国語施策・日本語教育

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次第 かな部会の審議経過について

前田会長

 次いで,かな部会の審議経過報告をお願いする。

久松かな部会長

 かな部会の報告は,次のとおりである。

誤読,難読を避けるために,活用語尾の前の音節から送る必要があるかどうかが問題である語についての検討
 (前回からの続き,資料〔総−15〕7ページ下段から。)
  (1) 形容動詞について
 現行の通則13に,活用語尾の前に,「た」「か」「ら」「やか」「らか」を含む形容動詞は,その音節から送るとされて,

 のように定められているが,これでは送りすぎと思われる点もあるので,「た,か,ら」を含むものはこのままにして,「やか,らか」を含むものについては,すべて,「か」から送る最短形のものを考えてみることとし,なお,多くの語例について調べてみることとした。
 この場合,たとえば,「朗らか」は「朗か」と書いても誤読のおそれはないが,「晴れやか」「冷ややか」などは,「晴か」「冷か」となって,問題があるものがある。
 そこで,改めて語根の意識を導入してみたらどうかということについて検討した。

 これについては,上表でもわかるように,同じ語でも語根の考え方にちがいがあるなどして,この語根の意識だけでは明確にわりきるわけにはいかない。
 なお,「た」「か」「ら」「やか」「らか」を,接尾語的なものと考えて,すべてこれらを送るとすれば,問題なしに,現行どおりでさしつかえないことになるという意見もあった。
  (2)  その他,現行のきまり以上に,世間で送る傾向の見られるような語について
 この資料に掲げてある「伴(な)う」「誤(ま)る」「驚(ろ)く」「承(わ)る」などの語例を,もう少し組織的に類別する必要があるという指摘があったが,これは,通則1,通則2に示されているような語の影響によって送りすぎるようになった例と見受けられるものを集めただけで,必ずしも個々の語について、それぞれ対応関係があるとは考えられないものである。しかしながら,これらの語群を適当な方法で類別できるかどうかは,将来検討したい。
 なお,この資料の語ではふじゅうぶんだから,戦前の教科書ではどう送っていたか,また,現在の一般社会では慣用としてどのように送っているかなどを,詳しく比較して検討する必要があるものと思う。
 また,ここに掲げた語例のうち,「伴(な)う,貫(ぬ)く,実(の)る,荷(な)う」の4語については,それぞれ漢字の受け持つ音節が明確であるので,このように送っても問題はなかろうということであった。
 活用語の連用形が名詞的に用いられるものについて。
 まず問題になったのは,「読み」とか,「流れ」「味わい」といったこれらの語の取り扱い方である。これについては,次に示す二つの考え方がある。

 これについては,部会として,まだ一つの結論を得ていないが,取り扱い方を問題にするより,具体的な送りがなのつけ方を検討しようということで語例の審議に入った。
 その場合〔総-15〕の語例のほか,さらに多くの語例を集めた〔補充資料その1〕を作成し,その一語一語の送りがなを考えながら審議した。その過程で明らかになってきた考え方は,以下のとおりである。

 以上のほかに,「これらの動詞の連用形の名詞的用法の送りがなのつけ方を法則化し,それをあらゆる用い方に適用させようとすることは,はなはだ困難であるので,この種のすべての語は,その語の用い方や用いる人の語意識によって,送っても送らなくてもよいとするのがいい。」という意見もあった。
 以上の語例審議を経た結果,部会としては,これらの語を,いちおう次のように分類し,今後さらに検討していくことにした。
注:この分類はあくまで,今後の審議のための,いちおうのめやすであって,部会としての結論ではない。
 この語分類のほかに,もとの動詞の送りがなのつけ方と関連させて審議する必要があるとして,今後に保留しているものに次のような語例がある。

 以上,かな部会の審議は,資料〔総−15〕の動詞の名詞的用法のところまで進んでいるが,今後もこのような方法で,本来の名詞であっても,送りがなをつける必要があるものや,さらに複合動詞,複合名詞についても検討を加え,資料〔総−15〕の語分類の不備,不足を補っていく予定である。

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