢字部会当用漢字音訓表審議経過報告」にあるとおりであるが,これは検討結果のすべてを尽くしたものではなく,例示にすぎない。今後第2読会としては,特に異字同訓・同字異訓の問題,特殊なことばとして認めようとする音訓や熟字訓の問題等について,さらに検討を加え,また,現行の当用漢字音訓表で認められているものの中で省いてもよい音訓があるかどうかについても検討を行う予定である。なお,一般社会と義務教育との関係を考えるために,音訓表に段階づけをして,義務教育のための基本音訓といったようなことが考えられないかどうかについても検討を進める予定である。
 イ かな部会
 資料「送りがなのつけ方に関する語の構造別語例一覧」〔総-15〕によって,送りがなのつけ方に関する語分類の検討を続けた。その結果は,「かな部会報告資料」に示してあるが,概略は次のとおりである。
 (ア) 「た,か,ら,やか,らか」を含む形容動詞については,現行で「やか,らか」から送っているものを「か」から送ってみるとか,語根の意識を導入するとかなどの点から検討したが,問題はなお今後に残った。
 (イ) 現行のきまり以上に世間で送る傾向のあるものについては,数語を除いてほとんど考慮するに及ばないが,なお,今後もこれらの語の類別について検討することとした。
 (ウ) 動詞の連用形が名詞的に用いられるものについては,「補充資料その1」を作成し,それによって具体的に語分類を進めたが,その考え方は次のとおりである。まず,すべての語例について,もとの動詞の送りがなをつけることを原則として考えてみる。次にその中で送りがなをつけることに問題があるものを例外として選び出す。さらに,送るとも送らないとも一概に決めがたいものを許容として選び出す。この考え方によって,これらの語をいちおう三つの語群に分類したが,これ以外に,もとの動詞の送りがなの決定をまたなければ決められない語例は,保留として別にまとめた。
 今後は,以上のような方法で,さらに〔総-15〕の本来の名詞や複合語についての検討を進めていく予定である。
 以上の部会審議経過報告に対して,次のような意見があった。
 ア 漢字部会が一字一字を形式的に考えるのではなく,語と結びつけて音訓の問題を考えているのは,たいせつなことである。しかし,具体的な語にふれてくると,かな部会同様,今後の審議がある程度むずかしくなっていくことが予測されよう。
 イ 音訓審議に際し,「音便等によって生じた特殊な語形は認める。」とか,「同音異義語を漢字で区別する。」「多義語の意味の区別を漢字でする。」という立場は,個人の主観的なものである。ある程度,具体的な客観性をもたせて音訓を決めてほしい。そうでないと,どうしてもむやみに音訓が多くなるおそれがある。

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